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ヘリアスの想い6


「私のいた世界では、同じように武器の開発が進み、国同士が競い合うようにそれを持つことで、互いの抑止力としていました。火薬以上に強力な武器も作られました」


ローレンとリュカが、興味を持って聞いた。


「それでどうなったんだい?」


厳しい目をして、ミヤコは王に話した。


「私の国と他国が戦争をした時代がありました。その結果…私の国の都市が二つ壊滅しました。たった二つの小さな武器で、一瞬で何万もの人が亡くなりました」

「………………」


「武器を持っても、国は平和にはなりません。持つぐらいなら、最初から無いほうがいい」


ローレンは少し目をつむってから、ミヤコを見た。


「ミヤコ、では君は強力な武器を持つ他国に、抵抗する術を持たないままこの国が侵略されてもいいというのかい?」

「…外交という手段があります」

「それが叶わない時は?」

「…っ」


冷たい目をして、ローレンは続けた。


「いつまでも、今回のように君たち魔法使いに頼る時代は続かないだろう。君の言うことはわかる。だが、それは理想であって、偽善だ」

「ローレン!」


きっと睨むミヤコに動じず、王は突き放した。


「君の決めて良いことではない。王である私が決めることだ。控えよ!」


ローレンは、ばっと玉座から立ち上がり、部屋を出ていこうとした。


「よく考えて、ローレン!」


振り返りもしない王の姿が悔しかった。


「…報償金だけでも受けとりなさい」


リュカが、それだけ言って出ていった。


「……………」


後ろから手が伸び、ルシウスがミヤコを抱き締めた。

振り向いた彼女が、ルーの胸に顔を埋めた。


「…悔しい」

「なんだったら、あいつを玉座から引きずり下ろして、ヒカルにすげ替えるか?あのガキのほうが聞き分けがいいと思うぞ?」


背中を撫で、ルシウスが軽口を言った。


「…ルー」


ふっと気持ちが軽くなるから不思議だ。


「ミヤコ、この国に入れ込み過ぎるな。辛くなるぞ」

「うん」


「もしかしたらこの国が滅亡しても、お前はその後の時代を生きるかもしれない。俺には、永遠の時の中の、泡のような出来事に今を感じる時がある」


人のように、生きることを急ぐことはないのだ。

魔法使いが川の石なら、人は流れのままに揺られ、直ぐに消え行く落ち葉のようなものなのかもしれない。


「俺は…できることならこの国を捨てて、島にお前を閉じ込めて、縛って、俺だけを想って、溺れていて欲しいと願うことがある」


彼女の背中を抱く、ルシウスの手に力がこもる。

急にきつく抱き締められる。

息苦しいほどに。


「………………」


ミヤコは、黙ってその力を受け止めた。

どんなに時代が変わっても、最後に自分が拠り所とするのはルシウスしかいない。

彼だってきっとそう。

しばらくして、ルシウスは抱き締めた手をゆっくりと緩めた。


「…冗談だ」


ミヤコを見つめて、そっと言った。

しばらく黙ってから、ミヤコは微笑した。


「…いつかね」


馬鹿ね、そんな切ない顔をして、冗談じゃないんでしょう?


手を伸ばし、夫の顔を引き寄せる。

ルシウスは、ほんの一瞬苦しそうな顔をした。

そして、目を閉じると、耐えられなくなったように激しく彼女の唇を求めた。


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