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再び5


病室の戸を開けて入ってきた母は、年を取っていたけれど、それでも美人なままだった。


「ミヤコ」


母に抱き締められて、自分が幼い子のように錯覚するようだった。


「お母さん」


苦労しただろうな。

積もる話がいっぱいで、一日親子でずっと過ごした。


「写真はないの?」


孫や娘婿の姿を見たがる母は残念そうだった。

そうだ。帰ったらレオ君と作ろう。

都は軽く考えていた。


「ね、都。出産までここにいたら?」

「え?」

「だって、こちらの方が赤ちゃんのためにも、安心でしょう?急いで帰ることないでしょ?」


次いつ会えるか、いやもう会えないかもしれない。

母の切ない気持ちが伝わり、揺らぎそうになる。


「退院したら帰るよ。向こうで、私の家族が待っているから…ごめんね」


母は寂しそうに頷いた。

それから毎日のように都の元を訪れた。

そんなある日。

パタパタと複数の足音と声がした。


「都、紹介するわね」


母の後ろから、子どもたちが顔を出した。


「高校生の壮君と小学生の律ちゃんと華ちゃん。満の子どもたちよ」


好奇心いっぱいで見つめる子どもたちに、都は笑った。

その後ろから女性がそっと覗いた。

満の奥さん。


「初めまして」


都が挨拶すると会釈を返して、じっとこちらを見ていた。

あれ…?

警戒心や猜疑心のような感情が彼女から感じられて、都は言葉が出ない。

母が何でもないように言った。


「ね、壮君と同じくらいにみえるでしょ?でも、あなたたちのお父さんのお姉さんなのよー」


都は目を見開いた。


「ま、まさか、お母さん、正直に話しちゃってるの!?」


満のお嫁さんの不審げな視線が痛すぎる。

絶対信じてない!


「何かいけなかった?」


きょとんとする母にあきれる。


「都さん?パパから話しは聞いているけど…パパのお姉さんの、娘さん?なのよね?」


お嫁さんが探るように言った。


「えっと、あの…」

「ね、お姉ちゃん、魔法見せて!」

「はいー?!」


反対に、子どもたちはわくわくと期待して都を見ている。


「魔法使いなんでしょ、見せて見せて!」


都は照れた。


「え、見たい?」


ベッドに身体を起こして、片手を子どもたちに向けた。

直ぐに小さく風が吹き、顔を突き出す子供達の前髪が靡いた。


「すごーい!」


歓声がわいた。


「もっとやってよ!」


なんだか得意気になって、お嫁さんが手品だと疑うのをよそに、何度もいろんな魔法を見せてやった。


「手品?…いや、でもやっぱり魔法…いやいや、まさか」


その後、半分信じ始めたお嫁さんと子供達が帰って行った。

都は笑いを噛み殺して、皆を見送った。


もうすぐ帰る。帰れると思っていたから…

お腹の子が無事なのを、早く夫に伝えたかった。

知らなくて…今は安らいでいた。

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