表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/124

二人で最高


既に地下に避難していた人々は、闇の手たちの誘導により地下通路を歩いている。

遠く国境まで続く古くからある秘密の脱出ルートだ。

途中幾つも分かれ道があり、地上に繋がる通路が何ヵ所も複雑に設置されている。


一般の人々が、そこから下りてきて合流する。

大勢が、声を立てないように列をなしていた。


「ヒカル!あなたも…」


サラ王妃が、闇の手の女に肩を支えられ連れられながら、彼を見た。


「ご無事で。」


ヒカルは、見送って呟いた。


「いけません!あなたは、陛下と…私の、たった一人の子です!」


背中に王妃の声が響き、ヒカルは足を止めた。


女に連れて行かれながらも、王妃は必死な顔で言った。


「生きて、ヒカル!」

「どうして、そんなに」


驚いて、ヒカルは佇んでいた。


「殿下、我らは、あなたをずっと守るよう陛下に命じられていましたが、それは王妃様の強い意向にもよるものです。侍女だったあなたの母君が王宮を出てから、あの方はずっとあなたたちのことを気にかけていました」


隣にいた闇の手の男が、そっと教えてくれた。


「血が繋がっていないのに…」


俯いたヒカルは、顔を歪めた。


王宮に戻ったローレンが、息子の姿がまだあることに気づき、厳しい目を向けた。


「なぜ、避難していない!?」


近くにいた兵が、彼を捕らえて避難させようとした。

ヒカルは、軽い身のこなしでそれをかわした。


「嫌です。避難なんてしません。僕だって、この国を守りたい。守らせて下さい!」


ヒカルは物怖じせず、王を真っ直ぐに見た。


「ヒカル!」

「陛下が避難しないのに、僕が避難してどうするんですか?」


王が、国を捨て逃げることはない。

ヒカルは知っている。

睨み合っていたが、それもほんの僅かな時間。


「…わかった」


溜め息をついて、ローレンは少し笑った。

何を言っても息子は聞かない、そう感じたから。


**************


ミヤコは限界だろう、とリュカは判断した。

気を失わないのが不思議なぐらいだ。


彼女の力は凄まじかった。

だが、この緊急時に、怪我人の治療に力を使いすぎ、もうろくに魔法も使えないはずだ。


青い顔のミヤコにたまりかねて、リュカは彼女を抱きかかえた。

王宮に連れ帰り、寝台に寝かせた。


「あなたは、よくやりました。休んでいなさい。」


リュカは、苦しげに目を閉じるミヤコに言うと

部屋の扉を閉めた。


「…休んでるわけには、いかないのよ。」


リュカが去ると、ミヤコは目を開けて力の入らない身体を無理に起こした。

こんなところで、寝てるわけにはいかない。



グラディアの港から王宮までは、平原からよりも距離が近い。

船が上陸したら、あっという間に攻められるだろう。

ユキが、港に翔んだ時には既に続々と船が着き始めていた。

兵がもう降りはじめている。

洗脳されているのだろう、王宮を目指し、真っ直ぐ走っていく。

ユキには目もくれない。


王宮には、小さな結界が施してあるが、破られるのは時間の問題かもしれない。


「やばい!」


降りてきた兵を、慌てて拘束する。

自分の力では、いちどに5、6人しか縛れない。

人数の多さに手間取っていると、次の船から、また兵が降りてきた。

キリがない。

ユキの足止めをかいくぐり、アールラニ兵たちが

王宮まで走っていく。


連絡によれば、リュカはヘリアスの身体を守っている。

レオは洗脳が解けず、未だ拘束中。

ミヤコは力を消耗し過ぎて、動けない。


こんな時…


「父さんが、いたらなあ」


私の力じゃ、知れている。


娘の自分から見ても、彼は強い魔法使いだった。

涼しげな整った顔で、いつも堂々として、颯爽としていた。

子どもながらにかっこいい人だと思っていた。


母を一途に愛して、その想いをどんな時も恥じることなく示した。

あんなふうに、愛し合う人に巡り会うことは、自分には無理じゃないかと思う。

それほどに、両親は強く結ばれていたのに。


もし…戦いに敗れ、父を取り戻せなかったら、母はどうなるのだろう?


優しくて、それでいて芯が強くて勇気がある、とても美しいあの女性が、冷たい笑みを浮かべたままに、変わっていくのは辛い。

きっと、自分の心を自分で殺してしまうだろう。

死んだも同然に。


無我夢中で、ユキは上陸する兵たちに拘束を繰り返した。


嫌だ。

そんな母を見たくない。

ここで負けられないんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ