二人で最高
ふいにユキの肩に、細くて長い指が触れた。
「母さん!」
疲労の濃いミヤコは、それでも娘に笑顔を向けた。
「ユキ、大丈夫?けがは、ない?」
言ったそばから、ミヤコはずるずると座り込んだ。
「母さんこそ…!」
母の背中を支えるために、ユキも座り込んだ。
ミヤコは船を見つめて、僅かな後に、ふっと笑った。
「ユキ…あなたの力で見つけて欲しいのだけど…」
「何?」
兵を拘束しながら、ユキが聞いた。
「3つの映写機の位置。この船団、半分は映像みたいだから。」
間近の船は本物。
でも、その後ろの船の中に、よく見ると向こうが透けている船があることに、ミヤコは気付いた。おそらくは、こちら側の戦意を喪失させるために多く見せている。
「ああ、なんで気づかなかったの、私!」
ユキは片手を海に向けて、集中する。
映写機を乗せている船を探す。
この距離なら、わかる。
船団の最後尾の、左右に広がる三隻。甲板に設置されている。
伸ばした片手の、人差し指と親指だけを立て、銃のように狙いを定めた。
続けて三発、風の弾丸を放つ。
意思持つように、狙った三隻の映写機を過たず破壊した。
すると、ふわっと偽物の船が薄らぎ、かき消えた。
それでも、大きな船が20隻は残っているだろうか。
ミヤコは座ったまま、船の舵と大砲を、魔法で切り裂こうとした。
一隻は、それができた。
だが、ひどい倦怠感に襲われ、石畳の地面に手をついて身体を支えた。
荒く息をした。
もう雨も降らせられない。
拘束も使えない。
体力がもたない。
残っているのは、気力だけ。
「母さん、私がするから!」
ユキが、手をかざし一隻の舵を切り裂き、操縦を不可能にした。
その時ドオンッと、大きな音がして、近づく船から二人を目掛けて大砲の弾が飛んだ。
ユキは、身構えて結界を張っていたので、痺れるような衝撃を感じただけで済んだ。
でも…
「か、母さん!しっかり!」
砂煙の中に、ミヤコが倒れていた。 結界を張るのさえ難しいほどに、力が尽きているのか。
「う…だいじょ、ぶ」
まとめていた髪が乱れ、汚れた頬にかかるのも気にせず、ミヤコは必死で身体を起こした。
ユキは、母をほとんど抱く形で手を添えて支えた。
母と自分の周りに結界を強く張る。 ミヤコは、もう自分には無理だと悟り、ふらっとユキを見上げた。
娘が、どうしたらいいかわからないような表情をしている。
「ユキ、船を着岸させないで。あなたの力で、全ての船を壊して…」
こんなに多い数の船を。
「母さん…私には…」
自信がないユキに、ミヤコは落ち着かせようと微笑んだ。
「どうして?…ユキは、最高の魔法使いの娘よ。その力を受け継いだ子よ。できるわ…」
大丈夫。
娘の手をしっかり握った。
ユキは息を深く吸い込む。
こういう時、師であるリュカは、どうしろと言っていたっけ?
「力の留め具を外すことをイメージしてみなさい。自分の力を信じて、疑わないことです。」
漠然として、わからなかったけど、だけど。
短い黒髪が、サラサラと風にそよぐ。
両手を広げて、紅い瞳を見開く。
イメージは竜巻
船の帆が、ベキッと音を立て宙を舞った。
床板が剥がれる。
船内の人が飛ばされまいと、もがく。
ドオンッと大砲が、ユキに向かって放たれる。
ミヤコが、力を放つことに気を取られているユキを庇った。
結界がびりびりと衝撃を受ける。
再び攻撃される。
威力の強さに、結界がひび割れかける。
そこへ更に攻撃を受けた。
「きゃっ!…っ」
結界が破れて、二人とも弾き跳ばされた。
「う…」
ユキが目を開いた。
ミヤコは、彼女に被さるようにして、意識を失っていた。
背中から血が流れている。
「母さ…!」
ドオンッと、また大砲の音が鳴り響いた。
ユキは、咄嗟に母の上に覆い被さった。
結界がない。
無事ではすまない!
父さん!




