16:助けを求めて
どもです。次も頑張ります。
「それじゃ、何であいつが居るのか教えてもらおうか、相棒」
素敵な一日を過ごした次の朝。
宿を出て、茶髪の男を探した。
「あいつは、……この世界のあいつは、生かしておきたいと、思ったんだよ」
「………そいつは……殊勝な心がけだがよ」
ホリアスは顔をものすごく顰める。
「彼女は俺の罪の証だ。彼女を見ればいつだって俺の失態を思い返すことができる」
「……それ、誰かに言ったか?」
ホリアスは大きくため息を吐くとこちらをその青い目で見てくる。
「……言ってないなぁ。最初はそんなつもりなかったしさ、殺すつもりだったんだよ、キューロックさんが魔王を仲間にする勇者もいいって言ったからさ。そういうのも、悪くないのかなって思っただけだよ」
ホリアスはまた、ため息を吐いた。
「……おめぇの後輩がいねぇとこの辺はどうにもなんねぇな」
そして、空を仰いだ。
「いつ帰ってくんのかなぁ、ポニーちゃん」
「まだ一年も経ってねぇよ。そりゃ流石に早熟過ぎるんじゃねぇの?」
「うちの子天才だから、基本を学んだら後は実戦でちょちょいよ」
「……そうだといいな。まぁ、半年経ったら迎えに行ってみるのもいいんじゃねぇかな。それと、だ」
彼は指をさしてくる。
何か、既視感がある。
「何かあったら誰かを頼れ。お前のやったことは、もうみんな忘れちまってるかもしれねぇけど。お前がやってることはみんな知ってる。誰にだってできることじゃない、だが、お前にしかできないとは言わん。でも、お前が弱ってるとき、お前には仲間がいる。そいつを頼ってもいい、見ず知らずの誰かに話しかけてみて、そいつがいいと思ったならそいつに頼ってみてもいい、小っ恥ずかしいかもしれねぇし、いつだって頼れるわけじゃねぇのかもしれねぇけど、お前の母親だって頼れるんじゃねぇのか?……まぁなんにせよだ。あんまり抱え込み過ぎんなよ、魔王倒す前に勇者が倒れちゃことだ」
そう、最後にニカッと笑って締めくくった。
「っていうことがあってさー。いやー、本物だよ。マジでいい奴。もう泣けるね、泣いたわ」
「うるさいのう。仲間が帰ってきたならそいつらに話せばよかろう。なぜ儂のところに来る?……惚れたか?」
ホリアスと別れると銀髪ロリの部屋に行った。
「うるさいなぁ、お前の身は多分狙われないって報告だろうが、今のはさ」
「はー?そうじゃったの?儂お前のレベルの低い言語分かんないからさ、ごめんなー」
「ぷっちーん。もう怒った完全にキレたね。……ところで次どこ行く?完全に当てがないんだけど」
「……あのなぁ、あんまり馴れ馴れしくされるのも困るんじゃが。儂一応魔王なの、わかる?角族のボス。お主が倒す奴と一緒」
ため息を吐かれた。
最近誰かのため息しか聞いてないかもしれない。
「そうかもしれないけどさぁ。いいじゃん別に、俺はお前と話しに来たの!」
「あーもう、うるさい!分かったから勝手に話せ。テキトーに聞いてやるからの」
ベッドに転がり大の字になるロリ。
「で、次どこ行こう」
「魔大陸でいいんじゃないかの」
「魔大陸って言ってもさ、まだこっち側に角族残ってるでしょ」
「それは他の勇者どもに任せい。お主が魔大陸に乗り込んで魔王城でもなんでも吹き飛ばしてきた方が早いわい」
「それは、確かに早いだろうけどさ」
「ぴーぴーうるさいのう。儂に聞いたのが間違いなの、文句あるならどっか行け」
「ない!もうそうしよ、めんどい。帰りたい、ポニ子に会いたい」
「こんな奴が勇者とか世も末じゃな……」
銀ロリは諦めて目を瞑ったようだ。
「と、いうことで。魔王を倒しに魔大陸に行きます。いいと思う?」
「ダメですね。魔王が魔大陸に居ません。第一勇者を狙っています」
「え、ずっと狙ってるの?一回帰らないの?」
「帰りましたよ、この前」
「今じゃないなら関係ないんだよなぁ。それで間に合いそうなの?」
「もちろん。今から行けば間に合います」
「じゃ、次の目的地を教えて下さい。」
「了解です。次の目的地はキーズンの町です。なんで、こんなところに第一勇者が居るのか気になりますか?」
「それ聞いて何か有益だったりする?」
「さぁ、私には分かりません」
「そういうことなら、あんまり興味ないかな。聞いといた方がいいことなら聞いとくけどさ」
「そうですね。気になったならまたいつでも言ってくださいね?」
「分かった、それじゃみんなに相談してくる」
「いってらっしゃい、勇者さん」
手を振るキューロックさんに見送られながら部屋を出た。
「それではこれから、第一回第一勇者応援作戦の作戦会議を始めます」
みんなをミーフィスさんの居る宿へと
集めた。
「第一勇者……エレンスさんでしたよね?」
なんだか、すごく久しぶりにトーレラさんの声を聞いた気がする。
「えぇ、そうです。彼は今魔王に襲われる危機にあります」
キューロックさんが手元のなにかを見ながら言う。
「あー、あれか」
ホリアスは思うところがあったようで頭を抱えている。
「ホリアス、何か知っているのですか?」
「知ってるっていうかな。今の第一勇者がどのくらい強いのか知らねーけどよ、まぁ、おそらく負けるだろうな」
「そんでもってポックリ離脱じゃな」
前回集まってたときは静かだった銀髪魔王だが、今回は話し合いに参加するようだ。
「そうですね。今の彼が魔王を倒せるか、というと少し難しいでしょう」
「そもそも何故魔王は第一勇者を狙うのでしょうか?」
トーレラさんは軽く首を傾げている。
「それは恐らく彼が一番倒しやすくそして目に付いたからだろうね」
アマリアがそれに答える。
「第三勇者の奴は狙われんのかの?」
「アビたんは魔王から見られてないから……」
アビたんは第三の刃、隠れているのである。
よく分からんけど。
「まぁ、魔王云々は置いといてだな。第一勇者を助けるメリットは何だ?」
ホリアスは冷たい目をしている。
「ホリアス?」
トーレラさんはホリアスのことを眉を顰めて見ている。
「……魔大陸に入ってから、当然だけど味方はかなり少なくなる。魔王と戦っているときに茶々を入れられると面倒だ。……それに露払いは居た方がいい」
「あー、ま、そうだな。それなら助けに行く理由になるか」
ホリアスは一つ頷いて答えを出した。
「全く……貴方は素直じゃありませんね」
トーレラさんはため息を吐いた。
「そんで?もう助けに行くの、決まったのか?」
銀髪魔王は話を纏めにかかった。
「私に異論は無いよ。盾は多い方がいい」
アマリアは発言が危ない。
「いいんじゃないでしょうか?私別に戦いませんし、それに勇者さんなら一割くらいの確率でしか死にませんよ」
「それ、十回戦ったら一回死んでるよね……」
「そうならないように気を張って戦えば魔王を倒すのは難しいでしょうが追い払うことはできるでしょう」
「んじゃ、魔王撃退作戦開始じゃな!」
「お前が纏めんなよ!」
ポカンと銀髪ロリの頭を叩く。
「いったぁ!女の子叩くとか躾がなっとらんよな、全く。こんなだから恋人も居ないんじゃよ」
「うるさいな、恋人くらい居るよ!」
「へー、どこどこ?何じゃ、故郷にでも置いてきたか?」
「はっ、勝手に言ってな!」
「うわー、逃げたー?ダサいのう今回の勇者ダサダサじゃのう」
「お前らな…」
ホリアスが白い目でこちらを見ていた。
「……えー、というわけで次の目的地はキーズンの町です。張り切っていきましょう」
おー、と静かに声を上げるみんな。
何となく、みんなとの絆を感じられたような気がした。
お読みいただきありがとうございました。
ロリ魔王との会話は楽しいです。
ミーフィスさんを書くのはロリ魔王を書く時間の5倍くらいかかります。
50万字も書かずにこの作品終わるのでは、という恐怖が自分を襲っています。どうでもいいですね。
とりあえずちゃんと完結させるのでまた読んで下さると、嬉しく思います。