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アザランの花  作者: 神山 りお


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28/38

*28 錯乱



「何を……何を言ってやがる!!」

「この期に及んで、適当な言葉で錯乱させるつもりか!?」

 使用人の女達から、そんな言葉を聞いた男達は、ふざけるなと声を荒げた。

 シュレミナ姫には今朝、ここに来る前に会っていたのだ。なのに、死んでいるなんて馬鹿げた話を誰が信じる。

 だが、動揺する男達の耳には、次々と信じがたい言葉が入ってきた。

「て、適当で、こんな事が言える訳ないでしょう!?」

「あの娘は……シュレミナは……何年も前に死んでんだよ!!」

「食事のせいか……寒さのせいかは知らないけど……確かに死んだんだよ」

「「「嘘をつくんじゃねぇ! 信じられるか!!」」」

 男達は口々に言う使用人の言葉に、堪らず怒声を上げた。

 先程まで会って言葉まで交わしたシュレミナが、亡くなっているとは到底信じられないのである。以前の様な血色や覇気さえ見えなかったが、確かに言葉を交わしたし姿をこの目で何度も見ている。

 使用人達が何故そんな、くだらない事を言い始めたのかが理解出来ない。



「嘘じゃないって!!」

「外鍵の地下室から1人で出られる訳もないに、生きてる訳がないじゃないか!」

「生きていたなら、あの死体は一体誰のなのよ!!」

「死者が生き返ったとでも言うの!?」

「「「いやぁーーーーっ!!」」」

 使用人の女達はあり得ない男達の言葉に、半狂乱になっていた。

 死んだハズのシュレミナに、この男達は会ったという。嘘をついている気配もなく、使用人達は恐怖で怯えていた。そんなに自分達の言葉を信じたくないのか、それとも恐怖を与えたいのかと、錯乱し激しく動揺していた。

 信じても信じなくてもいいから、自分達の目で確かめてくれと強く言ったのだった。





 *・*・*・*・*





 一方で屋敷ではガイド達が困惑していた。

 ゾットが言う驚愕の言葉に、頭が混乱していたと言っていい。

「クリスが死んでいる……だと!?」

 錯乱でも起こしたのかと、ガイドはゾットを放し問い詰めた。

 死への恐怖でオカシクなったのか、自分達を錯乱させて助かる算段でもしているのかも分からない。



「アレはもう何年も前に、バンダインの手下に殴り殺されている」

 手下達は隠したつもりかも知らなかったが、ゾットは屋敷の裏庭に、何かを埋めているのを書斎の窓から見ていたのだ。

 死体を直接見た訳ではないが、その日から一切姿は見なくなったし、裏庭が臭うともっぱらの噂だった。マリアの手前、知らない素振りを見せていただけで、すべてを知っていた。

「キサマ……何を言って」

 ガイドは信じられないと、ゾットの胸ぐらを掴んでいた。

 なら、今まで会っていたクリスは、一体誰なんだ。死んでいたのなら、会話どころか姿を見る事など、あるハズもないのだ。



「嘘ではない。クリスもシュレミナも、とうに死んでいる」

「姫もだと!? いつまでくだらねぇ嘘をつくんだキサマは!!」

 ガイドは再びゾットを殴っていた。

 助かりたい一心でつくにしても、最悪な嘘をつく意味が分からないのだ。命は助からないと悟ったゾットが、せめて一思いに死にたいと、自分達を怒らせたいのだろうか。

 ガイド達に動揺が走っていた。口から出任せだと言いたいのに、何故か強く確信が持てなかった。




「ガイド……さん」

 仲間達も "あり得ない" と何故か否定出来なかった。

 それ処か、心臓が異様な速さで鼓動を打ち始めていた。実際会っていたのに、何故か疑心が蠢いていた。

 ゾットが、何故そんな嘘をつく意味が分からない。ついている様にも見えなかった。ガイド達も、困惑しかなかったのだ。

「ガイドさん!!」

 そんな時だった。裏庭から侵入していた仲間達が、顔面蒼白の表情で部屋に入って来たのは……。



「ガイドさん実はーー」

 シュレミナ姫が……と言いかけ口をつぐんだ。

 ガイド達の異様な表情に眉をひそめたのだ。ゾットが口から血を流し足元に転がってはいるが、その事より何かがあったと語っている顔だった。

「どうした? 言ってみろ」

 ガイドは自分の動揺を隠し、ゾットの言葉を頭から振り払って言った。

 異様な表情でいたのは、ガイド達だけではなかった。後から来た仲間達もそれは同様だったのだ。



「……それが」

「それが?」

「この女達が……姫は死んでるって……」

 そう言って連れて来た使用人の女を、1人ドサリとガイドの前に差し出した。

 俄に信じがたい話だが、あれから何度と聞き混乱をしていたのだ。

「……」

 ガイド達にゾワリとした嫌な汗が、身体を濡らし始めていた。

 ゾットだけでなく、使用人達までとなると偽りとも言えなくなってきたのだ。口裏を合わせるにしても、何処かおかしい。

「ガイドさん?」

 ガイド達の反応に、違和感を覚えたのだ。

 ガイドに馬鹿を言うんじゃねぇと、怒号を浴びせて欲しかった。嘘をつくなと言って欲しかったのだ。だが、そんな返答処か眉根を深くひそめただけだった。



「ゾットも……そう言っていたんだよ」

 黙り込んだガイドに代わって、他の仲間が答えた。

 血色は悪く微かに震える声だった。

「なっ。どう……いう事なんだよ!?」

 ゾットからもそんな話が出ていたとは思わなかった者達も、奇妙な話に青ざめ震えが身体を走り抜けていた。



「クリスは……裏庭に埋められている」

 ガイドは動揺を抑え、無機質な声を出した。

 






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