プロローグ
どうしてこうなった。
「あなたたちは死にました」
俺はただあの少女を救いたかっただけなのに。
「あなたたちは死にました」
無表情な声が、まるでゲームの敗北効果音のようにリピートされる。そう負けたのだ、俺は人生に。
「ハハ」
真っ暗な世界で、俺の乾いた笑いが木霊する。
天国は白いんじゃなかったっけ、そんなくだらないことが俺の頭をよぎった。
「……………………」
隣のこいつは何を考えているんだろうか。
いつもみたいにホワンホワンした笑顔ではない。目を瞑って静かに佇んでいる。こんな状態になっても冷静になにかを考えられるなんて、俺はこいつを勘違いしていたのかもしれない。
思えばこいつは俺のせいでこんなとこに来てしまったのだ。驚きとかそういうので有耶無耶になってしまったが、やはり謝っておくべきだろう。これからどうなるのかは分からないが、それでも言わなかった後悔はしたくない。
決意と拳を固めて俺は、こいつに向かって頭を下げた。
「ユウト…………すまなかった!!」
「……………………」
返事がない。
沈黙が、静けさが、俺たちにとって失われたはずの時間を長く感じさせる。
怒っているのかもしれない、当然だ。
ユウトは俺のせいで死んだんだ。
でも、だからこそ、どんな罵倒でも受け取ろう。何度だって謝ろう。そう決意して俺は顔を上げ……
「グ〜…………もう食べられにゃい」
「…………………………………………おいユウト」
気のせいか、ユウトの口元に光る液体が見える。
「てめえ寝てんじゃねえよこの状況で!? 俺のすまない返せ!!」
「うわ!? …………先生寝てません!」
「ぐは!!!」
寝ぼけて、授業中に先生に起こされたと勘違いしたユウトの挙手が、見事に俺の顎にヒットした。
――死んでも痛覚ってあるんだ。
意識が遠ざかる中、俺はどうしてこうなったのかを思い出していた。