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ペトリコール・メモリー  作者: 藤和
6/9

ティータイム

 快晴とは言い難いが空は晴れている。10月にもなると少しだけ肌寒い。


 これから加藤さんと喫茶店に行くことになったがかなり緊張している。女子と二人でいることなど今までなかったし、喫茶店に入ることもなかったからだ。しかも休日に。


 俺が駅の階段近くで待っているとすぐに加藤さんも来た。時刻は午後12時45分。予定よりも15分早く集まってしまったがお互いそれについては触れなかった。


 お洒落な喫茶店に入り、ホットココアを頼み、店員が去った後、俺は本題に入ることにした。


「あのさ、雨のことだけど、小学生の頃に気づいたって言ったよね?その頃って何か身の回りで変化とかはあった?」


「変化ですか......特に無かったと思います」


「そっか。あともう一つ、君の雨の能力って君自身の感情の起伏が影響していると思うんだけど何か思い当たる節は?」


「それは......確かにありますね」


 気がつくと目の前には注文したホットココアが置いてあった。ココアの香りが鼻腔をくすぐるのですぐに口にした。ホットココアは滑らかな舌触りをしていて、まろやかな味だった。


 あっという間にホットココアを飲み干してしまったので加藤さんの話を聞くことに専念する。


 それから1時間くらい話をしたが正直言うとあまり有益な情報は得られなかった。わかったことは加藤さんは一つ年下ということと文芸部だということくらいだ。


 駅までは二人とまた同じ道を通って帰るので一緒に歩くことにした。


「そういえば雨宮さんの下の名前ってなんですか?連絡先にも雨宮としか書いてませんよね?」


「俺の下の名前か〜。教えられないと言ったら?」


 少しだけもったいぶる。


「ええーなんですかそれ」


 彼女は楽しそうに笑った。初めてあった時は泣いていたのでわからなかったが彼女の笑顔はとても素敵だ。


「次に会った時に教えるよ」


 気がつくとまた加藤さんと会いたいという気持ちがあった。少しだけ複雑な気持ちになる。彼女は悩みを解決するために俺に会いに来ているというのに俺はこんなことでいいのだろうか。


 そんなやりとりをしているうちに駅に着く。


「もう着いてしまいましたね」


 加藤さんは残念そうな表情を浮かべていた。少なくとも俺にとってはそう見えた。


「今日はあまり力になれなくてごめん」


「いえ、そんなことないですよ。とても楽しかったです」


「そっか、なら良かった。じゃあ、今日はこれで──」


「待ってください。もしよろしければ、来週遊園地に行きませんか?」


「遊園地?まあ、来週空いているからいいけど......いいの?俺と一緒で」


「もちろんです。じゃあ詳しいことは後でメールしますね。楽しみにしてます」


 加藤さんはそう言って小走りに駅を去った。


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