ヘリアスの想い4
まずは、お粥かと思って彼女に食べさせたら、物足りなさそうな顔をするので、結局普通の食べ物を出してやった。
パクパクと気持ちよく食べるミヤコを見るのは、好きだが…
「お前!食い過ぎだろ?」
本当に一週間分食べる気か?
「うう、美味しいよう、幸せだよう…ルーの手料理、久しぶりだよう!おかわり!」
ミヤコは半泣きで、ぱくついた。
呆れて眺める夫に、ミヤコが思い出して聞いた。
「ねえ、ルー。あの人……ヘリアスはどうしてる?」
ルシウスは、とても苦い顔をした。
「…お前たちが用意した牢に閉じ込めている。」
「…そう。暴れてはいない?」
食べながら顔を上げて聞いてみる。
「ミヤコ…あんなゲス、気にかけなくていい。お前に、散々な仕打ちをしたんだ。本来なら、俺に一万回殺されても、文句はいえぬ立場だ。」
不機嫌になってルシウスは言った。
それから思い出して、少し暗い表情になる妻を見た。
「あの男に会うなよ、ミヤコ。耳も貸すな」
乗っ取られて、ヘリアスの心がルシウスには、分かってしまった。
嫌な予感がした。
「わかった。あ、そうだ。ルー…」
アイスを出してくれて、隣に座った彼を見た。
「なんだ?」
拘束の魔法を、いきなり放ってみた。
「………………」
「うーん、やっぱりもう効かないか、はあ、残念」
ルーが無表情にミヤコのアイスを取った。
「そうか、アイスはいらないか…」
「ああ、ごめん!アイス取らないでー!食べるー!」
スプーンを持って、ルシウスは一口だけ味見して、ミヤコに返してやった。
「いつから効かないの?」
アイスを食べて彼女が聞いた。
「気付いたのは、つい最近だ。だが…」
「ルー、遊んでたのね。」
耐性ができるまで、ぽんぽんと拘束してただなんて。
いやいや、私だけが悪いわけじゃないよ。
「ばれたら仕方ない。残念だな、拘束ごっこはもう終わりか」
ルシウスは、にやにやして言った。 ミヤコは食べ終わって口元を拭き、満足げな笑みを浮かべた。
「はあ、幸せ。おいしかった」
洗い物を魔法で済ませ、ルーはぼそっと呟いた。
「ほんと、たいした奴だよ…」
食い過ぎだ。
気づいたら自分を見て、ミヤコはずっとニコニコしている。
「なんだ?」
思わず笑った。笑う余裕ができたのは良いことだ。
「ルー…その、甘えてもいい?」
手を広げてやると抱きついてきた。
ソファーに座って、彼女を膝に乗っけて抱き締めた。
「そんなに寂しかったのか?」
茶化して言ったのに、ミヤコはとても素直で甘えていた。
「寂しかったよ。だから、今は幸せ。」
ルシウスの胸に顔を寄せて、安心したように微笑んでいる。
「そばにいてね…」
「ずっといる。」
娘が島を離れてから、自分達二人は親だった頃から、振り出しに戻ったようだ。
最初の二人だけで島で過ごした時のように、気持ちも戻ったみたいだ。
見た目が変わらないせいもあるが、加えて気持ちの有り様も互いに変わらないからかもしれない。
「そういえば、夢を見た」
ルシウスは少し俯いて、彼女の顔を見下ろした。
「ん?」
「お前が初めてこの島に来た時の夢…懐かしかった」
「あの時から、だいぶ経ったね。」
「これから先もかなり長いぞ。」
ふふ、とミヤコは笑った。
「大丈夫、どんなに長くても一緒にいるよ。」
自信があった。
顔を上げて、彼の顔に手を添えた。
しばらく見つめてから、ミヤコは夫に口づけた。
「ミヤコ、口づけだけで満足か?」
唇を離すと、ルシウスが少し意地悪く言った。
「なんのこと?」
素知らぬ顔で言ってみた。
ミヤコの耳を甘噛みしてルーが言った。
「俺は餓えてると言った」
「お腹空いてるの?」
「…そういう意味じゃない」
ぶすっとする夫に、こらえきれずミヤコは笑って、彼の首に手を回した。
「…私も餓えてるよ、あなたと同じ意味で…」
言ってから、やっぱり恥ずかしくなって顔を覆った。
「あ、やっぱり今の無し!忘れて…」
「手遅れだな。」
ミヤコを抱き上げて、ルシウスは素早く歩き出した。
餓えを満たすために。




