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15:すてきなひと

どもです。



「さて、まずはお疲れ様だね。アルレイ」

白髪の少女の耳心地の良い声が聞こえる。


戦いも終わり、取っていた宿で集まった。

アマリア達は新しく宿を取ったみたいだ。


「結局何だったのかな……」

「さあ、そこは私には分かりかねるよ。しかし、何か向こうにも変化があるということは確かだ。これからはあちらの行動の変化にも気を配った方がいいだろうね」

「変化ねぇ。……そういえば魔王に会った」

「それはそこに居るそいつのことか?」

ホリアスが俺の後ろに居る銀髪魔王を指している。

「違うよ、現魔王」

「……無事だな」

上から下までこちらを見てくるホリアス。


「彼にも何か変化があったのかな?」

アマリアが顎に手を当てている。


思い出すのはすこぶる天気の悪かったあの日。


「久しいな、って言ってた」

「……そうか。アルレイ、君は魔王を倒した。その認識に間違いはないかな?」

「アイツを斬ったことは確かだと思う。気配が消えたようにも感じた、けれど……」

「魔王が生きていた可能性もある、ってのか……」

ホリアスが眉を寄せながらそう言った。



「そうだね。気にしなければならないことではある、しかし今は休もう。特にアルレイ、それなりに消耗しているようにも見える。今日は早く寝るといい」

沈黙を打ち破り、アマリアが声を上げる。

その紫の瞳はこちらを見ている。


「……そうだな。明日起きたら色々聞くわ、特にそこの奴のこととかな」

ホリアスも同調し、銀髪魔王にもう一度指をさす。


「ありがとう。今日はちゃんと休むよ……ところで話は変わるけど、アマリアって一人部屋?」

「部屋に入ろうとするな、休め!」

ホリアスにポカンと叩かれた。

アマリアも苦笑いだ。


「ちぇっ、折角のチャンスだったのに……。まあ今日は解散ということで」


みんなは部屋から出ていって各々の部屋に行った。



「ちなみに部屋割りはホリアスさんとトーレラさんの二人部屋、アマリアさんの一人部屋だそうですよ、勇者さん」


更に、アマリアはホリアス達とは別の宿に泊まっているらしい。


「ちょっと迎えに行ってくる」


「えぇ、行ってらっしゃい」

キューロックさんは今日も優雅にティーカップを傾けている。







「あら、アルレイ?」

部屋を出て、宿の出入り口へ向かっていると輝くような美しさを持った少女に出会った。


その背には1本の刀が下げられている。


「あ、ミーフィスさん。さっきはありがとう」

「どういたしまして。まあ、ちょっとしたお礼だと思っておいて」

「お礼?」

何の話だろう。

「貴方の戦い見たわよ?こっちは雑魚ばっかりで暇だったから」

「あー、となるとあの三人の」

「えぇそう。見ていて胸が熱くなったわ。手に汗握るって感じだった。特に最後、突きに行ってクルッと回ったかと思うと首を斬ったわよね、そのまま槍も止めちゃうし。私はああいうの得意じゃないからとってもよかった」

少し赤くなった表情できらきらと輝く少女。

「あー、そう?うん、どもー」

微妙な返事しかできない。


彼女はこちらの様子に気がつくと咳払いをして、佇まいを整えた。

「……ごめんなさい、ちょっと上がってきちゃって。そうね、貴方はあまり気分が良くないのね?」

そう言ってこちらの顔を伺ってくる。


上目遣いになっているので大きな瞳がより大きく見え、顔が近いので蠱惑的な唇が瑞々しいのがよく分かった。


「まぁ、あんまり慣れないかな……」


「……いいわね、やっぱり気に入ったわ。大して自慢できないことだろうと、私に褒められたら大抵調子付くものよ。それが気分が悪いだなんてホントに面白い。ふふ、全く失礼しちゃうわ、女の子に褒められたらなんとなく喜んどきなさい?」


彼女はおかしそうに笑う。


「えっと……はい」


「それと、」


そう言って彼女は更にこちらに近づいてくる。





ふわっと甘い香りがした。



「これはご褒美ね。よく頑張りました。私がハグしてあげることなんて滅多にないんだから、感謝なさい?」


そう言って眩しい笑顔を見せると髪を靡かせながら去っていった。


「うわぁ、やば、お姉様って呼びたい」


キューロック親密度メーターが下がりそうな事件だった。






アマリアの居る宿までやってきた。


そのまま静かにアマリアの部屋へと入る。


ノック?……知らない文化だ。


部屋を見回すが彼女の姿は見えない。


ベッドを見ると白髪の少女が寝ていた。


1.近寄る。

2.部屋から出る。

3.部屋を物色する。


ここは1.を選択。

静かにアマリアに近づいた。

彼女は静かに胸を上下させている。


1.声をかける。

2.タッチ。

3.ベッドに入る。


3.かなー。

そっと彼女の隣に転がる。


さて、次は何しようかな。



「アルレイ」

声がかかった。

耳元で。


「は、はい」

上擦った。


「君は先代の魔王と話して何を思った?」


どうやら真面目な話らしい。


「……あいつも生きてるんだなぁって」

「それは、彼女も一人の角族として生活している、ということかい?」

息がかかる。


「………そう。ご飯食べて、寝て。明日は何しようかって考えて、日々を過ごしてる。当たり前のことなんだけどさ。やっぱり、ただの敵として倒すのはちょっと違うのかなって思ったんだよ」

「彼女を倒すのが嫌になったのかい?」

息を吸って、吐く。

たったそれだけの音が聞こえる。


「…………いや、敵は敵。親でも子でも、友でも、それが敵だというなら倒す、それだけだよ」

「なら、君は私が敵になったらちゃんと倒せるのかな?」


ため息を吐いた。


「アマリアを倒してでも、欲しいものがあるならね」

「……そこは、君以上に大切なものなんてないよ、と言うのが効果的なんじゃないかな?」

耳に何か柔らかいものが当たったかと思うと、ゼロ距離で囁かれた。


「う、うちのアマリアがこんなことする日がくるとは…」

「私も日々成長しているということだよ」

先ほどより離れたところで声がする。


「それは……進んでいい道なのか迷うところかな………」


お互いに黙っている。


俺は天井を見続けるのが辛くなったのでアマリアの方を向いた。


紫の瞳と目が合う。


「ねぇ、アマリア」

「何かな」

「アマリアは……」

「なんだいアルレイ、ここにはみんな居るじゃないか?誰も死んでなんかない、悲しむ必要なんてないんだよ」

「……そうだよね。うん、そう。ところで話は変わるんだけれどね。……アマリアは居なくならないでよ」

彼女は静かに息を吐いた。

「アルレイ、話が変わってないよ。それに、それは無理な相談だ。人は死ぬよ、アルレイ。……いつか、それがいつかは分からないけれど、いつかはきっと誰も居なくなる」

白髪の少女は静かに語る。

「だからさ、アルレイ。それまでは共に居よう。私もその為に努力はするよ。……あの世界で、彼女の代わりをした、その責任を取ろう。君は、敵は倒すと言ったけれど、私はね、アルレイ。できる限り、最大限に君の味方であろうと思うよ」

「……責任は無いよ。アマリアは俺の居て欲しい時に居てくれた。それだけで十分だったんだ。……だったんだけどね、やっぱり君には居て欲しいよ。……けれど、もしも嫌になったなら、黙っていなくなってくれてもいいよ」


白髪の少女はこちらに背を向けた。


「そうしようかな、あんまりメイリーとの仲を見せつけられても困るからね」

「あー、うーん、そうね。そーねぇ。そうだよねぇ」

すごく言葉に困った。


ポニーテールは今日も元気に揺れているだろうか?

お読みいただきありがとうございました。

明日は無理かもしれないです。

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