表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/124

二人で最高4


ヘリアスは首に巻き付く手を強く掴み、翔ぶのを振り払うために、そのまま大地へと墜ちて行った。


結界を張って、落下の衝撃を弾く。


「…ったく、何しやがる。」


仰向けに倒れたヘリアスは、自分に馬乗りになっているミヤコを見上げた。

荒く呼吸し、翔ぶことで力を使い果たした彼女は、意識を保つだけでやっとだった。ふらりと身体が傾きそうになるのを懸命に堪えている。


それなのに。


「……船は全て破壊した。あなたの本当の身体も、封じた。そして、あなたも私が捕まえた。」


がっと、ヘリアスの襟首を彼女は掴んだ。


「負けを、認めなさい!」


強く睨み付けた。

髪がほどけてしまい、彼の頬にかかった。


「負け?」


彼女を見上げて、ヘリアスは薄く笑った。


「いいだろう…負けを認めてやる。」


ほっとしてミヤコが気を緩めるのを見計らい、彼女の手を掴んで倒し、今度はヘリアスが馬乗りになった。

ミヤコを見下ろし、顔を近付ける。


「なあ、ミヤコ。俺が負けたからと言って、お前を諦めると本当に」


ぱんっ、とミヤコがヘリアスの頬をいきなり平手打ちにした。


「なっ…」


唇をぐっと噛み締めてから、ミヤコが強い口調で言った。


「約束した!ルーを私に返して!」


抗う彼女の手首を地面に乱暴に押し付けた。


「そんなにも…あの男を!」


怒りのような感情が湧いた。


ヘリアスの首に細い鎖状の紐が掛かっているのが、ミヤコの目に映った。


その紐に通された銀のイヤリングを見た。


涙が溢れた。


あの時ユキは、ミヤコをヘリアスの元に翔ばすことを拒まなかった。


「母さん。父さんはきっと、戻って来てくれるよ。」


そう言った。

彼女は、自分やミヤコを、父が助けてくれたことを話した。


ルー、見てるの?

聞こえてるの?

私を、想ってくれてるの?

今の魔法を使い果たした私にできることは……


手首を掴む男の手を、指を動かして握った。

もう片方の手で、男の肩を抱き締めた。

驚く彼を引き寄せ、その顔に必死で頬を寄せた。


なんだ、私。

昔、人間だった時に同じことをしていたじゃない。


ぽろぽろと涙が流れる瞳を閉じて、少し笑った。


「ルー…帰って来て…」


動きを止めた男の頬に唇を寄せた。

彼は、ぴくっと身体を揺らした。


「私、あなたがいないと…生きていけないから…死んじゃいそうに辛いから。」


彼女の夫に向けた言葉を、耳元でヘリアスは聞いていた。

手を握られた所から、深い想いが伝わって彼に流れていく。


「ルシウス…あなたが恋しい!…あなたがいないと、私が餓えて死ぬのよ…」


一言一言に想いが込もって、心が揺さぶられるようだった。

ミヤコの言葉は、あの男への想いだというのに…


まるで、自分に向けられた想いかと錯覚しそうで…


「あなたが愛しい…」


告げられた途端、ヘリアスの瞳から一筋涙が伝った。


なんだ、これは…

驚いた。


「ルー…ルシウス…ルシウス!」


胸が熱い…


泣きながら呼び掛ける彼女を、ヘリアスは顔を動かして間近で見つめた。


胸が焦げ付く…


ああ、こんなに愛されたらどんなに幸せだろうと思った。

想って、しまった。


「愛してるわ。あなたがどこにいたって、これから先の年月が、どんなに長くても…ずっとずっと愛してる!」


自分の肩を抱く彼女の手が暖かい。安らぐようだった。

目を閉じている彼女の目から流れる涙が、自分の頬を濡らした。


ああ、暖かい。


そっと手を伸ばし、ミヤコの震える肩を抱いてみた。

柔らかい身体に触れ、ヘリアスは目を閉じた。


「ルシウス、愛してる…愛してる…愛してる!」


ああ、奇妙な感覚は、そうだったんだ。


俺が…

俺が…

ミヤコをいとおしいと感じる気持ち


ヘリアスの心が、ルシウスの心と同調する。


「愛してる…」


ミヤコの声に、ルシウスはようやく目を開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ