表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/124

決戦4


ヒカルは言われて、背にしていた壁を見た。


玉座の真後ろの壁の色が、他よりも薄く違和感を感じたのだ。

試しに叩いてみる。コッコッと、軽い音がした。


「オルド!」


闇の手たちが、手で探る。

意識しなければ、気付かないほどに細い隙間があるのに気付いた。


一人が、短剣の先端をぐっと差し込んだ。

それを差し込んだまま下へ降ろしていった。

ガキッと何かに剣が引っ掛かり、剣を引いてみた。


すると、ズズッと左に壁が移動し、隠されていた空間から、地下へと続く階段が見えた。

二人が見張りに立ち、他の者が、階段を駆け降りる。


「いたぞ!」


降りた所に、簡素な寝台が置かれ、その上にヘリアスの本当の身体が静かに横たわっていた。

確かに、グラディアで見た魔法使いだ。

オルドが乱暴にヘリアスを肩に担ぐ。


「撤収する!」


朝の光が、ゆっくりと王宮を照らし始める。

階段を駆け上がる。


「走れ!」


身を隠す暗さがない。

時間を掛けすぎた。


王宮の門まで行けば、ユキが待っている。

出くわした侍女が悲鳴を上げるが、無視して走り抜ける。気づくと後ろを5、6人の兵が追いかけてきている。


闇の手の一人が立ち止まる。


「先に行って下さい。」

「頼んだ!」


オルドは、止まりそうになるヒカルの腕を掴み、走った。

宮殿を抜けるて、前庭を走る。


「止まれ!!」

「っ!」


目の前に現れた兵に、ヒカルたちは剣を構えた。

後ろからも兵が追い付き囲まれた。

目の前に門が見えるのに。


周りをアールラニの兵たちが剣を突きつけて囲んでいる。

あと少し、あと少しだったのに!


「ヘリアス様を渡せ!」


オルドの喉元に剣を突きつけて、兵の一人が言う。

後ろから兵の行く手を塞いでいた闇の手の一人が、腕を後ろ手にされ連れてこられた。


「………」


オルドはゆっくりと担いでいたヘリアスを降ろした。

とっさにヒカルが、ヘリアスの首に剣をビタッと付けた。


「道を開けろ!」


いつもの、のんびりしたヒカルでは考えられない、強い口調で叫ぶと兵たちを睨み付けた。ぐっと兵達が躊躇するのを見るや、ヘリアスに剣を突きつけたままで、じりじりと門まで歩く。

その時だった。


ドオッ、と地鳴りがした。


「なんだ!」


オルドたちが、敏捷に上空を見上げた。

ユキが翔んできた。

ヘリアスが張っていた結界を、なんとか破ることができた。


「ユキ!」

「早く!」


無我夢中でヒカルは、差し出されたユキの手を掴んだ。

ヘリアスの身体と闇の手たち全員を連れて、ユキは瞬時に翔んだ。


「どうして結界を破ったんだい?!あともう少しで、門までたどり着いたのに!」

「だっ、だって、皆が囲まれてたから!」


ユキが翔びながら言った。


「結界を破るとヘリアスに気付かれるんじゃ…」


ふいにゴウッと音を立て、炎がユキたちをめがけて放たれた。


「きゃああ!」


落下する。

ユキが咄嗟に結界を張った。


地面に激突する。

ヒカルは目をギュッとつむった。


「うん…あれ?」


衝撃は全く無かった。

闇の手たちも、どうなったか理解できず、地面の土の感触に驚いていた。

無事か?


「ユ、キ……ユキ!?」


ヒカルは、はっとして伏せていた身体を起こした。


それは異様な光景だった。

父親の姿をしたヘリアスに、ユキは立ったまま首を絞められもがいていた。


「とう、さ…」


締め上げる手を、ユキが震えながら掴んだ。


「お前、こいつの娘だな」


首を締めた状態で、ヘリアスはユキを投げ飛ばした。


「やめろ!」


叫ぶヒカルを見て、ヘリアスが彼らに炎を放った。

地面に転んだユキが懸命に張った結界が、炎を弾く。


「ユキ!」


オルドとヒカルが、ほぼ同時に剣をヘリアスに向けて薙いだ。


「人間が!」


結界に阻まれ、剣がヘリアスに届かない。

もう一度、ヒカルたちに向けて、ヘリアスが炎を放とうとした。

倒れていたユキが、その背に風の刃を繰り出した。

ズバッと背中が斬れ、ヘリアスが振り向いた。

思わずしたことで、父親の身体を傷つけてしまい、ユキは自分で衝撃を受けた。


「あ…ごめん…父さん。」


涙がにじんだ。

わかっていたのに。

自分を殺そうとする父親の姿に、衝撃が大きかった。


「ちっ、この身体を見つけるとはな。本体を返してもらう。」


自分の本体をちらりと見て、再びユキに近づいた。

僅かにあとずさる彼女を冷たく見つめ、呟いた。


「感知の力か…まあいいか。勿体ないが、ここで殺しておくか。」

「やめ…」


怖い!

この人は違う!


父親に今だかつて感じたことの無い恐怖を感じて、ユキは震えた。


ぶっきらぼうで、無愛想な父さん。

それでも、生まれる私を取り上げた父さん。

いつもご飯を作ってくれた。

放任主義で、言葉や手は、あまり出さないほうだったが、本当に辛い時は何も言わず助けてくれた。


「この世で最も愛した女が産んだ、俺の子だ」と。


俺が絶対に守らねばならないものの、お前は一つだと言ってくれたのに…父さん。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ