12:今日は静かな日
お越しいただきありがとうございます。
今日は一段と短いです。
四天王を倒します、多分四天王です。
天気は晴れ、雨は降るのか分かりません。
お供は銀髪ロリに金髪美女。
側から見るとお散歩ですかね。
まぁ、俺が武装してるんで違うんですけど。
「勇者さん、頭の悪そうな脳内ですね。」
「もう…それでいいです。」
既に諦めている。
「お、やっぱ四天王っぽいのう。このピリッとした空気、勇者よ来いって感じじゃな。若いのー。」
手で庇を作り遠くを見ている魔王。
ちなみに今俺たちは真っ正面から街に入って
行く訳もなく、壊れた塀からチラッと街の中を覗いている。
街の中にはまだ人がいるらしい。
じゃあ何で昨日、宿で寝てからここに来たのかというと、単純に死ぬほど疲れてたからである。
魔王と戦うのとか本当に無理、疲れ過ぎて死ねる。
あの黒髪の男、様子見とか言って剣を振っていたようだが、こっちはかなり疲れた。
頭に残る暗い声。
忘れるつもりもない。
まあ、そんなお疲れの最中、人命のために街に突っ込む奴がいるなら知りたい。
別に俺はこの街の人を救いたくて旅に出たわけじゃない。
もちろん助けられる人は助けるけど。
無茶してばかりじゃ助けられるものも助けられない。
本当に守りたかったものさえ守れない。
「そんなのは二度と御免だ。」
「勇者さん、ここの親玉らしき存在はこの街の中央に居るみたいですね。そこでこの街の住民を一人一人殺しながら挑戦者を待っているようです。」
「なるほどね。」
「やっぱお主あの爺の弟子じゃなー、正義感とかないの?義憤に駆られて飛び出すとか。」
「おいおい、老害と一緒にすんなっつうの。」
「だから老害言うな!」
「…まあさ、こっちだって殺してんだし、人が死ぬのは最初から決まってるし、こんなとこ住んでりゃそういうこともあるよ。」
「それで見過ごすのか?」
「いーや、俺は別に助けに来たわけじゃない。…邪魔なものを潰しに来ただけだ。」
あの男の言葉を借りる。
あの男にはもう二度と会いたくないけど、俺はどうにもあの男が嫌いになれない。
あの男は真っ直ぐ正直だ。
ただ、目的のために邪魔だから、正面から叩き潰す。
それだけ。
角族が皆あの男のようだったら、もしかしたら人間と分かり合う未来があったのかもしれない。
「…いや、ないわ。人類が滅亡して終わりだ。」
刀はまだ鞘に入っている。
その柄を軽く握った。
地面を蹴る。
街には多くの角族が徘徊していた。
全て無視する。
狙うは大将首。
人が大勢見えてきた。
周りを二本の角が生えた者たちが囲っている。
まだ、こちらには気付いていない。
その中に一つ大きな男が居た。
いや、大きさは他と変わらないが、纏う気配が違う。
その男は大きな斧を担いでいる。
速度を落としてそのままゆっくりと地面を歩く。
敵の視線から逸れる。
男はまだこちらに気付いていない。
一歩、距離を詰める。
男がその斧の柄を強く握った。
剣を振る。
斧を振るわれることで刃がぶつかり弾かれる。
しかし、相手の斧はそれで斬れた。
男は体に魔力を纏ってその斧だったものを叩きつけてこようとする。
一歩、振るわれる斧を避けた。
一歩、男の死界へ移動する。
男はこちらを追って体の向きを変えたので、
一歩、男の正面に移動する。
剣を突く。
そして、男の首に刺さったそれを縦にストンと下ろした。
邪魔なので蹴り飛ばす。
刀に負担を掛けないように一応丁寧に。
ドサッと首から下を縦に斬られた男が倒れた。
周りには動き出した角族。
その中に特に目立つような存在はない。
剣を軽く振って鞘に納める。
一斉に飛びかかってくる角族達が居た。
その後方で魔法の準備をしている者もいた。
鯉口を切る。
剣を振った。
近くに居た奴らを斬った。
剣を振った。
魔法を準備をしていた奴らを斬った。
剣を振った。
他に残っている角族を斬った。
皆一様に、首が飛んだ。
刀を軽く振って、鞘に納める。
周囲に敵意は感じなかった、ので
その場を去ることにした。
「敵が居ないなら、後は俺の出番じゃないさ。」
血塗れの殺し屋はお呼びでないのだ。
「うー、ゾクッとするんじゃよなぁ、あれ、いつ儂の首が飛ぶのかと冷や冷やするんじゃよ…」
銀髪魔王が何か言っている。
「お疲れ様でした、勇者さん。」
「おつかれ、俺。」
ひとつ、何とは無しに頷く。
「さて、次はどこに行こうか。」
「さぁ、どこに行きましょうか、勇者さん。」
彼女はニコリと口元に笑みを作っている。
その金の髪がさらさらと風に靡いていた。
お読みいただきありがとうございました。
次回はまた新しい登場人物が出ます。
多いような気もするんですけど、出したい…。
次回はそこそこ長めにしてあると思うので今回の短さはお許しください。
そろそろまたウェポンマスターちゃんが書きたい…禁断症状?
では、また。