9:可哀想と可愛いの関係性について
どうも、本日もお越しいただきありがとうございます。
今日はひたすら会話文です。
苦手な方はご注意ください。
……そういえば私会話文ぐらいしか書かないですね。
いつも通り、拙い文章にご注意下さい。
追記:ちょっと設定に合わない文章があったので書き直しです。
「……儂、詰んだんじゃが。」
宿で一人部屋を二つ、二人部屋を一つ取った。
一人部屋にはアビたんと打ちひしがれている銀髪ロリ。
そして何故か二人部屋には俺と金髪の女性。
「キューロックさん、ですよ?勇者さん。」
「そうだね、で、こいつ一人で大丈夫なの?」
「問題ありません、そういう生き物です。」
「そういう生き物ってなにさ。まぁ、大丈夫ならいいんだけど。」
「儂…これからどうしよ…」
両膝を抱えて座っている銀のロリ。
フードは下ろして、その額からは二本の角が現れている。
「勇者さんの肉壁として頑張りましょうね。」
そんなロリの肩を叩き話しかける金髪の女性。
「うぅ、もう儂、完全に詰んだ。これどうしようもないやつ…。」
人差し指を地面につけ、円を描くように動かしている銀ロリ。
「それ、魔法陣とかじゃないよね?」
魔法の警戒をする。仮にも魔王である。
ぶっちゃけ斬りたい。
「もう無駄なんじゃよ。逃げるという選択肢が無いんじゃ、契約とかそういう感じじゃないの…これは多分儂という存在ごと変えられた感じじゃなぁ。」
深いため息をつきながら四肢を投げ出し地べたに寝転がる魔王。
「流石は魔の王ですね。よくお分かりです。」
「褒められても嬉しくないわい。」
そのまま目を瞑ってゴロゴロと転がるロリっ子。
「…仕方ありませんね。しばらく放っておきましょう。ほら、勇者さん、行きますよ?二人の愛の巣へ。」
「ねぇ、違うからね?宿屋の人も何か意味ありげな感じでこっち見てきたけど全然関係ないからね?」
「あらあらまあまあ、照れちゃって、仕方ない勇者さんです。」
口元に手を当てニッコリ微笑む金髪の女性。
「その、分かってますよ、みたいな反応やめてくれないかな?何も分かってないから!」
「はーい、受付さーん?お湯と布お願いしまーす。」
「だからやめてって言ってるよね!」
いつまでもニコニコとした笑みを絶やさない金髪の女性を見ていた、なんだか面白い、と気付いた時にはこちらも笑っていた。
「よっしゃぁぁあ!行くぞー、儂行っちゃうぞう!もうこれは勝った!儂生存確定!儂の時代始まっちゃったかー?」
朝起きて銀髪ロリ魔王と合流するとすごいうるさかった。
「あまりにもぶーたれてたので昨日ちょっとだけお話ししたんですが、そうしたら元気になりましたね。」
「俺の居ない間に一体何があったというのだ…。」
「勝っちゃぁぁあ!儂完全勝利!この世界は須く儂に都合の良いようになるんじゃなー。いやー、儂困っちゃうなー。愛されてるって困っちゃうわー。世界の寵愛を受ける儂ってマジ強過ぎなのではー?」
本当にうるさい。
これなら昨日の方がマシだったし、前回はもっと威厳とかそういうのがあった。
「威厳とかそういうの、面白くないので。」
「原因はキューさんかいな!」
「はい、キューさんです。」
てへへ、と笑う金髪の女性。
「可愛くないよ!」
「またまた、照れちゃって。」
「あーもう、嫌!」
「アルレイ、うるさい。」
「そんなー。」
なーう、と先生が鳴いた。
「あれ、先生居たっけ?」
「書き忘れですかね?カタマリ先生というポジションを与えられておいて影が薄過ぎてその存在を作者から忘れられてしまったのでしょう。」
うーな、と鳴く先生。
心なしか怒っているような?
「そんなわけないだろう!先生は何か理由があって俺の肩を離れていたのだ!」
「肩を離れる描写すらなかったくせによく言いますね。」
なう、と鳴く先生。
「先生、何か今日はよくお話しなるな。」
「出番がなかったのでこれでもかと自己アピールしているんですよ。影の薄い存在は大変そうですね。」
ふふふ、と余裕の笑みを浮かべるキューロックさん。
「先生の影は薄くなんかない!」
「アルレイ?」
こちらの顔を掴んで自らの顔と向き合わさせる金色の瞳を持った少女アビたん。
可愛い。
「ひをふへまふ。」
気をつけます、と言おうとしたのだが、顔を挟まれているので下が回らなかった。
「よろしい。」
手を離してくれるアビたん。
「ありがとアビたん。」
「アビターン。」
「たん…違う、が聞けなかっただと?!」
「別バージョン。」
ぶい、と人差し指と中指を立ててこちらに見せてくるアビたん。
天使か?
「ですからそれは最上級の褒め言葉だと何度言ったら…」
「いや、彼女にはその言葉こそ相応しい。最早足りないのでは?」
「アルレイ、もう行く。」
「あ、うん。気をつけてね。」
アビたんは次の目的地へと向かうために俺たちとは違う馬車に乗る。
俺たちとは馬車の来る時間が違うのでお見送りは宿ですることにした。
「アルレイも、気をつけて。」
こちらに軽く手を振ってくれる。
振り返すとそれを目で確認してから去っていった。
「行っちゃったなぁ。」
「お嫁さん候補3ですか?」
「それ俺死ぬよね?間違いなく。」
「えぇ、最後は首を切られてナイスボートです。」
「何がナイスなの…」
「そういうものです。」
銀髪のロリっ子はまだまだ騒いでいた。
「さてと、どこ行こうか?」
「四天王狩りでいいんじゃないかのう。」
「魔王が四天王を狩るとか言っていいの?」
「もう儂魔王じゃないし。今の魔王軍は人類殲滅派じゃからなぁ、儂は角族が有利になる程度でいいと思ってるんじゃよ。だからぶっちゃけ無くなっても困らないんじゃよね。今回の勇者は角族殲滅派居ないっぽいしの。」
「なんか、よく分からんけどとりあえず大丈夫ってことは分かった。」
「困ったことがあったら全て私にお任せくださいね、勇者さん。」
ふふふ、と笑う金髪の女性。
「ねぇ、不気味なんだけど?それ最後に手の平返すよね、絶対。手の平クルッと回転させて『私のことを仲間だと思ってたんですか?お馬鹿な勇者さんですね』とか言ってくるやつでしょ?ねぇ。」
「酷いです、私、泣いちゃいそうです。」
「あー、ああー、女の子泣かせたー、いーけないんじゃー、いけないんじゃー。」
銀髪ロリがぶーぶー責め立ててくる。
「うるさいなぁ!そもそも何でお前はそっち側なんだよ。」
そっち側とはキューロックさんの味方であることを指す。
「はっ、人を殺そうとしておいてよくもまあのうのうと。儂がこっち側につくのは自明の理じゃろ。」
腕を組んでキューロックさんの隣に立つ銀髪ロリ。
「ふっ、うちの後輩手にかけといてよくもまあのうのうと俺の前に姿現わせたよなぁ!」
刀を握る。
「ぎゃぁぁあああ!助けて、ヘルプ!ほら金髪の!」
「全くしょうがないですね。ほらほら、勇者さん。今は無実ですよ?」
嘘泣きをやめたキューロックさんがたしなめてくる。
なう、と鳴く先生。
今日は右肩に健在だ。
「はっ、今日は先生とキューさんに免じて許してやるよ。はっ。」
「きー、お前なんか刀さえ持ってなきゃ怖くないもんねー、風呂入ってる時に襲ってやるわい。」
「残念だったな、俺が風呂入る時は近くに近接戦闘の達人か自分の武器があるときか化け物と一緒のときだけだよ!」
「なにぃ、人に頼って恥ずかしいとか思わんのか、このへっぽこ勇者!」
「お前こそ、キューさんの後ろに隠れて文句たらたら言いやがって恥ずかしいと思わないのか、このクソザコ魔王!」
「雑魚とはなんじゃ雑魚とは!今はちょーっと事情があって本気が出せないだけでお前なんか儂が本気になればちょちょいのちょいじゃわい。」
「へー、そういうこと言っちゃうんだ?」
「言っちゃうけどぉ?それがどうかしたのかのぅ?」
「あ、もしもし師匠?うん、そう、先代魔王生きてんの、結構強くなっててさ、剣使ってんだよねー。」
「やめろぉぉぉおおお!口に出すなぁぁぁああ!儂と爺を結びつけるような発言をするな、このバカ!マヌケ!童貞!」
「最後のは関係ないだろーが!」
「うーわぁ、当たっとったの?あんだけ女と一緒にいてそれとか引くわー、引いちゃうわー、儂でもそりゃないわー。」
「本当に、勇者さんは意気地なしです。」
「ねぇ、そこで畳み掛けるのよくないと思うんだけど?」
「勇者さんが意気地なしなのがいけないんです。早く本命を決めて告白してくれないとルートがノーマルエンドになってしまいます。ほら!早く!私に告白して!今なら銀髪ロリもついてますよ!」
「意味わかんないし、要らないし、話進んでないしで最悪だよ!」
やっぱり後輩ちゃんは大事、はっきりわかったよ。
目を瞑れば今でも思い出す黒のポニーテール。
「元気してるかなぁ。」
空を見上げる。
今日は少しだけ雨が降っている。
お読みいただきありがとうございました。
今日はアビたん可愛いデーの最終日です。
しばらくお別れか……。
アビターン・ハーターは書くのに時間がかかりますが、割と気に入っています。