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13:私は風の子、風の導きのままに

テンプレートをやめました。

小説を読んでもらうのって大変ですね。




「アマリアと話をしたいんだけど、どうすればいいの?」

ふと、思い出したことを聞いてみた。


「アマリアさんですか?少々お待ち下さいね。」

金髪の女性は手に薄い板のような者を持つとそれを耳に当てた。


「……勇者さんが話をしたいって言ってまして。……えぇ、困ったものです。…………

はい、どうぞ。使い方は私と同じようにしていただければ大丈夫です。話終わったら私に渡して下さい。」


耳から板を離すとこちらに手渡してくる。


それを受け取り同じように耳に当ててみる。


「えーと?これで大丈夫なの?」

「あぁ、問題ないよ。」

板からアマリアに似た声がする。

「えぇ、それで問題ありません。」

キューロックさんが横で頷いている。


「アマリア?」

「何かな?」

「んーん、それでホリアス達はどう?」

「あぁ、武器の調達は完了したよ。今から集合地点に向かうところだ。」

「そかそか、良かった良かった。メイリーは大丈夫そうだった?」

「そこは私からはなんとも言い難いかな。」

「そーか、こっちも今から向かおうと思うよ。」

「了解した。そっちは収穫はあったかい?」

「刀一本、すごい使いにくいやつ。」

「その割には嬉しそうだね。」

「まぁ、こいつを早く使いこなせるようにしたいところ。」

「あぁ、頑張りたまえよ。」

「ねぇアマリア?」

「何かな、アルレイ。」

「元気?」

「あぁ、問題ないとも。」

「そっか……後、言い忘れてたんだけど、魔王を仲間にしたんだ、先代の。」

「………はは、相変わらずおかしな奴だよ。」

「今回は俺のせいじゃないって。」

「そうか、あの人が原因か。」

「うん、そう。」

「……」

「………」

お互いに黙る。

「じゃあズイシャの街で会おう。」

「そうだね……君に会えるのを楽しみにしているよ、アルレイ。」

「えっ?」

声が聞こえなくなる。


「キューロックさん、これ、終わった?」

「見せてください……はい、終わってますね。」

「すごいね、これ、何の魔法?」

「さぁ?私は詳しくないので。」

くすり、と笑うキューロックさん。


「えーと?んで、次はどこに向かうんじゃ?」

「次はズイシャ、アマリア達との集合場所だよ。」

「うげ、アマリアっていうと…」

「そうですね、前回貴方を葬った方です。」

「会いたくないのう。儂帰ってもよい?」

「還ってくれるなんて助かるよ。」

「勇者さん、字が違いますよ?」

「うがー。いいもん!儂行くし、まだ儂何にも悪いことしてないもんね。」

「魔王やってたじゃん。」

「それは過去の話!今は今なの、分かるか、ポンコツ勇者?」

「はいはい、せいぜい茶髪に燃やされないように気をつけてね。」

「気が重いのう、なんで儂そんなにヘイト集めてんの?」

「そりゃあ、そうなるよ。」

「あー、そうじゃなぁ。」

ガックリと項垂れる銀髪ロリ。


「さぁ、行きましょうか、勇者さん。」


声をかけて先を歩くキューロックさんの後を追って走る。


「ふわー、もう嫌なんじゃけどぉー。」

銀髪ロリもうだうだ言いながらついてくる。


「何かもう、殺す気しないよなぁ。」


「物騒じゃな!こぉんなにプリチーな儂に手をかけるとかお主やっぱりそういう趣向を持っとるんじゃろ?」

「持ってないっつーの。」


騒ぐ銀髪は無視することに決めた。


俺は、この少女を、敵にしたくはない。



「まぁ、敵になったらなったで、しゃあないか。敵は敵、親でも子でも、友でも。それが敵なら斬るだけ、か。」


一人、ボソリと呟いた。


「やっぱ、お主あの爺の弟子じゃな!血も涙も無いわい。」

「へーい、お前も首を洗って待ってろよ、と。」

「えぇ?儂もう仲間じゃろ?そこで後ろからバッサリとかお主本当は人間じゃないな?」

「やっと気づいたか、遅過ぎて退屈だったよ。」

「マジか!人類の敵なら儂味方に付かなくてよくない?」

「残念でした、キューロックさんも人間じゃありません。」

「嘘じゃ!え、本当?うわぁ、盲点じゃった。人外コンビで魔王討伐やっとったのか…」


ぶつぶつ呟くロリっ子を引っ張りながら馬車に乗る。


「全く、遅いですよ?勇者さん。」

金髪の女性はお怒りだ。

「ごめんごめん、ちょっとゆったり歩いてた。」

手を合わせて謝る。

「もう、今晩は寝かせませんからね?」

「ちょっと待って?それは違うよね?」

「違いません。」

キューロックさんは目を閉じて小さく笑った。


「ねぇ?嘘だよね?また二人部屋なの?」

「三人部屋がお好みですか?強欲な勇者さんですね。」

「不吉だから強欲とか言うのやめてくれない?」

強欲の堕天使に目をつけられたらどうするのだ。

「勇者さんは既に傲慢に目をつけられていますから安心してくださいね?」

「もう今晩とかどうでもいいからさ?そっちどうにかならないの?!」


堕天使は七体いて、一体一体が各自の役割を持っている。


堕天使は気に入った罪人にそれに相応しい証を与えると共に力を与える。


堕天使に目をつけられると、恐ろしい目に遭う。

というのが天使教会の教えである。


別に天使教会に入って天使を信仰しているわけではないが、縁起が悪いとは思う。


「どうにもなりませんね。それにそんなに悪くないかもしれませんよ?」

「証を貰ってからじゃ遅いでしょうよ…」

「まあまあ、そう落ち込むなポンコツ勇者。」

「そうだな、これから死ぬ奴に励まされちゃあ俺も頑張るしかないよな。」

「儂死なんよ?!何で儂の死確定してるの?

ねぇ?白髪の何か言ってたの?」

「楽しみに待ってるってさ。」

「いやぁぁぁ!せめて、せめて爺がくたばってくれていれば、本気でやれるのに…」

「魔族と魔法合戦とか魔王てヤバすぎ、尊敬しますよほんと。」

「うわぁぁぁ、本気出してやられてたの忘れてたぁぁぁ!しかし、儂は日々成長している!それに最初っから本気でいけばいけるはずじゃ………怖くない、大丈夫、世界は儂の味方……儂はこの世界のアイドル、何の問題もない!」

「うるさいなぁ。」

「誰のせいじゃと思っとるんじゃ!」

「ほいほい、すみまー。」

ロリっ子と戯れていると視線を感じた。


金髪の女性が静かに紅茶を飲んでいる。


「ロックさん?」

「はい、何でしょうか?」

「俺も貰える?」

「はい、どうぞ。」

どこから取り出したのか分からないティーカップを渡されると、これまたどこから取り出したか分からないポットで紅茶を注がれる。


俺は静かに立ち上がり彼女の隣に座り直すと、そこで静かに紅茶を飲んだ。


目の前で銀髪ロリが同じように紅茶を強請って、ふーふー、と息をかけて冷ましながら飲んでいるのが印象的だった。








「着きましたね。」


馬車から降りて街並みを眺める。


ここはズイシャの街。

魔大陸に近く、それでも他と比べれば離れていて、それなりに安全な街。


今日のズイシャの街はそれなりに人が居た。


「アマリアさんはまだ来ていないようですね。」

手元を見ながら話すキューロックさん。

相変わらずその手に何か持っているようには見えない。


「見たいですか?」

「本か何かでしょ?」

「まぁ、形状は本にしていますね。」

「形状…」

怪しい発言が聞こえたがこれを気にするのはめんどくさい。

「面倒だなんて……怠惰?」

「え……そんなことで?」

怠惰の堕天使、勤勉過ぎない?


「儂、怠惰に過ごしたら権能与えられたりしない?傲慢にも過ごすよ?」

「勇者さんは人気なんですよ。」

「そんなー、儂だって人気になりたいー。」

「嬉しくねぇよ。」

もうどうでもいいから早く宿取ろうぜ。

「あー、宿どこにしようかなー。」

「たまには自分で決めますか?」

「そうしてみようかな。」

キューロックさんに促されるままに宿を探す。


「いらっしゃい、ここの宿どう?泊まってかない?」

ピンク色の髪を長めに切った美しい少女が宿の前で呼び込みをしていた。


「あそこ、どう?」

キューロックさんに声をかける。

「ふむ、まぁ…いいんじゃないですかね?」

彼女にしては歯切れが悪い。

顔色を伺うと少し眉を寄せていることが分かったがこちらに気がつくと無表情になった。

「悪い宿なの?」

「いえ、今は随分良くなったみたいですね。」

「今は、ね。前は駄目だったの?」

「駄目と言いますか…人手が足りずに宿として立ち行かなくなっていたようです。」

「なるほどね、それがどうして急に立ち行くようになったのかな?」

「それはですね。」

キューロックさんが次の言葉を言うために間を置いた。


「あら、そこの金髪の貴方。どう?宿取らない?」

薄い金色の瞳がこちらを見ている。

その目は星のように輝いていた。

目鼻立ちが整っていて足はすらっとして長く、眩しいほどに白い。


はっと、息を飲んだ。


「ねぇ、貴方、泊まっていくんでしょう?」


スタスタとこちらに歩いてきてその眩いばかりに輝く瞳をこちらに向けてくる。


「と、泊まっていこうかなって話してたとこなんだ。」

チラッと後ろを確認すると静かに目を閉じている金髪の女性と興味深そうに呼び込みの少女を見ているロリ。


「うん、ここでいいや、ここにしよう。」

後ろがだんまりを決め込んでいるので独断で決めることにする。


「そう、なら奥に入って茶髪の受付の子に話してきて。」

じゃあね、と手を振る美しい少女に手を振り返しながら受付の子に話しかけて宿を取った。


頭の中はあの眩しい少女でいっぱいなので会話の内容をあまり覚えていない。



部屋に入って気がついた。


「また二人部屋じゃん…」

「…そうですね。」

今日のキューロックさんは静かだ。

「どうかしたの?」

「いえ、特に何も。」

そして素気無い。

更には部屋から出ていった。

「え?ちょっと、キューロックさん?」


「彼女が来るそうです。貴方と話がしたいと。」

「貴方って、割と初めて呼ばれた気がするんだけど…それより彼女って?アマリア?」

「いいえ、宿の前にいたあの少女です。」

「え、何で?」

特に縁はない。


そこでキューロックさんは軽く息を吐くと、いつも通りの笑みを浮かべた。


「さぁ?私にも分かりません。想像はできますけどね、あんまり可愛いからって童貞丸出しで行くと嫌われますよ?」

「ねぇ、何なの?関係ないよね?というか俺にそんな余裕無かったの知ってるよね?」

「えぇ、もちろん。」

ニッコリと笑う金髪の女性。


やっぱりそっちの顔の方が俺は安心する。


「笑われて喜ぶだなんて困った変態さんですね。」

ふふふ、と笑って部屋を出ていってしまうキューロックさん。


「それにしても…妙な気配の人だったな。」


呼び込みをしていた少女。

眩いほどに美しくて、思わず目を背けそうになった。

その美しさはこの世界には相応しくなく、違う世界から来たと言われてもすんなりと納得ができるだろう。


トン、トン、と誰かの足音がする。


キューロックさんは俺と話をするために彼女がここに来ると言っていた。


誰かが部屋の扉を開けてこちらに踏み入ってくる。


ピンク色の髪はきらきらと艶めき、その薄い金色の瞳には確かな強い意志を感じた。


「何かデジャブ感あるな…」


「私と会ったことはなかったわよね?」

俺の発言が聞こえたのか不思議そうな顔をする美しい少女。


「無いと思うよ、会ってたら忘れないだろうし。」


君のような美しい女性に会ったならば忘れることはないだろう、という台詞を聞いたことがある。

まさかそれに近いことをこんなに真剣に言う日が来るとは思わなかった。


「あら、そう。…立ち話も何だし、私はそこ座るけど貴方は?」


彼女はそこ、と言って2つあるベッドの内の一つに腰掛ける。


キューロックさんの言葉が脳裏に過ぎる。


が、特に何も考えず彼女が座っていない方のベッドに腰掛ける。


「ねぇ、貴方、魔王を倒したんでしょう?」

顔をこちらに向けて聞いてくる。

さらりとピンクの髪が肩から流れ落ちた。


「どうやら倒しきれなかったみたいだけどね。」

「あら、そうだったの?」

驚いたように目を丸くする。

見開かなくても大きな瞳だと思った。


「…貴方、世界を救うんでしょう?」

彼女は前を向いて、どこか遠くを見るような目つきをしている。


「俺は魔王を倒しに行くだけだよ。」

「世界を救う英雄に興味は無いの?」

「無い、と思うよ。そういうのには向いてないと思う。」

「でも魔王を倒したら貴方が英雄よ。」

「そうならなかった人を知ってる。人殺しが英雄だなんて。そういうのは人の命を救うために頑張ってる人達にあげてほしいよ。」

「逃げるの?」

薄い金色の瞳がこちらを向いた。

「そうだとも。何せそういうのは嫌いだからね。」

「…カッコ悪い。世界を救う英雄だなんて聞いたから期待してたけど、期待外れみたいね。」

クスリと笑ってから、

ベッドから素早く立ち上がると、口調とは裏腹にとても愉快そうに微笑む少女。


「やっぱカッコ良くしなきゃダメなのかなぁ。」

彼女の視線から逃げるように頭を抱える。

「さぁ?知らないわよ。まぁせいぜい頑張りなさい。そうしないとモテないわよ?」

彼女はピンクの髪をかきあげた。

きらきらと輝く髪の一本一本が眩しい。


「モテたいモテたいってやってる奴はモテないって聞くし、モテる為に努力をしない奴もモテないって聞くし、いまいちよく分かんなかったけど。貴女にそう言われるなら頑張れそうだよ。」


「ふふ、いいわね、やっぱり話してよかったわ、名前くらい聞いておこうかしら。貴方、名前は?」


右手を腰に当て胸を張る少女。


「アルレイ・モーディスト。貴女の名前を聞いてもいい?」


「ええ、もちろんいいわよ。私はミーフィス。また会いましょう、アルレイ。」


そう言って長く白い足を動かしてその場を去っていく。


辺りには果物のような香りが残っていた。


お読みいただきありがとうございました。

こっちは続けましょうかね。


感想とか…書いてくれてもいいんですよ?

誰か、この作品の登場人物を気に入ってくれる方が居たらいいなと思って書いています。

ちなみに私はウェポ(うるさいので割愛


書きたかったのはミーフィスさんです。

自信のある女性って素敵だと思います。

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