11:プリキュビュロリ
お越しいただきありがとうございます。
それでは、また。
文章も一部変えたのでよかったら見たいって下さい。
クファの街。
魔大陸に近いところにあり、この近辺に住んでいる住民は自衛手段を持ったものが多い。
「魔王だってバレないのかな」
隣でフードを被ったロリ魔王を見る。
「どーせ貧相な目しか持ってない人間には、儂がプリチーな存在ってことしか分からんわ。フード外しても角は魔法で隠すしの」
気にするな、と左手を上げて横に振るロリ。
「さて、住民から情報収集しなきゃな」
この近辺にいる角族の情報を聞き出し、四天王が配置されているならそれを打倒する。
それがこの街にやってきた理由である。
「手分けしていきましょうか?勇者さん」
金髪の女性が手に串肉を持って話しかけてくる。
「そうだね、俺の分のお土産も頼もうかな」
「お任せください、はむっ」
串焼きを食べながら返事をするロックさん。
「あ、何気にその呼び方初めてですね」
「俺もなんだか慣れてきたよ」
もう心を読まれたくらいで驚いたりしない。
そういう世界だ。
「嫌な世界ですねぇ。…はむ」
「もうロリっ子はどっか行ったけど?」
「あ、追いかけて下さい。今、私と別行動している間に二人きりで親密度を高めるのです」
「そりゃ、まぁ、無茶苦茶な…」
「無茶でもなんでもやるんですよ?勇者さん。盾くらいには役に立ちますから」
「むしろ同情しそうな自分が憎いよ……」
だから彼女と話すのは嫌だったのだ。
「ほら、早く行ってください」
金髪の女性がぐいぐいと押してくるので仕方なく銀髪ロリの後を追うことにした。
「あー、うん。そう。わ、たしはね。お姉ちゃん達と来たの。うん。そうなんだ。危ないんだね」
銀髪の少女が近くの筋肉質な男に話しかけられている。
どうやら心配されているらしい。
その少女の後ろにつき、ポン、と頭に手を置く。
「だ、ぁ、れ、?」
後ろを振り向く少女はニヤリと笑っている。
「ふむ、人違いか、うちの連れに似てたんだけどな。人違いなら仕方ない。いやー、お姉ちゃんに言っとこー。あの子記憶飛んでますよ?焼き直しした方がいいんじゃない?って」
「やめろ!これ以上儂の頭をいじるな!ただでさえ弱ってるのにこれ以上儂を弱らせてみろ、死ぬからな!儂は!今!ただの可憐な幼女なの、わかる?分からんよなぁ!勇者様は頭のネジが飛んでんじゃもんなぁ!」
筋肉質な男は目を丸くしながらこちらを見ているが、やがて連れがやってきたのだと理解してこちらを軽くみると、去っていった。
「優しい人も居たもんだよ」
「そうじゃな、お前にその優しさの一欠片でも備わっていたらよかったんじゃがな?」
「ははっ、俺が優しくない?そうなったらこの世界の優しさは既に地に落ちてるよ」
「自覚がないじゃと…このポンコツ勇者め、自らの不徳を認められん者に成長はないぞ?」
「既に人の道を逸れている魔王に言われたくないなぁ」
「儂ってば人間じゃないしー、人の道から逸れたところで一体何がどうなるというんじゃ?」
「人に迷惑かけてんだよなぁ」
「知らんわ、同族にかける情けすら持ち合わせてない魔王に、他種族に迷惑をかけるなだと?笑わせる」
「笑ってんじゃねぇよ、そんなだから角族だけ浮いてんだよ」
「けっ、魔族と手を組んだくらいで大きな顔をしおって、まるで虎の威を借る狐じゃの」
「いつの話だよ…もう魔族がどこに居んのかも想像できないよ。多分混じってるだろうけど」
魔族とは、角族の旧称でもあるが、それとは別で、俺たち人間と外見的特徴にほとんどの差異が見られない種族だ。
しかし、魔族は人族とは決定的に違う部分がある。
それは、魔を操る種族であるということだ。
魔を操るというのは、単純に魔法を使うということではなく、己の魔力を一切使わずにこの世界に漂う魔力の素となる魔素というものを使って魔法を使うということを指す。
故に彼らはこの星にある限り永遠に魔法を使うことができる。
……魔法を使うと疲れるらしいから永遠は無理だと聞いたけど。
それでも自分の集中できる範囲内ならどんな魔法でも使えるのが彼らだ。
この星の生み出せるエネルギーには限りもあるだろうけど……
もしも彼らが戦闘的な、角族のように同族同士で自らの最強を競うような種族であったなら、この世界は既に滅んでいたのではないかと思う。
それを止める存在も現れるだろうが、魔族という存在自体がイレギュラーな生命体がこの世界を滅ぼすのにそこまで長い時間は必要ないだろう。
それほどに一体一体が規格外の存在なのが魔族という種族なのだ。
まぁ、見た目で分かんない以上探すだけ無駄なんだが。
彼らは昔から人間に会いに来ては、ここ不便過ぎない?と開拓して帰っていくのだ。
この世界の技術の大半は彼らから齎されたと言っても過言ではない。
……流石に過言かもしれない。
そうして人間と昔から仲良くやっていた魔族は見た目で全く区別がつかないために今もパラパラと人間に混じって生活している。
だから角族なんてものが襲ってきたときに真っ先に返り討ちにしたのは彼らなのだ。
俺達人間は彼らに感謝することはあれど、
異端として排することはない。
人間にとって魔族とは最も身近な守り神のような存在なのだ。
神なら、自分たちより大きな力を持っていても怖くはない。
しかし、自分たち以外の力を持った種族は怖い。
主に角族。
そんな哀れな生き物人間を、いつもチラッと見守ってくれているのが魔族という種族なわけだ。
「ちなみに俺はめっちゃ好き」
「誰に言っとるんじゃ?」
「うちの白髪ショートちゃん」
「あー、はいはい、聞いた聞いた。儂が死んだ原因ねー
「ぷっ、ショートちゃんにやられたの?やられちゃったんだー、へー、そうなんだー?」
ロリ魔王の顔を覗き込みつつ、声をかける。
「お前なぁ!儂が全盛期のときに来いよ!何で弱ってるときに来るの?バカなの?無理に決まっとるじゃろ!はなから基本スペックが違うの!魔族と角族!無限と有限!勝てる気がしない!せめて短期決戦で勝てるのかと思ったけど、出力が出せない!何なの?儂が何したの?ひょっこり顔出して邪魔そうな人間片付けただけじゃん、儂そんなに悪いのかな?人間だって儂らのこと殺すじゃん。一緒じゃよ?やってることは何も変わらんでしょ?何で儂が相手する奴みんなバケモンなの?バカなの?バカ!」
ポカポカと殴りながら抗議してくるロリ魔王。
「あー、はいはい、それには同情するよ、俺もあの老害と白髪ショートちゃんの相手はしたくない」
「老害とか言うなぁ!どこで聞いてるか分かんないんじゃからなぁ?それでここまですっ飛んで来たらお前が倒せよ?儂絶対相手すんの嫌じゃからな?……もう二度と会いたくないんじゃ……」
ずーん、と落ち込んでいるロリっ子。
話しているうちに何か思うところがあったようだ。
「あ、そこの爺さん」
果物屋の爺さんに声をかける。
情報収集は大事。
「爺?!」
過剰に反応する魔王。
「ほっ、なんじゃただの爺か」
胸を撫で下ろすロリ。
「この辺で魔王見なかった?」
「居るか!なーに、迷子探すみたいな感じで魔王探しとんの?居るわけないじゃん?お主さてはバカじゃな?」
「だってこの前から魔王によく会うし」
「そうじゃったー、こいつ魔王としか会ってないってくらいに魔王と会話しとるじゃん」
「え?魔王は見てないけど角族が隣町を占拠してる?それヤバいじゃん……」
「ほーん?この辺の街というとそれなりに防衛戦力高いからの、優秀なやつも居たんじゃなー。四天王なんじゃない?」
「だろうねぇ」
「ねー」
ニッコリ笑ってこっちを見てくるロリ。
息を吸った。
バックステップからの障壁展開で体に魔力も纏わせる魔王。
「っぶな!お主なぁ!それ儂にとって一番やっちゃいけないことじゃから!トラウマなの?分かる?分かって?分かれ!」
「そのさっきからお前って呼んだりお主って呼んだりすんの何?」
「儂からの親密の証!悪気はなかったみたいじゃしな!」
グッと親指を立ててサムズアップする魔王。
こいつの隣にいた奴斬ったんだけどな、邪悪なのかいい奴なのか頭がおかしいのかどれかにして欲しい。
「だからこいつと話すの嫌なんだよなぁ」
右手で頭を掻く。
うな、と先生が落ちそうになって抗議してくる。
「え?いつから居た?」
なうな、と鳴く先生。
「んー、どうしたんじゃー?儂がプリチー過ぎて惚れちゃったー?しょうがないのう、儂ってばキュートじゃからぁ?ビューティーじゃもんなぁ。いやー、慕われるって辛いわー、呼吸してるだけで惚れられちゃうもんな?本当モテる女って大変じゃのう」
こちらの顔を覗き込んでくるロリっ子。
ペチ、と頭を叩いておく。
「あー、女の子叩いたー、悪い奴じゃのう?
そんなだからモテないんじゃぞ?」
「……それは関係ないはず」
「気にしてるとみた、儂は優しいから特に触れない。ほら、儂優しいって言って?」
「儂優しいやったー」
「はいー、よくできましたー」
右手を持ち上げ親指と人差し指で丸を作るロリ。
「仲良しさんですね勇者さん」
向こうから歩いてきた金髪の女性が声をかけてくる。
「いやー、アルちゃんアマちゃんほどではないかなぁ」
「なるほど、お嫁さん候補2を選びますか」
「ねぇ、それやめない?何か後ろから刺されそうなんだけど」
「ぶっすりです。覚悟してくださいね?勇者さん」
「貴女が刺すの?!」
「儂もついでにいっとこうかのう」
「やだ!俺はアマちゃんと幸せになるの!」
「うわぁ、後輩さんに言っておきます」
「何かそれもやだなぁ」
「わがままなヤツじゃなぁ」
「勇者さんは優柔不断なのです」
「うわ、嫌な奴。女の敵」
「先生俺の味方はいないみたいです」
肩を見ると何もいない。
「あれ、先生どこ?」
「彼女も仕事があるんですよ」
「先生って女の子だったんだ……」
「それで、勇者さん?情報は手に入りましたか?」
「隣町に四天王くらい強い奴がいるらしい」
「それだけ?」
金髪の女性が首を傾げる。
「はい」
「仕方ありませんね、勇者さんですから」
「思ったより会話が弾んでましてね……」
「それは何よりですキューロック信頼度が98パーセントになりました」
「あれ、それ落ちたの?」
「銀髪ロリで1つ下がりましたね」
「ん?この前も98じゃなかった?」
「黒髪ポニーテールさんがログアウトしました」
「うちの後輩ちゃん出番がなくて忘れられてる!?」
「可哀想にのう、きっとキャラが薄かったんじゃな」
ふむふむ、と頷くロリ。
「そんなバカな……」
肩を落として項垂れる。
「はいはい、とりあえず今日ももう遅いですし、宿を取りました。ついてきてください」
「有能過ぎる…確かにこれはうちの子霞むかなぁ」
「ほい、これ、リンゴじゃ」
どこで買ったのか、いや果物屋か。
お土産を渡しているロリ。
「あら、ありがとうございます。勇者さんは?」
こちらを青の瞳が覗いている。
「これでもどーぞ」
青色の髪飾りを渡す。
手持ちにあるのは紫の髪飾りと緑の髪飾りと金色の髪飾りとその隣にあった薄い金色の髪飾りと茶色に縁取られた青色の髪飾り。
キューロックさんに渡したのは金色に縁取られた青色の髪飾りだ。
薄い金色の髪飾りは特に誰かに渡す予定がない。なんとなく濃い金色があるのに薄い金色の髪飾りがあるのが気になったのだ。
「いや、そんなに髪飾り持ってたかのう」
ジャラジャラと懐から髪飾りを取り出す俺をジーッと見てくるロリ魔王。
「買っといたんだよ……」
「ほらほら、早く行きますよ?勇者さん」
手を取って先に進もうとする金髪の女性、その髪に青色の髪飾りを付けてくれる辺り、この人は何をすれば相手が喜ぶのか分かっている。
ニマっと笑ってしまうのを意識しながらその手につられることにした。
「なんか、儂の扱い雑じゃな……」
後ろからトテトテとロリっ子がついてくる。
「いや、こうはならんやろ」
「なっとるじゃろ……なんでじゃ」
二人部屋には俺とロリ。一人部屋にはキューロックさん。
「あの人何か笑ってると思ったら……」
「はぁ、儂は寝る。魔法で体は綺麗じゃ。体拭くなりなんなり勝手にやってろ」
ベッドに飛び込む銀髪ロリ。
「そうするよ……」
ちなみにちょっとだけ楽しみにしていた自分がいるのも悔しかった。
それだけにちょっと辛い。
「あーーー、ブンブンブンブンうるさい!室内で剣を振るな!あと儂は刀恐怖症じゃって分かってるよな、お主!」
ベッドに転がりながらビシっと指を指してくるロリ。
「癖なんだよね、剣を振るの」
「病気か何かなの?それやんなきゃ死ぬの?」
「死ぬね、間違いなく。四天王あたりにやられる」
「もう強迫観念かなんかで動いてるんじゃな…まぁ、儂は耳塞いで寝るからお主も早めに寝ろよ?」
そう言って布団を被る魔王。
剣を振った。
脳裏に過ぎるのは黒髪に赤い目をした男。
その額からは二本の角が生え、その手には一振りの剣を持っている。
「魔王……ね」
あいつは、久しい、と口にした。
お読みいただきありがとうございました。
後で誤字を探します。