裏をかく
どうする?
ミヤコは指を唇に沿わせて、考える。
レオは必要だ。
アールラニの火気を使う武器に対抗するには、彼の冷気の魔法が欲しい。
「…映写機を3つとも盗られたのね?」
確かめる彼女に、ユキが不安そうに頷く。
逆に使われるかもしれない。
表情には出さないが、ミヤコの気持ちは、不安でちょっとした拍子に折れそうだ。
ルー、私、強くなんかないよ。
弱いのを虚勢を張って隠しているだけ
ルーがいないと…
沈みそうな気持ちに、ミヤコは自分の頬を叩いた。
違う。
魔法使いだけじゃない、戦っているのは。
「母さん?」
「ねえ、ユキ。この国は何の国?」
意味がわからず、娘が首を傾げる。
「この国は、人と魔法使いが共に生きる国よ。」
ミヤコはしなければいけないことに気づいた。
「母さん、また何かするの?」
ユキが聞いたが、ミヤコはまた考え込んでしまい、聞こえていないようだった。
「ユキ。」
リュカが翔んできた。
「リュカ…」
「レオのことは、取り合えず後です。」
リュカが、背後を見た。
彼の後ろから、三人の男と一人の女が前に出てきた。
「計画通りに動きなさい。この者たちを連れて行きなさい。」
四人が頭を垂れた。
ミヤコがユキの側に寄り、彼らを見た。
「彼らはローレン様直属の、『王の闇の手』です。」
「闇の手?」
ユキは知らない。
「24年前、ミヤコが魔法使いを否定する者たちに襲撃され、それを機に創設された陛下の一存で動く部隊です。」
ユキが、彼らを複雑に見る。
「もしかして、暗殺とかそういう仕事を…」
闇の手たちが、くすくすと笑った。
「まあ、否定はしませんが…普段は王族の護衛をしております。あとは、たまに密偵や裏工作…ああ、引かないでください、ユキ様。」
四人の中の女が笑って言った。
「ユキ。彼らは、ヒカルを生まれた時から今まで父さんと一緒にずっと護っていた人たちよ。大丈夫、信用できるわ。」
ミヤコが言った。
腰に剣を携え、皆鍛えた身体をしている。
「ユキをお願い。」
そう言うミヤコに、彼らが深く頷いて見せた。
「わかりました。みなさんよろしくお願いします 。」
ユキが遠慮がちにお辞儀をする。
「必ずやお守り致します。ルシウス様のご息女に怪我などさせたら、あの方に殺されますから。」
闇の手たちが冗談混じりに笑い、その意外に明るい雰囲気にユキは、少し安心した。
ヒカルは、王宮に待機の身だ。
いきなり平民だった彼が、この国の中枢にいるからといって、何か出来るわけではない。
護身用に剣をもらって、腕を組む。
目の前を行き交う人びと。
「手伝うこと…ないかな?」
じっとしているのは、好きではない。それに、ヒカルは元々ルルカもグラディアも好きなのだ。愛国心というわけではないが、危機に大人しくしていられない。
目の前を、ユキが通った。
ちらりとヒカルを見たが、黙って通りすぎた。
何人かの男女が、彼女の後ろに付き従っている。
ミヤコが、その更に後ろを不安そうに見送っている。
王宮内の少し広い場所でユキたちが止まった。
「もし、危なくなったらすぐに帰って来て、あなたまでいなくなったら…」
ミヤコが一瞬泣きそうな顔をした。
「大丈夫だって。私たち精鋭だから。」
この役を買って出たのはユキ本人の希望なのだ。
安心させようと母に笑いかけ、ユキが闇の手たちと翔ぼうとした。
バッ!とユキの肩をヒカルが掴んだ。
「待ってよ、ユキ!」
「あ、馬鹿!!」
言っても遅かった。
ユキは闇の手とヒカルと共に翔んでしまった。
「ヒ、ヒカル!ユキを護って!」
ミヤコが叫ぶのを耳にしながら、遥かに翔ぶ。
ヒカルがユキをそうっと見ると、睨む彼女と目があった。
「どこに行くの?」
「…アールラニ」
「え?」
むすっとして、ユキが怒鳴った。
「ヘリアスの本体の身体を奪うの!もう!知らずに付いてこないで!」




