執念2
「ミ、ミヤコ」
怪我をしたのは背中。でも、ミヤコはお腹を庇った。
呆然としていたヘリアスが、それでも抗おうとするミヤコを抱きかかえた。
「あっ…ううっ」
痛みに苦しむ彼女を見て、動揺したヘリアスが、彼女の治癒力を早めるために消えるの力を止めた。
荒く呼吸して、ミヤコが瞳を紅く光らす。
遠くへ…翔ぶ…
上昇したまでは良かったが、意識がぐらぐらとして、そのまま地面に落下してしまった。
「ミヤコ!」
私…私、なんて馬鹿!
地面にお腹を打ち付けてしまい、声を抑えてうめいた。
ぞっ、と寒気にも似た感覚が背中を走り、震える手でお腹に触れた。
自分の身体は、ゆっくりと癒えていく。
だけど…
「手当てをするから、大人しくしてろ」
宿に連れ戻され、ヘリアスが寝かした彼女の背中を治す。
不安でお腹を庇う手が震えた。
たとえ治癒力の高い魔法使いの子でも胎児の段階では、まだ不完全な力しか持たない。
子供が無事かわからない。
お腹に鈍い痛みが残ったままなのが、恐ろしくて震える。
「…お願い、私を…帰し…」
至近距離から受けた傷の痛みで、気が遠のく。
たすけ…
*********
風を受け、ミヤコが次に気付いた時、ヘリアスは彼女を抱えて翔んでいた。
「う…」
「気がついたか?」
手足に力が入らず、ミヤコは頭を巡らせた。
「どこへ、行くの?」
顔色の悪い彼女に、眉をひそめヘリアスが言った。
「遠くへ…昨夜、消していた気配を少しの間出してしまった。感づかれる前に遠くへ行く」
行くあてもなく、どこへ行くというのだろう。
私をさらっても、彼には休まる時がないだろうに。
「………ヘリアス」
気付いているだろうに。
私の心は既に奪われて、彼には手に入らないことを。
私は、彼を幸せにはできない。
孤独な彼が哀れで…
だから…
「もう終わりにしよう。私と、帰りましょう」
静かに言った。
「…どこへ帰るというんだ」
自嘲気味にヘリアスが呟く。
雲ひとつない青空が悲しい。
「…ヘリアス、あなた私がいないと生きられないと言ったわね?でもね、私はね、ルーがいないと生きられないの………私が、この世界に生きる理由だから。」
「……………」
悲しげなヘリアスを見上げ、ミヤコは優しく微笑んだ。
「私ね…お腹に赤ちゃんがいるの」
ヘリアスが驚いた顔でミヤコを見た。
その時だった。
リリリリリリー!
けたたましいサイレンのような高い音がした。




