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アホのアホなアホ少女

 

 空を見上げたのはいつぶりだろうか。

 俺はそんな的外れな考えとともに、目の前に広がる青空を目に焼き付けた。


 俺は雲ひとつない快晴よりも、雲がちらほらと漂う空の方が好きだ……と何年か前に、となりのこいつに話した気がする。


 となりの君はもうそんなこと忘れちゃったかな。

 はあ、今何を思っているのだろうか。

 まあ、少なくとも俺は


「あんのクソヒンヌー神ガアアァァァァアア!!」


 憎悪で腹わたが煮えくりかえっているよ。


 地上推定300メートル。それが今俺たちがいる場所。

 はは、分かりづらい? じゃあ例えてあげよう、俺たちは今東京タワーから紐なしバンジーをしているんだよ。


「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬシイィィヌウウゥゥ!!!」


 神様(自称)とかほざいたミリオンに異世界転生させられて、気がついたら俺たちは空にいた。

 今度会ったら、ない胸をさらに抉ぐってやろうと心に誓う。


「てか、お前はなんで叫び声ひとつあげてないんだよ!?」


 隣で一緒に垂直落下中の腐れ縁幼馴染であるユウトに叫ぶと、彼はキラキラした目でこっちを見た。


「ハジメ! 僕スカイダイビングって初めてだよ、こんなに景色がいいものなんだね」


「アホなのか!? バカなのか!? 俺だって初めてだから詳しくは知らないがな……ひとつ確かなことがある。スカイダイビングは背中にパラシュートがついてんだろうが!!」


 だめだ、こいつはアテにならない。勇者様ってやつはやっぱりこいつには向いてなさすぎる。


『安心せい、お主ら』


「その声、アホ神!?」


 脳に直接響くようにヒンヌー神ミリオンの声が届く。

 すると今変わるからの、と今度はミューリアさんの声が聞こえてきた。


『勇者の初期魔法で空中浮遊(ホバー)というのがあるはずです。ユウト様、試しにホバーと叫んでみてください』


「う、うん……ホバー!!」


 ユウトが手をかざしホバーと叫ぶと、ユウトの身体がきらびやかな光に包まれて減速する。


「わあ、すごい! 魔法みたいだ!!」


 みたいではなく魔法のそれなんだが、突っ込んでる暇もなくユウトを抜かして俺は落下していく。


「あ、アレ? ミューリアさん……俺は? 俺はどうすればいいの!?」


『……………………検討を祈ります』


「うそだああぁぁあああ!? ブゴオォ!??」


 叫んでいる間もなく俺の身体は地面へと叩きつけられた。





 ―――――――――――――――――――――――






「はっ! ワッツアネーム!? ここはどこ!?」


 気がつくと俺は見知らぬ部屋に居た。


「というよりは、テント? って感じだな」


 天井が一点に集中してたり、壁が時折揺れるのを見て布のように感じたのだ。


「いってて、確か俺……そうだ! 紐なしバンジーで地面に叩きつけられたんだった」


 我ながら人間が吐くようなセリフとは思えないが、現実なのだからしょうがない。


「あ、ハジメ! よかった無事だったんだね!?」


 五体満足であるかどうかを念入りに確認していると、聞き覚えのある裏切り者が顔をのぞかせた。


「よお、勇者様? ひとりだけ無事で羨ましいねえ?」


「ははは、照れるよー」


 そのだらしない笑顔に、皮肉も無駄だと諦めて現状を聞く。


「んで、ここはどこなんだ? 見た感じ夜になってるな」


 テント内はロウソクで明かりをつけられていて、外からも別のロウソクの火が透過して感じられる。


「ここはね、ネコさん達のおうちなんだよ」

「ねこさんだあぁ?」


 ついに頭が空っぽになったかと心配になるが、言われてみればベッドに爪痕みたいなのがある。


「うーんとね、ハジメ五臓六腑が大変なことになってたんだけど」


「おおう……五臓六腑って実際に聞く機会があるとは思わなんだ……てかそれ俺死んでない?」


「うん、ネコさん達危篤状態のおじいちゃんの方がまだ無事に見えるって言ってた」


 なんともまあそんな状態で息があったものだ。


「それでたまたま一緒にいた女の子がね、魔法を唱えて助けてくれたんだよ! すごかったよ、シュルシュルって五臓六腑が体に戻ってくの」


「カエルもびっくりだろうなそれ、てか普通に衛生面が気になるところだ」


 体内に砂とか小石とか残ってたらたまったもんじゃない。


「まあなんにせよお礼をしなきゃな……案内してくれ」


「身体は……大丈夫そうだね。うん、行こっか」


 テントの扉をくぐると、やはり外は夜空に覆われていた。先程ロウソクの火だと思っていたのは実際は焚き火だったようで、その周りを何十人かで囲っていた。


「おや、無事だったようじゃにゃ?」


「あ、ネコのおじいちゃん! ベッド貸してくれて本当にありがとう!」


「いやいや良いんじゃよ、むしろ色々手伝ってくれて助かっておるわい」


 ネコのおじいちゃん、そう呼ばれた人を見て納得。本当に二足歩行で喋る巨大な猫だったのだ。身長は人と同じくらいだろうか。革のようなものに身を包んでいる。


「ああ、あんたが危篤のおじいちゃんか、すまないな家族との残りの時間を貰っちまって」


「いつの間にそんにゃことににゃってんの!? ワシピンピンしとるよ!?」


「何言ってんのハジメ」

「ガハ!!?」


 ユウトが違う違うと俺の肩を殴る。本人はポンポンぐらいのつもりだろうが、勇者の力のそれは強力で、俺の肩は交互に脱臼を繰り返した。


「ああ! ごめんハジメ!」

「やばい、人の形を保てなくなる……」


 血反吐を吐きながら、一緒に焚き火に当たらせてもらう。季節は春ぐらいだがまだ夜は冷える。


「あれ、アンタ起きたんだ?」

「ん?」


 しゃがれた顔で後ろを見ると、仁王立ちしたピンク色の髪の少女がこっちを見下ろしていた。


「あ、ハジメ! この子がはじめを治してくれたんだよ!」


 そう言われてよく見ると、端正な顔立ちをしていた。そう、言うなればお姫様だ。サラサラの髪は腰まで伸びていて、夜風に靡いていた。

 てか、めっちゃ可愛い。


「あなたが、私めを助けていただいたのですか。ありがとうございます。今度お礼に食事でもいかがでしょう。あなたの思い出の日記に、私という一輪の押し花を挟んで見ませんか?」


 俺はできる限りのキリっとした顔で少女の手を取る。

 さあここから本当の異世界転生物語、僕と彼女のゴールインがはじま


「え、なに超キモいんですけど!?」


 らなかった。

 終わった。


「ぶふぉ! ていうか私という一輪の押し花てあんたかっこいいと思ってるわけ!? 確かにあなたの顔押しつぶされたような偏差値だけど、あ、もしかして自虐ネタだったの!?」


 あはははと下品な顔で本気で笑い転げる少女。

 ヒーヒーとお腹を押さえて目に涙を浮かべる。


「んがあ! うるせえ! 黙れい、それ以上笑ってっと勇者ユウトさんが黙ってねえぞコラ! お?」


 急に話を振られて、え、ええ? と困惑するユウト。


「おいユウト! 本当にこの女が治療したのか!? 見間違えの可能性は!?」


「ふふん、あなたを治療したのは本当にこの私よ。感謝してアイン様と呼びなさい!」


 アインと名乗る少女はえっへんと胸をそらしドヤ顔を決めていた。頭上のアホ毛がピョコピョコと左右に揺れている。


「くそ、こんなアホっぽいやつに助けられたなんて末代までの恥だ」


「あ、アホですって!? だいたいあなたが末代でしょこの生涯童貞!」


「んにゃにおう!?」


 2人してバチバチと火花を飛ばすと、ユウトがひえぇという感じで目をそらした。


「え、ええとアインさんは魔法? を使えるのかな……?」


 ユウトがそう聞くとアインは並んでいた目を再びニマニマさせた。


「ふふふ、聞いて驚きなさい! 私は最強の魔法使いよ!」


「ああ、男性経験のないアラサー女か」


「その魔法使いじゃないわよ! てかそれ男女問わずなの!?」


 正確には知らないがそんなことはどうでもいいのだ。


「まあ、助けてくれたことにだけは礼をするよ、ありがとうな」


「え、えへへ、分かればいいのよ、ふふ」


 ちょ、チョロい。さてはこいつチョロインだな。


「そうだ、せっかくならその魔法とやらを見せてくれよ。俺たちまだこの世界のこと全然知らないからな。ちょうど肩が脱臼してるし」


 知ってるのがユウトのホバーだけというのも心配である。

 それにまだ俺は最強のハーレム王計画を諦めてはいないのだ。これを機に魔法とやらを極めてやる。


 五臓六腑を撒き散らした状態を救えるというのは、悔しいが確かな腕の持ち主だろう。この子に学びさえすれば俺だって。


「世界? ん、まあいいわ、見せてあげる私の魔法の力を!」


 そう言うと、アインは一歩下がって手をこちらに向ける。大きく息を吸うと、ニッと口角を上げて呪文を叫んだ。


「ヒール!!」


『グオオオォォ!!』


「……………………」


 ヒール、それはゲームとかでもかなりポピュラーな回復呪文だ。決してグオオオォなんて轟音が鳴りはしないし、俺の顔面スレスレを撃ち抜いて髪の毛をチリチリさせたりなんかしない。


「うおい、 殺す気か! てかそれ火炎放射じゃねえか!」


「ありゃ、いっけなーい、テヘ」


 テヘで殺されてなるものか。

 あと、「なるほど、ヒールは攻撃技なんだね」とかほざいてるユウトを後で説教してやらないと。


「ったく、冗談はこれくらいにして次は真面目に頼むぞ……」


「う、うん、ヒール!!」

『ザパアァァア!!』


 今度は俺の顔面に大量の水がぶつけられた。最近水難が多すぎる気がする。


「コンニャロー! 俺の一張羅が大変なことになってんじゃねえか!」


 俺のお気に入り、黒地に白い文字でぎんなんと書かれたTシャツとジャージズボンがびしょ濡れになる。


「あれ、おかしいな……ヒール!!」

『バチバチバチバチ!!』


「うみょぎやあぁぁ!?」


 今度は電気が放たれ、濡れた俺の体にクリーンヒットした。


「ヒール!ヒール!ヒール!!」

「ちょ!? もうかんべ」


 その後もチュドーンドカーンズゴバーンとおおよそヒールに似合いそうもない爆発音が続く。

 そのたんびにネコさん達と俺ががうみゃーと吹き飛んだ。

 納得いかないのが、ユウトだけうわわ! で済んでいることである。


「…………んで、これはどういうことなんだ?」


 地面に複数のクレーターが空いた後、プスプスと黒煙を上げながら俺はアインを正座させる。


「…………の」


「あ?」


「私、魔法が上手く使えないの!!」


 アインは、両の手をぎゅっと握りしめながら涙目で叫んだ。


「いや、待てよ……魔法のことはよく知らんが、さっきの豪炎といい並みの魔法じゃないだろ。モンスターなんて一発じゃないのか?」


 正直あれで低レベルの呪文だとしたら俺の手には負えなさすぎる。


「違うの、私魔力はものすごく高いんだけどコントロールが出来なくてね? 魔法がランダムに出ちゃうの」


「はぁ? それ使えなさすぎるだろ、宝の持ち腐れだな」


 うぅ、と悔しそうに唸るアイン。しかしランダムってことはもしかしたらこの辺り一帯全て吹き飛んでいた可能性もあって、いやそもそも……


「おまえ、じゃあ俺の傷はどうやったんだよ? ランダムじゃないのか?」


「そ、それは……」

「それは?」


「…………………………………………たまたま?」


 たまたま…………


「はあぁぁあ!? たまたまだと!? それってもしかしたら治すどころかさっきの炎でトドメさしてたかもしれねえじゃねえか!俺の五臓六腑でホルモンパーティってか!? このカニバリズムめ、おまえは魔法使いじゃなくて魔女だよ!!」


「うぅ……いいじゃない! どうせそのままにしても助からなかったんだから!!」


「よくねえよ! まだユウトの方が可能性たけえじゃねえか! 勇者だぞ? 勇者!!」


 なんとも危険な橋渡り。俺はいつのまにか死線をくぐり抜けていたようだ。


「ほれほれ、喧嘩もその辺にしにゃさいにゃ。ご飯が出来たぞい、食べていきんしゃい」

「わあぁ! いい匂いだよハジメ」


 そう言われてみれば、なんだかいい匂いが俺の鼻をくすぐった。するとグギュルルルとアインと俺のお腹が共鳴する。


「まあ、といあえずご飯にするか」


「「さんせーい!!」」


 俺たちは焚き火を戻すのを手伝いに向かった。





 ―――――――――――――――――――――――





 焚き火をやっとの思いで再点火させて、夕食のシチューを貰った。

 よく考えてみれば転生して何も口にしていなかった俺とユウト。ユウトは待ちきれないといった様子でシチューを頬張っていた。


「おいしー!!」

「ふふ、そう言ってくれると嬉しいのう」


 こうやって見ると、なんだか祖父と孫のように見えてくる。


 俺も食欲に抗わずにシチューを思いっきり頬張った。

 くどくなくサッパリとしていて、しかしパサついていないお肉は柔らかく、野菜の仄かな甘味が俺の胃にじんわり沁みていった。


「うわ、まじでウメーなこれ」

「ん〜おいひ〜」


 隣でアインもうっとりといった様子でシチューを堪能する。


「そういやあ、あんた達はなんなんだ?」


「ワシらかえ? ワシらは山猫族じゃよ。ここら辺を放牧して回る民族じゃ」


「へー、ザ異世界って感じだ」


 周りを見ると、大小様々な猫達が楽しそうに喋ったり踊ったりしている。


「昔はもっと仲間が多かったんじゃがにゃ……」


 猫のおじいちゃんは悲しそうに彼らの姿を見つめる。


「なにかあったの? 猫のおじいちゃん」


 ユウトが心配そうに、しかし食べる手は休めず聞く。


「みんにゃ狩られたのじゃよ」

「狩られた?」


「ああ、ワシらの毛は高値で売れるらしくての。盗賊にゃどの賊に襲われたりして、今じゃ数十人ににゃってしまったわい」


 ワシの息子も……とネコのおじいちゃんは悲しそうに呟く。


「……………………」


 ……どうしよう、こう言ってはなんだが俺はシリアスな雰囲気が苦手である。

 あー、アインが咳き込んで鼻にシチュー詰まらせないかな。


「ハジメ……あんた今ものすごく失礼なこと考えなかった?」


「いや、気のせいじゃないかな」


 なんてカンの良いアホだろう。危ない危ない。


「それはそうと、お嬢さん、何処かで会ったことにゃいかい?」


「ん? はじめてだと思うけど……まあ私くらいになると、何もしなくても目立って有名になってしまうけれど!」


 ああ、アホすぎて有名なんだろうな。


「にゃぅ、どこかで見たことあるきがするのじゃがにゃ……まあ気のせいかもしれん」


 どこかで見たことある……か。当然この世界に来たばかりの俺たちにとっては知る由もない。


「ふぅ、さて夜も更けてきたにゃ。お前さんらももう寝るといい」


 そう言ってお皿を運ぶネコのおじいちゃん。

 しかし俺にはまだやることがあった。


「ああ、もう少ししたらそうさせてもらうよ、ほら、行くぞユウト」


「ハジメ〜…………もう眠たいよぉ」


 お休みモードに入りかけのユウトが目をこすって懇願する。ちっ、これで母性本能が沸くとか女子どもの気が知れないな。


「俺たちにはやることがあんだろうが! おまえのホバーのこととか俺の能力のこととか分からないだらけなんだから!!」


「うへー……」


 無理矢理起こすと頬を往復ビンタする。結構本気でやったのだが、痛いよーとか目をこするだけで済む、ムカつく。


「ねえなんか楽しそう! 私もついていっていい!?」


 こういってはなんだが、薄着の美少女(中身はアレ)と一緒に夜の人気のないところに行くのは最高なシチュエーションである。が、今回は俺たちのことをあまり知られても困るのだ。


「ぐへへ、いいけどアインのアインがアインになっちゃってもしらないぜ?」


 残念だが、ここは脅して引き取ってもらおう。決してセクハラではない。


「……大丈夫よ」

「へ?」


「もしなんかしてきたら……………………」


 アインは口の形でヒ・イ・ルと言った。

 正直恐ろしいがそれよりも


「それ……人を脅すような魔法じゃないんだけど……」





 ―――――――――――――――――――――――




「ほんにゃら真拳!!……………………おいこら本当にこれで魔法が使えるようになるんだよな?」


「ブハ! なるなるめっちゃなるよ……プクク」


「おい笑ってんじゃねえかこのやろう!」


 本当についてきてしまったアインに、仕方がなく魔法の覚え方を聞くと、ほんにゃら真拳と叫びながら片足で手を頭の横に構えるポーズを取ると言われたのでやったらこのザマだ。


 ヒーヒーと必死に笑いを堪えるアインに青筋が浮かぶ。


「くそ、じゃあどうやったら魔法が使えるようになるだ」


「ハジメ! こうやってね、手を前にやってホバーって叫ぶと……ほら!」


 ユウトがジャンプしてそれを唱えると、対空時間が長くなったようでゆっくりと降りてくる。


「おまえそれは勇者の初期魔法だから出来んだよ! ほら見ろ……ホバーホバーホバー……変わんねえ」


「というかあんたそもそもジャンプ力なさすぎ、ヒー!!」


 もう耐えられないと地面をバンバンと殴るアインに、俺は堪らず手頃な小石を投げた。


「ストーン!」

「あいたっ!」


「できた、これが魔法か」

「思いっきり物理攻撃なんですけど!?」


 涙目で抗議してくるアインに知らんぷりを決める。


「だいたい無理よ……そのままじゃ魔法は使えない」


「え……」


「そもそもユウトが使えるのが不思議なくらいなんだから! あなたたち何者なの?」


 そう言われて返答に困る。別に隠せと言われてるわけじゃないが、じゃあ、僕たち異世界人でーすと答えたって白い目で見られるだけなのだ。


「まあ、それはいいわ……魔法はね、ギルドに加盟してスキルカードを貰わないと使えないの」


「なんじゃそりゃ」


「モンスターを倒したりクエストをクリアして、経験値やスキルポイントを貯めるの。そうしたらそのスキルポイントで魔法を習得するのよ」


 なんだかゲームみたいな話になってきた。


「ちなみにレベルが上がるとステータスが上昇したり、習得できる魔法の数を増やすことが出来るの」


「へー、じゃあそのギルドってのはどこにあるんだよ」


「んー、ここから一番近いギルド支部だと、始まりの町、《ファースト》よね」


 始まりでファースト、なんて分かりやすい名前なんだろうか。


「んじゃあそこへ行けば冒険者になれて魔法を使えるようになるわけだな?」


「そゆことー」


 つまり俺たちの最初の目標は、始まりの町を目指すこと。そしてそこで経験を積んで、魔王を倒す!俺はかっこよく活躍して女子達に囲まれてウハウハだ!


「よっしゃ決まりだ! ユウト、明日は始まりの町、《ファースト》を目指すぞ!」


「むにゃ……もう眠いよ、限界、乙」


「おいこらここで寝るんじゃねえよ、おーい!!」


 俺たちの目標が決まったところで、ユウトが寝落ちする。ちくしょうと思いながらユウトを背負う俺たちの後をを、アインは微笑みながらついてくるのだった。

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