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逃亡4


「ヒカル、危ない!」


走ってきた父に突き飛ばされ、ヒカルは尻餅をついた。

飛んできた矢が父に当たる前に、横から現れたオルドが身を挺して庇った。

腹に矢が刺さりながらも、ヒカル達の前に出る彼を見て驚く。


「なんで…」


懐から剣を取り出し、ヒカルは構えた。

どうしてこうなった?


***********


朝からヒカルは町に繰り出し、一人自由を満喫していた。

雨が細々と降るなか、雨よけの軽いコートを着て、店を覗いていた。

ルルカに住んでいたので、この町はあまりまだよく知らない。

今日は、雨が降るせいで涼しい。 かき氷は今日は売れないだろう、そう思って苦笑した。


次に彼女と会う時、何を話せばいいんだろう。 このまま、帰らずにいたら…

ヒカルは首を振った。

そうしたら、彼女はまた僕を迎えに来るだろう。


濡れた石畳を歩き、 河のほとりで足を止める。

もう戻れないんだ、今までの暮らしには。


戦争があったりして、めまぐるしい展開に現実感が薄らいでいたのか、今急に戻れない日常を実感して、気持ちが押し潰されそうだ。


「いけない、いけない」


気が滅入ってる。

一軒の店に入り、昼食に麺類を注文する。 昼食を終えると店を出て、目的もなくふらりと歩いた。

歩いている内に方向がわからなくなり、ぐるぐると同じ所を歩いてしまい、狭い路地に入ってしまったのだ。


「 迷ったかな」


どのくらいたっただろう。

薄暗い空では、時間の感覚がいまいちだ。


にゃあ、とどこかで猫が鳴いた。

鳴き声のする方を向くと、軒先に猫がいる。

撫でてやろうと、ヒカルが屈みこんだ時だった。


ひゅっ、と音がして、ヒカルの耳元を矢がかすめた。


「うわっ!」


驚いて立ち上がった。

そこに、正面から名を呼びながら、フードを被った男が走りよってきた。

血相を変えた父だった。

そして、今。


「オルド!」


腹に矢が刺さったまま、オルドは剣を構えた。


「お逃げ下さい!」


ひゅっ、と再び矢が飛んでくるのを、今度はヒカルが父の手を引っ張りかわす。

次の矢を、他の闇の手が剣を薙いで防ぐ。


「…………全く」


ふっとルーが翔んで来て、彼らの前に降り立った。結界が出現し、矢が弾かれる。


「俺たちの…」


不機嫌に、家屋の屋根にいる刺客を睨む。


「食事の邪魔をするな!」


ボウッと火が刺客の身体にまとわりつき、熱さにたまらずに、もがきながらドサリと落ちてきた。

闇の手たちが、すかさず刺客を捕縛して、どこかへ連れて行く。


汗一つかかず涼しい顔でルシウスは、親子を見た。


「…皆に命張ってもらって、いい気分だな、ヒカル」


皮肉気なルーに、ヒカルは、ぐっと歯を噛み締めた。それから小さく礼を述べた。


「助けてもらいすまない。だが、そこまで言うことはない」


ローレンが息子の肩に手をおいて、ルシウスに言った。


「勝手なことをして、迷惑をかけてすみませんでした」

「……………」


礼を言うヒカルを一瞥し、ルシウスはオルドの腹から矢を無造作に抜いた。


「っ!」


血がほとばしるのを気にもとめず、傷口に手を当て癒していく。


「ごめんよ、オルド」


ヒカルが、血だまりを見つめうなだれた。


「ご無事で何より…」


傷が癒え、オルドが何でもないように微笑した。


「ここはいい…王宮の警備に戻れ」


ルシウスに言われ、オルドが姿を消す。


「お前ら、手を焼かすな。帰るぞ」


血のついた手を払い、ルシウスが二人を不機嫌に見た。


「は、はい。すみませんでした」


ヒカルがしょげて言う。


「待て」


息子の腕をつかみ、ローレンがにっこりする。


「ね、折角だし、ルシウスも…」

「は?」


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