二人で最高3
怪我をした背中が、じんわりと暖かく、痛みが消えていくのを感じて、ミヤコは目を開けた。
「母さん」
ユキがほっとして、傷を癒していた手を下げて彼女を見下ろした。
「ユ、キ」
はっとして、周りを見回した。
「ユキ、船は?」
「母さん、私やったわ!」
ユキは疲れた顔で、得意気に笑った。
力の入らない身体をミヤコはゆっくり起こした。
「これは…」
嵐が過ぎ去ったように、船はバラバラになって海を漂っている。
乗っていた人達は…
ユキが港の端の辺りを指差した。
拘束されたり、気絶した兵たちが転がされている。
「大丈夫、誰も殺していない」
というか、殺生なんて絶対無理。
「ユ、ユキぃー…」
涙をこらえて、ミヤコは娘をぎゅっと抱き締めた。
「なによ。泣かないでよー」
ユキが恥ずかしがって苦笑した。
その時だった。
王宮の結界が破られた気配を感じた。
二人で、振り返った。
「行かないと!」
ユキが慌てて、立ち上がった。
ぱっと彼女の袖をミヤコが引っ張った。
「ユキ、お願い!私を翔ばして欲しいの!」
もう力は使い果たした。
だけど、まだできることがある。
王宮内に気配を感じた。
「私を、あの人の所へ翔ばして!」
*********
金色の小さな弾がヘリアスに飛んできて、彼の側で爆発した。
結界に守られ、ヘリアスは平然として、リュカに炎を浴びせた。
炎がリュカの結界を焼き、彼の腕を焦がす。
「つうっ…!」
腕を抱え、リュカが歯を食い縛る。
「はっ!お前、俺の力を下に見てなめてんじゃねえよ。いつもこいつに手加減されてた奴が!」
投げ掛けられた言葉に、リュカは動きを止めた。
「な、に?」
「気付かなかっただろ?こいつは洗脳が解けてからは、お前を殺そうとしたことはないんだぜ。」
手のひらで火を揺らしながら、ヘリアスは呆れたように言った。
「あの女を、お前が傷付けた時でさえ、こいつはミヤコが命を取ることを嫌がるのを知っていたから、ためらった。だから、お前は生きてる。」
キレて辺りを火の海にしてしまったが。
驚いて、リュカはヘリアスを見た。
「馬鹿な…」
「こいつはな、お前が思うよりも優しい奴だってことだ、信じられないことにな…」
「そんなこと、ルシウスは一度も…」
「言うわけないだろうが、こいつが」
ヘリアスが火を放つのをかわして、雷撃を撃とうとした。
だが、リュカはためらった。
そこを拘束されて、更に火に焼かれる。
「うああっ!」
全身に火が点く。
急いで消したが、火傷がひどい。
倒れて、痛みを堪える。
「ううっ」
「まあ、今の俺は手加減なんかしないがな」
ヘリアスはリュカを見下ろして言った。
「お前なんかと遊んでいる暇はない」
リュカの側を通り抜け、王宮の奥へと進む。
気絶しているアールラニ兵たちの間を通り、騒がしい一角にたどり着く。
「見つけた」
ローレンの姿を目にし、ヘリアスは、戦いの終わりが近づいたことを感じた。
王を守ろうと、立ちはだかるグラディア兵を気にもとめず、すっと近距離を翔んだ。
「ぐっ!?」
まばたきする、ほんのわずかな時間で、ヘリアスはローレンの後ろに翔んで、その首に片手を置いた。
「へ、陛下!」
「とうさ…」
ヒカルが茫然と呟き自分を見るのを、ローレンは見た。
ヘリアスが彼の首に置いた手が刀のように、首に傷を作る。
首をはねる気か!
しまったな、と王は思った。
まだ全然ヒカルと話ができていないのだ。
困ったような顔でヒカルを見た。
恐怖は感じなかった。
ヘリアスがローレンの首をはねるため、力を込めようとしたその時だった。
急に背後からヘリアスの首に白い手が巻き付いた。
「なんだ?!」
驚く間もなく、ヘリアスはミヤコによって強制的に翔ばされた。
王宮から離され、グラディアから、ルルカから、ずっとずっと遠くへ…




