裏をかく3
アールラニの王宮前。
ユキたちは、暗がりに身を潜めていた。
「殿下、なぜ付いてきたのです?」
闇の手の頭、オルドが困惑した顔でヒカルを見ている。
「僕だって、何か手伝いたいと思ったから…」
なんだか爪弾きにされたみたいなのは、嫌だった。
でも、少しだけ後悔。
まさか、こんな大変な手伝いだとは。
「足手まとい」
ユキにはっきり言われる。
「…言うね。でも、君は僕を守るんだろう。だったら、一緒に…」
「私、父みたいに器用じゃないから、ヘリアスの身体を奪うのか、あなたを守るのかどちらかしかできないかも…」
自信無さそうなユキに、ヒカルは首を傾げた。
「でも、君は魔法が使えるだろう?」
「私の魔法、それほど強くない。」
ヒカルは、不思議そうに聞いた。
「最高の魔法使いの娘なのに?」
「………そうね」
血を受け継ぐことで、魔法の力も受け継ぐはず。
でも、自分にそれほどの力があるとはユキは思っていない。
秀でているのは、感知の力ぐらいで。
リュカにも、魔法を習った時に言われた。
〈あなたは、自分にもっと自信を持つべきです〉
仮にも、あなたはあの二人の娘なのだから、と。
劣等感
それが、自分を縛って、余計に力を奮う自信を無くしている、のだろうか。
「殿下、剣は使えますね?」
オルドの声に我に帰る。
「僕は腕を買われて、城門の警備のバイトもしていたんだよ。」
ヒカルが腰の剣に手を添えた。
「よかった。教えた甲斐がありました。」
オルドの言葉に、ヒカルが、あっと声をあげ、彼の顔をまじまじと見た。
「ち、小さい頃、剣を教えてくれた近所のおじさん?」
ゆっくり頷き、オルドは感慨深げにヒカルを見た。
「あなたが、生まれた時からずっとあなたを見守ってきました。立派になられた…殿下。」
「そうだったのか…」
ずっと誰かに守られていたのか、僕が知らなかっただけで。
不思議な心持ちがした。
ユキは王宮を見た。
すっぽりと結界が覆っている。
魔法使いが侵入するのを防いでいる。
ヘリアスがアールラニから離れ、ユキ達の動きを悟られぬような距離になるまで機会を窺っていた。
まだ気付かれてはいない。
ヒカルが、闇の手たちから作戦を聞いている。
ユキはここで待機だ。
人間である彼らが、王宮に侵入する。
ユキは感知の力で、オルドにヘリアスの身体の位置を知らせる。
彼らが、身体を奪ってユキのいる所まで戻ってきたら、一気にグラディアまで翔ぶ。
「夜明けが近い。明るくなるまでに終わらせます」
闇の手の一人が、ユキに言った。
「ユキ、一人で大丈夫かい?」
ヒカルが聞いてくるのを、手をひらひらと振り急かす。
「気を付けて」
もし、彼らが危険な状況になったら、結界を破ってでも助けに行く。




