二人で最高2
何も衝撃は無かった。
やけに静かだった。
ユキはゆっくり顔を上げた。
あるはずのない結界に自分達は包まれていた。
「…これは」
守られているような、安心感があった。
ユキの腕の中で、意識を失ったミヤコが、微かにうめいて呟いた。
「…ルー…」
目を凝らしても、何も見えない。
でも…
感知の力を持つユキには、確かに聴こえた。
『おい、しっかりしろ!ミヤコを守れ。…お前は、最高の魔法使いの子どもだろ!』
「…父さん。」
ミヤコをそっと地面に寝かせ、ユキは立ち上がった。
以前、父が言っていた。
「俺とミヤコは、二人で最高の魔法使いだ。あいつがいれば、俺にできないことはないと思えてくる。だからユキ、俺たちの子どもであるお前は、生まれながらにできないことはない。誇りを持て。」
小さい時、魔法が下手で落ち込むユキに、彼がこじつけのように励ました言葉。
誇りを…
ユキの魔法で、風が船を吹き上げる。
ベキッと船体の折れる音がする。
できないことはない
風で、海が荒れる。
大砲を撃つことができないほどに、船が波に揺れる。
*********
グラディア王宮の結界の外に、ヘリアスはいた。
アールラニの兵たちが、たどり着き結界を破るために大砲を撃つ。
弓矢なら、びくともしない結界が大砲を受けるたびに、ビリビリと振動し弱くなっていく。
「ルシウス、お前はやはり一筋縄ではいかないな」
ほんの一瞬、ヘリアスに乗っ取られていながら、どこかへ思念を飛ばした。
そんなにも…愛してるのか?
ヘリアスには、ルシウスの心がわかる。
わかるが、自分と彼が、他人である以上、その心の機微は知ることができない。
そのはず。
結界が遂に破れた。
兵がどっと王宮に流れ込んだ。
「とりあえず、王手だな。」
グラディア王の首を取り、この国を降伏させてから、自分の本体を取り返したらいい。
「この国が敗れたら…あの女、どんな顔をするだろう?」
言ったそばから、またしても奇妙な感覚に襲われた。
ぼんやりと思った。
俺には笑顔を向けないだろうな、と。
無言で斬りかかってくるアールラニ兵たちに、ヒカルは異常さを感じた。
剣を返し、峯で相手の横腹を突いた。
人形みたいだ。
表情乏しく、躊躇なく斬りかかってくる兵たちは、洗脳されているのか。
結界が破けて、どっと流れこんできたアールラニ兵たちを、グラディアの兵たちで防いでいる。
ヒカルたちの背後にローレン王。
矢が王を狙うが、ミヤコが強く張った結界が王の周りに存在し、弾かれる。
「ヒカル!こちらへ!」
「殿下!お下がり下さい!」
ローレンや味方の声に、ヒカルは首を振った。
ヒカルは、剣は上手い。
だが、剣で人を傷つけるのは嫌だと思った。
剣は人を守るために使う。
命を取るものじゃない。自分の信条だ。
「殿下!」
ヒカルを守って、オルドが敵の刃をはね除けた。
「大丈夫だ」
ヒカルには、リュカが張った結界がある。
周りを見て、気付いた。
オルドやグラディア兵たちは、襲ってくるアールラニ兵の剣を叩き落とし、失神させるだけで殺そうとしない。
「なぜ殺さないんだい?!」
グラディア兵たちが、得意そうに笑った。
「ミヤコ様が…殺さない宣言をされたので、我々もそれに倣っているだけです!」
戦場で、敵味方関係無く、彼らの傷を癒した彼女を皆見ている。
ふらふらになりながら、他人のために力を使い切った、美しい魔法使いを。
心を動かされたのだ。
だから、自分達も。
「ミヤコ様は、この国で一番皆の心を奪った女性だね」
なんだか、じーんとした。
いい国だね。
最後まで守らないとね。
**********
「お前が、リュカか」
「中身は違うけれど、またあなたと戦うことになるとは、この際どちらが強いかはっきりさせませんか?」
王宮に侵入したヘリアスに、リュカが対峙した。




