逃亡6
長い寿命を持つ魔法使いは、それに相反する形で子ができにくい。
自然の摂理だ。
若いまま、死ぬまで子を授かっていたら、この世は魔法使いで溢れていたかもしれない。
ユキを産んでから、ミヤコはまた子を望んでいた。
望んでいたから、そのことを言い出せなかった。
がっかりするだろうから。
でも、それから20年以上の月日が経ち、彼女も薄々わかってしまったのか、子が欲しいとは言わなくなった。
自分は、娘一人で十分だったし、その後は夫婦二人だけで過ごす時間に満足していたから、それ以上を望むことはなかった。
この世界で数える位しかいない魔法使い。
そんな中で、伴侶を得ただけでも奇跡なのに…。
「…この話は無しだ。もう帰るぞ」
半ば無理矢理、ローレンに金を払わせる。
「お前と話せて良かったよ、ヒカル」
「はい、僕もです」
ヒカルは、照れて笑った。
「もう勝手に一人で街を出歩くな。面倒だからな」
ルシウスが釘をさした。ローレンも頷く。
「そうだよ、君のぱっと出の王子という身分が、気に食わない連中もいるんだから」
「グラディア王が、魔法使いを重用するのを気に食わない連中もな」
「……そうだね」
そういう連中を野放しにしている、王としての力なさが悔しい。
今は特に、戦後ということで余計に不安定な情勢なのだ。
ルシウスが思い出して言った。
「今度は、ユキにでも付いてきてもらえ。その方が安全だ」
「………はい」
項垂れるヒカルを見て、ルシウスがふっと笑った。
「ユキに一言も好きだとは言ってない、と言われて気にしてるのか?」
「ど、どうしてそれを?!」
「俺たちも、店にいた」
「あ…」
それで、ユキは動揺していたのか。
「ヒカル、ユキはお前を一言でも嫌いと言ったのか?」
ルシウスは、そう言ってやった。




