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最高の魔法使いミヤコ4


ユキは怪我が回復するのを待ってから立ち上がった。

本当はすぐにでも、母と共に戦いの手助けをしたいのだが、リュカの代わりに、ここに留まるよう言われているのだ。


王宮には、王妃や、大臣たち、侍女、王宮に仕える人たちがまだ残っているのだ。

王宮の地下へと避難している彼らを護らねばならない。

なにより、王位継承者たるヒカルを護るように命じられている。


今、グラディアとルルカには、魔法使いたちが共同で編み込んだ巨大な結界が国を覆うように張ってある。

害をなす気を持つ、人や魔法使いは、結界には入れないようになっている。


静かだった。

避難して、誰もいなくなった王宮が、ただでさえ広いのに、更に広く感じた。

闇の手たちは、ヘリアスの身体を守るために、やはり地下にいる。


「…何してるの?」


階段を上りながら、ユキは後ろに声を掛けた。

地下に避難したかと思っていたのに、ヒカルが付いて来ていた。


「地下に避難してって言ったでしょう。」


見晴らしの良い王宮の塔の最上階を上っている。

無駄に力を使いたくないので、翔ばずに歩いていた。


「僕は、これでも剣はいくらか使えるんだ。大丈夫。」

「大丈夫って…あなたを守る身になってよ。」


地下にいてくれた方が、守りやすいのに。


「…ねえ、君を守るのは誰がするんだい?」

「何?」


ヒカルは不満そうに言った。


「僕は、生まれた時から守られてきたみたいなんだ」

「知ってる」


「…僕はもう、一方的に守られっぱなしは嫌なんだ。皆が僕に気を使ってくれるのはいたたまれない。だから、その代わりにせめて君を守りたい」

「私、魔法使いだから、人間のあなたより強いと思うのだけど?」

「人間様をなめないでよ。」


ヒカルが意地になって言った。


塔の最上階の戸を両手でユキは開いた。

さあっと風が吹いた。

バルコニーのようになっていて、二人で外に出た。


「へえ、こんなふうになっていたのか。」


ヒカルを無視して、柵に手をつき眼下に目をやった。

塔をぐるりと囲むようにバルコニーがあり、どの方位も見渡せる。


ユキは、興味深げに周りを見渡すヒカルを横目に、母たちのいる平原に目を凝らした。


街並みと城壁に視界を遮られ、目ではどうなっているか見えにくくてわからない。

ただ、平原の辺りにだけ不自然に集まる黒い雨雲で 戦いの最中なのだとわかる。

ユキは感知の力で、それを見ようとした。


そして気づいた。


ちょうど平原の近くの結界に、小さな穴が生じている。

始めは気のせいかと思うほどの、小さな穴だった。


「ユキ、ここから海も見えるんだね。」

「……これは」


それどころじゃない。

結界の小さな穴が、じっと見ていないと気づかないほどにゆっくりと、でも確実に大きくなっている。


皆、気づいていないの?!

これは、彼の仕業なのか?


「侵入される…」


その目的は、一つだ。

ユキは、踵を返して翔ぼうとした。


「………ユキ、僕の眼がおかしいのかな?」


ヒカルが、乾いた声で言った。


「それどころじゃ…」


焦るユキの袖をヒカルが強引に引っ張った。

彼が指差す海に、視線を向けて息を呑んだ。


「なんで!?」


彼方にグラディアの港。その僅かに数キロ先の海に、何百という船団が見えた。


帆に、アールラニの国印。

舳先に大砲を据え付けて武装している。


背中に悪寒が走った。

一体いつになったら、この戦いは終わるのか。

集中が途切れ、気が萎えそうになり、思わずヒカルを見た。


「…ねえ、ユキ。」


海から目を離し、ヒカルは横にいるユキを見た。


この状況が、嘘かと思えるほどに静かな表情をしていた。


「この戦いが終わったら、僕とデートしてくれる?」


ユキはヒカルの顔をじっと見てから、ゆっくりと意識して笑顔を作った。


「練乳たっぷりのかき氷、おごってくれる?王子様」

「喜んで」


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