知らないあの子と知ってる私
あの子のお弁当には、愛が詰まっていた。
何気なくそれを食べるあの子の顔は、なんだかとても嫌に見えた。
勿論、嫌に見えるのは、私があの子に嫉妬しているから。
こんな普通の学校に通っているのだ。
あの子は優雅な暮らしをしている訳でもひもじい暮らしをしている訳でもない。
所謂中流階級なのだけれど、あの子のお弁当を見る度に、私よりもずっと裕福だと思わせられる。
あの子はよく家族の話をする。
妹は勉強をしたがらなくて、あの子が必死に教えているんだって。
弟はゲームが得意で、手加減せずに妹と喧嘩するので仲裁が大変なんだって。
お母さんはぽやっとしてるから、私がしっかりしなければって毎日頑張っているんだって。
「全部全部、自慢じゃん」
そうやって嫉妬することばかりに頭を使うから、私はずっと寂しいのだ。