茜色の世界4
「待て、リュカ」
教えることはやった。リュカは、平常の政務に戻ろうと廊下を歩いていた。
だが後ろからルシウスが早足で追いかけて来て、眉を潜める。
「まだなにか?」
「見せろ」
唐突なルシウスの言葉にも、リュカは面倒そうな表情をしただけだった。
しばらく心をどこかへやっていて、ルシウスは忘れていた。
「貴様、向こうの世界を見ることができるだろう?」
「ああ、ようやく気が付きました?」
さらっと言われて、ルシウスは苛立った。
こちらから言わなければ、見せる気がなかったのか。
ルシウスの表情を見物してから、リュカが言った。
「いいでしょう。一度だけですよ。私も暇じゃないので」
そう言うと指を噛んで、血で空中に円を描いた。
しばらくじっと見ていると、じわりと映像が浮かび上がった。
やっぱりミヤコは泣いていた。
そのしばらくぶりに見た姿に、ルシウスは声もなく見つめた。
向こうからの声は聞こえない。
彼女の隣に同じくらいの歳の少年が座り、慰めるように彼女の背をさすっている。
「ああ、良かったですね。一人じゃないようです。どうやら誰かと一緒のようですね」
リュカは言う。
「…誰だ、こいつ?」
更に不愉快になった。
ミヤコが泣いていることにも焦りを感じる。
映像がゆっくり消えていく。
見届けると、くるっときびすを返した。
本当に早く迎えに行かねばと痛感した。
彼女に問わねばならないことが多すぎる。




