逃亡8
ローレンとヒカルを王宮に連れて帰った直後、再びユキの声を拾い、ルシウスは急ぎに島に戻った。
家には一人、ユキがいた。風呂場のあたりで座り込んで泣いている。
「ユキ!」
ルシウスが声をかけると、ユキが振り向いて彼の腕をつかんだ。
「父さん、どうしよう、母さんが!」
風呂に点々と血の跡が残っているのを見たが、へリアスの気持ちを考えれば、それがミヤコのではないとはわかった。
「…そこまでして」
無理矢理牢を破り、大ケガをして、痛みをこらえてまで、そんなになっても…ミヤコが欲しかったのか?
殺しておけばよかった。
情けを掛けたのが間違いだった。
「ユキ、感知は?!」
「できないのよ!気配を消してるのよ!どうしても、母さんをたどれない」
やはりか。
「くそっ」
しらみつぶしに探すしかないのか?
ルシウスは、居ても立ってもいられずに、直ぐに翔ぼうとした。
「待って!父さん!」
「何だ!」
袖を引っ張る娘に苛立ちを堪えて、ルシウスは振り返った。
「…母さんから聞いてない?」
「何のことだ?!今はそんなこと…」
「母さん、お腹に赤ちゃんがいるの…4ヶ月だって」
口を開きかけたまま、ルシウスは固まった。
「な、なに?!」
ユキは目をぐっと閉じてぽろぽろと涙を流した。
「母さん妊娠してるの、早く、早く見つけなきゃ、赤ちゃん心配が」
「……………あ…あいつ」
良いことがあったと、ミヤコはニコニコしていた。
とても…とても幸せそうに、ずっと微笑んでいた。
話すタイミングなどいいから、どうして早く…
「どうして早く言わないんだ」
ミヤコ…
幸せそうな顔をしていたのに。それが奇跡だとも知らずに。
「父さん、母さんも赤ちゃんも助けてあげて、お願い」
「言われなくとも!」
ルシウスは翔んだ。
世界をまわっても、探し出す。
ヘリアスが、それに気づいたらどうするか分からない。
焦燥感が募った。




