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再び6


「ここがユキの生まれ育った家か」


ヒカルはユキに連れられて島に降り立った。

簡素な木造の平屋の家。

中に入ると、趣味の良い内装が。建てた魔法使いのセンスが光る。


「いい家じゃないか」


ヒカルが感心する。


「呑気ね。父に殺されかねないのに…」


呆れて、ユキは周りを珍しげに見渡すヒカルを見ていた。ユキは考えがあるからと言うヒカルに頼まれて、人間は滅多に上陸しない謎の島……ルシウスや自分の自宅へと彼を連れて来たのだ。


緊張しつつ、寝室の戸をそっと開けた。


「………父さん、来たよ」


やっぱり窓辺に座り、ルシウスがぼんやりしていた。


「…家族以外が、俺の島に来るとは…殺すぞ」


視線も合わせずに外を見たまま、低くルシウスが呟いた。予想通りの台詞。


「ごめんね、父さん。私が連れてきたから」


ユキが冷や冷やしながら言う。

ヒカルは気にせず、持っていた包みを開いて、ルシウスの前に置いた。

気になったのか、ちらりとルシウスが目をやる。


「ルシウス様に元気の出るプレゼント、映写機改良型2です」


にこっとヒカルは笑った。


「……………………」


小型化された白い分厚い皿のような映写機。


「レオさんに頼んで作ってもらいました。前の三台はユキが破壊したので、新しい改良型。記録は保存してあったので…」

「…俺を更に苦しめたいのか?」


ルシウスは知っている。ヘリアスに乗っ取られた時に見ていたから。


「違います。僕はただ元気を出してもらいたいだけです」


暗い表情で睨むルシウスに、ひるまずヒカルは言った。


「ルシウス様。元気を出して、ユキを悲しませないで」

「…………ヒカル」


弱った気持ちだったユキには、その言葉が響いた。


「…………」

「それで、元気が出たらレオさんの発明部屋に来てください。一緒にまた発明しましょう」

「不可能だ」


無表情にルシウスは言った。

召喚魔法はとても難しい。消えた道が戻らないことを知っている。

取り返しが、つかない。


「おや、何もしないで不可能だと決めつけるんですか?もし、あなたの立場がミヤコ様なら、絶対に諦めないと思いますよ」


「ミヤコ」の名に反応したルシウスが、ゆっくり顔を上げた。


「ミヤコ様は、やはり最高の魔法使いでしたよ。アールラニとの戦いで、あなたを取り戻すためにふらふらになりながらも決して諦めなかった。とても強かった」

「……………………」

「しっかりして下さい。あなたらしくもない。ミヤコ様、強い割りに案外泣き虫だから早く迎えに行ってあげてくださいよ」

「………知った口を」


不機嫌さを露にするルシウスを見てから、ヒカルはユキと島を後にした。


ユキは翔びながら笑った。


「ん、笑ったね」


ヒカルはいたってマイペースだ。


「ありがとう、ヒカル。なんか私元気出た」

「ルシウス様、どうするかな?」

「もう大丈夫よ、多分ね」


ヒカルの腕に触れた手に、外れないように少し力を込めた。


「上手くいけばいいけどね」


ふいに沈黙が降りた。

しばらくらたって、ユキは意を決してうつむきながら口を開いた。


「…ヒカル、あのね、この前、す、好きだなんて一言も言ってないっていったけど…」

「あ、あれ、もういいよ」


ヒカルが緊張して、そっぽを向いた。


ユキが唾を飲み込んだ。

さあ、私勇気を出せ。


王宮に降りたって、ユキはぽつりと言った。


「私…ヒカルの明るくて優しいところ、嫌いじゃないよ」


ヒカルが、しばらく黙った。

それから考えて笑った。


「それってさあ、つまり、好き…なのかい?」


かあっと顔を赤くしたユキは目をつぶって言った。


「わ、私と、お、お付き合いしてください」


それだけ言うと限界に達し、返事を待たずに逃げようとするユキの手をヒカルが掴んだ。

とりあえず握手。


「喜んで!」


にこにこ笑うヒカルの腕から、気持ちが伝わる。

クチヅケシタイナ…


「バカっ!」


ユキは、走って逃げて行った。


「ええ!なんでー?、ユキー!」


ヒカルの悲しげな声だけが追いかけてきた。




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