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17:魔王再び

どもです。

明日は難しいかもです。



またしても、ガタゴトと馬車に揺られている。


第一勇者エレンスの居る場所はそれなりに近い。

彼もまた魔大陸を目指して進んでいる。


「それにしても……」


今は無き、薄い金色の髪飾りを思う。







街を出るために宿を引き払った後彼女に会った。


「あらアルレイ、もう行くのね」

その美貌を惜しみなく発揮する少女ミーフィスが声をかけてきた。


「うん、ちょっと行かなきゃいけないところがあるんだ」

「ふーん?……助けに行くのね?」

こちらを覗いて何かを確信したように笑う少女。


「そ、そそ、そんなことありません。僕はただちょっと邪魔したい奴がいるので軽く邪魔してくるだけです」

「ふふ、可笑しい。別にいいじゃない、勇者なんだから誰かを助けに行ったって」

彼女は口元に手を当てて笑う。


「でもなぁ。勇者だから助ける、ってのはそりゃそうなんだけど俺は助けられるときと助けたいときしか助けないからさ」

「いいんじゃない?別に。無理に助けようとしないだけ私は好きよ?」

「はい、これからも頑張ります!」

「もう、馬鹿なんだから……でもいいわ、それなら頑張ってらっしゃい。私はしばらくここに居るから、ここから貴方の活躍を期待してる」


そう言って彼女はパチリとウィンクをした。


「あ、そういえばなんですけど。前に髪飾りを見てたときに偶々薄い金色した奴があって、偶々買ってたんですよね。よかったら貰ってくれませんか?」

「あら、ありがとう」


薄い金色の髪飾りを手渡す。


彼女はそれを受け取ると暫し眺めてから自らの輝くような髪につけた。


「どう?似合ってる?」

「……ミーフィスさん美しい素敵」

「えぇ、ありがと」


そう言って輝くような笑顔を作った。









「お姉様可愛過ぎか?」

「なんじゃ?姉なんておったのか?」

「お姉様ができました」

「お、おぅ。お主も色々大変なんじゃな……」

何か勘違いしている銀髪魔王がいるが放っておく。


「私というものがありながら彼女を姉と呼ぶなんて勇者さんは酷いと思います」

「いや、ロックさんは違うでしょ」

「違う?……なるほど私は古くから付き合いのある近所のお姉さん的存在ですか。なら仕方ありませんね、幼馴染キャラじゃ新規キャラに勝てないのは仕方のないことです。そう、幼馴染キャラは勝てないんです!幼馴染は、負け犬です!」

「そんなことないから!それうちの子のこと言ってるよね?うちのポニーちゃんはちゃんと可愛いから、全然ヒロインだからね?」

「でも?」

「……でも、って何?」

「みんな大好き?」

「いや、ほんとなんなの?」

「スーパービューティフルガール?」

「びゅーてぃふるがーる?」

「ミーフィスさんには?」


「敵わない!きゃー、ミーフィスさん美しい素敵!こっち向いてー!」


「うるせぇなぁ……」

「彼は別れてからずっとこんな調子だったのでしょうか?」

「……いや、どうだろうね。私にも分かりかねるよ」


三者三様で酷い言われようである。


「まぁ、そんなこんなでダラダラとテキトーな話をしていると、町が燃えていましたとさ」

「縁起でもないのう」

「でもそんな感じするんだよね。魔王だし、燃え盛る町で戦う勇者と魔王。

くっ、何故町を燃やした!

邪魔なものは消す、それがなんであろうとな。

邪魔だと?!ここに住んでいる人達をなんだと思っている!

言っただろう、邪魔なものだと。

貴様!

ふはははは、甘い、甘いな勇者よ。

みたいな感じでさ?」

「長いわ!聞いとった儂、途中からなんか始まったんじゃけど?ってオロオロしておったよ」

「勇者さんの勇者と魔王のイメージがよく分かりますね」

「勇者は分からないが魔王は間違いなく彼がモチーフになってたね…」

「そう、アマちゃん分かってるねー。

ちなみに勇者はエレンスから優雅さを取り除いて正義感を付け足したイメージだよ」

「もうそれ誰だか分からんの…」


「町の方々が心配です」

「今心配してもしょうがねぇよ。俺たちはやれることをやるだけだ、着いてからどうするかの方をじっくり考えようぜ」

「そうですね……」


「二人でなんか仲良くやってる奴らがいる……」

「ふはは、羨ましいのう?もうやっちゃう?仲間との戦闘始まっちゃう?儂今なら手貸すよ?」

「いいもんいいもん!俺には銀髪ロリが居るもん!」

「なんでそこ儂なんじゃ?!普通に考えてそこの金髪か白髪じゃろ!どう考えてもおかしいよね、おかしくない?」

「勇者さんはそういう人ですから」

「そうだね、アルレイはこんな感じだよ」

「諦められとる!おい、ポンコツ。お主確実に仲間との絆大切にしとらんじゃろ、迷惑かけっぱなしじゃろ?今のうちに謝っといた方がいいぞ?」

「言われるまでもない。既に謝り倒している」

「そんなキメ顔で言わんでもよいわ!

ダッサいのー、もうダサダサダサじゃな」

「一個増えた?」

「ノーマルダサダサじゃ足りない程のダサさじゃよ」

「レアダサダサじゃないとダメなのか」

「いや、アンコモンダサダサじゃな……あれ、儂コモンダサダサ入れたっけ?」

「知らないよ……あ、お婆さん、もう晩御飯は食べましたよ?」

「儂を年寄り扱いするなら覚悟しろよ?もう死ぬ程面倒くさくなってやるからな!」

「ふーん?いいけど、そんなことしたらその柔肌どうなるか分からんけど?」

「儂貞操の危機?!この勇者酷すぎない?」

「勇者さんは困った変態さんです」

「アルレイ……変わったね」

「ロリコン勇者爆誕だな」

「アルレイさん、何かお困りでしたら言ってくださいね?」

「トーレラさんの優しさが胸に染みる……けれど人妻、ダメ、ゼッタイ」

「もうこいつ倒さん?儂人類悪顕現しちゃってると思うんだけど」

「傲慢さん大爆笑です」

「わーい、傲慢さん見ってるー?」

空に手を振ってみる。


「手を振り返してくれましたよ、おめでとうございます」

「わーい、やったー」

「……もうダメじゃなこいつ」


本格的にみんなの目が冷たかった。








キーズンの町が見えた。


そこは至って普通で、燃えてもいない。


「間に合ったかどうか……」

独り言つ。


「間に合ったようですね」

「キューロックさんがそう言うならひとまず安心かな」


刀を見る。

手入れは問題ない。












「まずは第一勇者と合流しよう。異論はある?」

「無いかな、彼らには共に戦うにも隠れてもらうにも話をする必要がある」

「俺も同じだ」

「私もそう思います」

「……え?儂?別にいいんじゃない?」

「では行きましょうか、勇者さん。こっちです」

当然のように先導するキューロックさんの後を追った。





金髪の男が見える。

その男は前に会ったときより明らかに強くなっているように見えた。


その男がこちらを向く。


「おや、久しいなアルレイ」

「久しいな、とか使うのやめない?なんか普通に久しぶり〜って言おう?そっちの方がいいって」

「相変わらず元気そうで何よりだ」

ははは、と笑う第一勇者エレンス。


「む、貴様は」

その後ろから誰か出てくるが聞き流す。


「パース、彼は私たちに会いに来ているようだ。何かしら理由があるのだろう?」

「そうだな。まぁ、簡単に言うとこの町が襲われるという情報を得たんで守りに来たってとこだ」

「……なるほどな。アルレイ、私も微量ながら力を貸そう」


彼らの様子を見るにまだ町は無事だっらしい。


「お前の力が微力だったら魔王軍四天王はゴミかなんかだよ……」

「四天王と戦ったのか?」

「四体は倒した」

「それは全てだと思うのだが」

「おいおいエレンス、魔王軍だぞ?四天王とか言って魔大陸外四天王と魔大陸内四天王みたいになってると思わないか?」

「……なるほど、一理あるな」

後ろからパースとかいう回復の勇者がぴーぴー囀ってくるが無視。

その後ろの第一勇者パーティーのお仲間さんは静かにしている。

旧友との再会を邪魔しないでもらえて助かる。


「まぁというわけでお前の力を借りよう。

どうやらチラッと魔王も出るらしいからな、一人じゃ流石に辛かろうし」

「何?……なるほどな、それでアルレイがここまで来た、と。感謝する、アルレイ、共にこの町を守ろう。」

「おう、俺の守備範囲は死ぬほど狭いから八割くらいのカバーを頼む」


そしてガシッと握手をする。


「いいだろう、私は君の後ろで魔王との闘いを見守ろう。心配するな、邪魔はさせん」

「俺があいつとやるのは決まってんのね……まぁ、そのつもりで来たからいいけどさ。

んじゃ多分明日には来るから準備よろしく!

俺達は休むから、じゃあなエレンス」


日は既に傾いている。


「あぁ、改めてありがとう、アルレイ」

「気にすんなっての」







「ぷはー、またしても二人部屋!だが相手は銀髪ロリ!一ミリも気を遣わない相手って楽でいいよね、斬ってもいいんだもん」

「良くない!なーにが、もん、じゃ!可愛くないわ!」

「知らん知らん。キューロックさんは読心術使ってくるし、アマリアは可愛いし、ホリアスはトーレラさんと一緒だしで色々辛いんだよ」

「なら、一人部屋でいいじゃろうが!それと!儂も!可愛い!さん、はい!」

「銀ロリ可愛い可愛い」

「ほいほい、よくできました。これからは気をつけて儂を敬うように」

「かー、ベッド広、ふかふか!高級宿かよ!」

「ダブルベッドなんじゃし広いのは当然じゃろ……」

「あ、床で寝る?」

「……………そこで寝る」

「おっけー、端っこ協定結ぼう」

「お主絶対こっち来るじゃろ?」

「行かない行かない行くときゃ意識ないよ」

「来たら床に落としとくから安心せい」

「わー安心できるなー。ロリに手出さないのが約束されてるわー」

「そういうことじゃから感謝感激して寝ろ」

「ま、寝るけど。明日魔王と戦うなら普通に辛いし」

「……ほんとに来るのかのう?」

「分かんないけどキューロックさんが来るって言ったからなぁ、それに来たら本気で困る。準備だけはしておかないと」

「なんか儂と対応違くない?」

「儂ちゃん死ぬほど弱いから」

「弱いちゃうわ!弱ってるの!」

「はいはい、ろりろりー」

「言葉を話せー!」



騒がしい夜だった。


そして、楽しい夜だった。












「来たみたいじゃな。にしても何か妙じゃな?」

「魔王の気配が鬱陶し過ぎて分かりにくいけど、なんか多くない?」

「うーむ、大きいのが二つと小さいのが四つあるの」

「お、分かるんだ、さすが魔王。にしても四つ?四天王?内四天王が出てきたとか?」

「知らんわ、儂はそんなの作ったことないしの。とゆーか、この気配……」

「実は銀髪魔王分身してたりするの?」

「しとらん……けどな。なんで向こうから儂っぽい感じが?」

「嫌な予感しかしないなぁ……」

「行くしかないの」








町に出ると第一勇者パーティーが歩いているのを発見した。


「エレンス。小さいの四つはお前らの方にも頼ることになる」

「……力になれなくて申し訳ない」


小さく頭を下げるエレンス。

その顔は無念そう。


「魔王なんて今相手にするもんじゃねーっての。こっちはこっちで助っ人連れてるから大丈夫だよ」

「気をつけろアルレイ。何か妙だ」

「そうだな。まぁ、二週目魔王なんて碌なことしないだろうよ」

「ほれ、さっさと行くぞポンコツ」

「誰がポンコツだ!」


銀髪ロリにツッコミを入れて地を駆ける。








魔王へと向かって町を出るとうちのメンバーに会う。

白髪の少女はその顔を少し曇らせ、

茶髪の少年は微妙に眉間に皺が寄っていて、

三つ編みの少女は口を強く結んでいた。


ちなみに金髪碧眼の女性は優雅に紅茶を飲んでいる。


「アルレイ、君一人に魔王の相手を任せることになりそうだ」

「まぁ、何か居るもんね」

「何かっていうか、俺は最初見たとき、そこの銀髪があっちに帰ったんだと思ったぞ」

「帰っとらん帰っとらん」

「更にもう一つ追加です。頑張れ勇者さん!」

キューロックさんは腕を曲げ、手をグッと胸の前に持ってきて拳を握ってその手を上から下へと動かした。

「勇者さん、ですからそれはガッツポーズです」

   無視。


「アルレイさん、お気をつけて」

「まぁ、みんなも気をつけてね。俺は魔王の相手で手一杯だし、何か居る銀髪ロリっぽいのはこの銀髪魔王に任せるとして、もう一体はアマリア?」

「そうだね、準備はできてる。しかし君に補助はかけられないかな……」

「大丈夫大丈夫。倒さなきゃいけないわけじゃないし、殺す気で行って死なずに帰ってくるだけだよ」


「そうだな、俺らは第一勇者達のサポートに回るか。気をつけろよ相棒」

「それでは、また」

「あの四つはよろしく!」

「任しとけ!」

茶髪と三つ編みの二人組はそう言って去っていった。



「さて、気合い入れていこうか」

「死ねよ?ポンコツ勇者」

「そこは死ぬなよ?だよなぁ!」

「ははは、余裕があってよろしい。

しかし油断は禁物だよアルレイ」

「今の俺のせいなの……?」

「ほれほれ、さっさと行くぞう!」

「あれ、何かあいつお前の最盛期くらいあるんじゃない?」

「あー、あるっぽいの。ま、つまりほぼ儂の勝ちじゃな。儂は日々成長しとるんじゃ、旧世代のスペックしかない偽物は即刻叩き潰してくれるわ」

そう言って全身に魔力を纏って地を蹴り飛んでいく銀髪魔王。


「じゃあ私もそろそろ行くよ。

……本当に気をつけるんだよ、アルレイ。彼もまた、日々成長しているとみていいだろうからね」

それだけ言うと辺り一面に衝撃波を撒き散らしながら消える白髪の少女。


「相変わらず速!あれの相手するやつの方が心配だよ全く……」


「無駄口叩いてないで早く行ったらどうなんですか?勇者さん」

相変わらずティーカップを傾けている金髪の女性。

「へいへい、本当、やだなぁ」

呟いて深呼吸。


地を蹴る。


どうやら向こうからも跳んで来たようだ。


鯉口を切る。


黒髪の男はその手に握った剣を横に振った。

こちらも剣を振り、弾く。


「仲間が増えたか、勇者よ」

「それはお互い様だろ」

「そうだな」

剣を上から振り下ろしてくるので斜め後ろに転がって避ける。


一歩踏み込み、

右から左へ剣を振る。


上体を大きく逸らすことで避けられた。


更に蹴りを繰り出される。

肘と膝を合わせて受ける。

態勢が悪く後ろに転がった。


男から横一文字に剣が振られる。

態勢を直しつつ剣を合わせて防ぐ。

衝撃を利用して後転し、その勢いで立ち上がる。


踏み込み、剣を突く。


剣を横から当てようとしてくるので、

引っ込めて横に払う。

弾かれる。


「今日は魔法使いは居ないのか?」

声をかける。


前回火の魔法を使って目くらましをしてきた奴だ。

あれはこの男の魔法では無かった。


「居るさ、今日は邪魔なものを潰しに来ただけだ。用が済んだら戻る」

「それにしちゃ数が多いな、お前一人で十分だろ」

「そうでもない、貴様のようなものが居るときもある」


お互いに剣をぶつけ合う。


「何の準備だ?」

俺が居ると分かっていたとして、その上で第一勇者を潰そうとするなら更に数を増やすはずだし、それなら俺が居なくなるタイミングまで待った方が早い。

彼が無駄なことをするとは考え難い。

これは、一体何の為に用意した?


「準備とはな、そう大したものでもない」

男は薄く笑う。


剣を打ちつけ、そこから蹴りを入れる。

膝で受けられる。


「これは、実験か?」

「やはり惜しいな。貴様が居れば我々は更に前へと進めるだろう」

「角族を救うのに人族の力を借りるのか?」

「私は角族を救うのではない、人族を滅ぼすのだ」

「尚更意味が分かんねーよ!」


回転して斬りつける。

後ろに下がられて避けられた。


「貴様にも分かるはずだ。人族はやがて世界に大きな混乱を呼ぶ、今、数を減らしておかなければならない」

「知ってるよ!でもな、殺し尽くす以外に方法はあるはずだ。じゃなきゃこの世界がやり直された意味がない!」

「それこそが間違いなのだ、勇者よ。

この世界は人族を滅ぼし、真の強者が生きることを望んでいる」

「そんなの、そんな世界に一体何の意味がある?!」

「弱き者は強き者に従う。だからこそ強き者は強く、弱き者は強くあろうとする。何がおかしい、この世界はそうやって回ってきた」

「そんなことしてたら誰も楽しくない!」

「楽しい?生きることに楽しさを求めてどうする。辛いのは当然だろう、それがこの世界、神が定めた法だ」

「そんな世界じゃ誰もが窮屈だ。

楽しむことの何が悪い?生きていて、楽しい、嬉しい、幸せだと、そう思うこと以外に何の意味がある?この世界に生まれて、ただ生きるためだけに強くならなきゃいけないなんてそんなものは間違ってる!」


男は軽く息を吐いた。


「そうだな、そうだった。貴様とは平行線だ。貴様は人を生かそうとし、私は殺そうとする。この差は埋まらない。しかしな、勇者よ。貴様がいつか、人に絶望したとき、そのときはこちらに来るといい、私はいつでも貴様を歓迎する」


それだけ言うと男は消えた。


長い間戦っていたような気もするし、一瞬だった気もする。


「お前のところになんか……行くわけないだろ」


地面を蹴る。

仲間の様子を見に行かなければ。









そこには、ただ一人、銀色の魔王が居た。



「ふむ、完全復活、と言ったところかの」

手を開いたり閉じたりしながら体の調子を確かめている様子の魔王。


「よう、終わったか?」

そこに刀を握って近寄る。













魔王は拳に魔力を纏いそれなりの速度で振るってきた。


剣を振る。


拳と剣がぶつかり合う。


互いに弾かれた。






「いい感じみたいだな」

「お主な……もちっと驚いてもよかろ?儂としては敵対行為と見られても仕方ないと思っとったんじゃがな」

「それにしちゃ遅い」

「最後の礼かもしれんじゃろ?」

「お前はそんなことしないよ、敵は殺す。それが何であれ」


刀を軽く振って鞘に納める。


「………そーじゃったな。ま、いいじゃろ、白髪のはまだ戦っとるっぽいの」


二人揃って駆け出した。








そこは、地獄だった。


白い何かが通ったかと思うと黒い影のような者が吹き飛ぶ。


黒い影のような何かが剣を構えて待ち構えるも、その姿を捉えられず呆気なく弾き飛ばされる。



耳が壊れるような破裂音がしたかと思うと隣に白髪の少女が立っていた。


「やあアルレイ。そっちは終わったようだね。私だと火力が足りなくて困っていたところだよ、手を貸してくれるかい?」


黒い影のような何かは既にボロボロで、瀕死にしか見えない。


「嘘じゃな。あいつ瀕死じゃよ」

「うるさいよ銀色の」

「うるさかったのはお前じゃ白色の」

「別に……斬るけどさ?」


一歩、距離を詰める。

既に瀕死のそれはこちらに反応はしたが、ひどく遅い。


剣を振った。



「さて、ホリアス達のところに向かおうか、アルレイ」

「どうじゃった?ボロボロじゃったろ?」

「何も言えません」

「確定じゃな……」


どうやらアマリアは魔王討伐の準備運動がてらにあの黒い影を轢いて遊んでいたようだ。

ちょっと強いのが仇となり死ぬに死ねず、一方的に蹂躙されていたのだろう。


「……たぶん」


「儂のがもっとソフトにやるんじゃがなぁ」

「お前のアレをソフトと呼べるならな……」

背中から脚が飛び出るようなものはソフトではないです。



「ほら、アルレイ?早く行くよ。町が燃えだしても困る」

「ホリアスがキレて焼け野原になってないといいんだけど」

「え?町ごといっちゃうのアイツ?」

「近距離戦苦手だから……」

「ついでに言うと彼は地形破壊が得意だ」

「市街地で戦わせる奴じゃないじゃろ……」

「まぁ、しょうがない」


三人とも微妙な顔をしながら町の近くで戦っているであろうホリアス達の元へ駆けた。

お読みいただきありがとうございました。

そう言えばなんですけど、題名を変えました。

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