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ヘリアスの想い2


面白い夢を見た。

いや、これは過去に実際あった出来事の夢。


きれいな星空。

滝の側に娘が倒れていた。


水に濡れて、初夏なのに冬用の厚い服を着ていた。

黒髪の娘。


「………………」


ルシウスは、靴のつま先で娘の背中をこづいた。


「う…」


うめいたが、目を覚ます様子はなかった。


どうするか?

さすがに夜は冷えるだろう。

濡れた姿だしな。

魔法使いではなさそうだが、黒髪なのが気になる。


召喚魔法。

おそらくリュカだろう。

なんのために?

取り合えず、こいつと話をしてみるか。


屈んで、娘の服の水気を蒸発させた。

それから、彼女を抱きかかえた。

思ったより軽かった。

自分以外の誰かに触れるのは、何年ぶりか。

柔らかいな。

歩いて帰ったのは、彼女の感触を少しの間、感じていたかったから。


ふいに娘が、微かに目を開けた。

黒い瞳。

娘は夜空を見て、また目を閉じた。

ルシウスは、それを見ていた。


可愛らしくて優しい顔立ち。

家に招いた初めての人間。

そして、それから30年近く彼女と過ごしてきた。

出会った時は、まさかそんな未来は想像もつかなかった。


*******


「ふふっ…く、くすぐったい…」


首筋を唇でなぞられ、ミヤコは笑って身をよじった。


「や、やめ…ちょっとー!」


ばすっとルシウスの顔を手で押さえて、起き上がった。


「なにするのー!」

「やっと起きたか…」


顔を押さえていたミヤコの手に、ルシウスは口づけした。


「あ、れ…?」


陽の光が眩しい。

寝室の窓が開け放たれて、穏やかな風が吹いている。

夏の暑さも幾分和らいだようだ。


「水」


ミヤコにコップを渡してから、ルシウスは隣に腰をおろして言った。


「お前、一週間寝てたんだぞ。このまま眠り続けるかと思った」


飲んでいた水でむせた。


「ぐっ!ごほっ、い、一週間!?」


ああ、そうか。今までのことを思い出して、ルシウスを見つめた。


私よっぽど気を張ってたんだ。

そう思ったら、ルシウスがそばにいることが嬉しくてたまらなくなった。


「ルー、良かった、元に戻って…」


にっこりして彼に抱きついた。

ルシウスが、手を伸ばして応えようとして…

気付いた。


一週間!

夏の暑い日に!


「きゃあ!やっぱだめえ!」


ドオンとルシウスを突き飛ばした。

寝台から落ちて、ルシウスはショックで呆然とした。


「ミ、ミヤコ…なぜ…」


服を慌てて匂った。


「わ、私、絶対汗臭いから!だめ、近づかないで!」


走って風呂場に行こうとした。

そして、つんのめって転んだ。


「…ううっ」

「何やってる」


ルシウスが、ミヤコを抱えた。


「ああ、やめてえ」


両手で顔を隠した。

ルーは風呂場に向かって歩きながら、ミヤコの胸元を嗅いだ。


「う、ひゃああ!」

「あ、おい!暴れるな!別に臭くないぞ!」


すとんと、ミヤコを降ろしてルシウスは言った。


「え?」

「ユキが、たまに来て着替えさせたり、身体を拭いていたし…俺も毎日拭いていた」


ミヤコは頬を両手で押さえた。


「ひゃああ」


乙女か!?

ルシウスは首を傾げた。


「夫婦だろ、気にしなくても…まあ、いい。風呂に行くなら脱がしてやる」


「ばっ…ん?ルー、もしかして遊んでる?」


にやにやしている夫にようやく気付いた。


「何十年一緒にいても、お前はいつも面白い。楽しいな」

「馬鹿…」


ぷうっとむくれるミヤコを見て、いつもの日常にルシウスは内心安堵していた。


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