ゲーム3
「ローレン様。」
リュカが声を掛けてきた。
「起きてる。」
ローレンが、寝台の上に身を起こして言った。
王宮ではない。
グラディアの結界の外。
国境に近い、原っぱに既に陣を構えている。
リュカがテントに入ってきた。
「作戦は成功したもようです。山道のルートをたどる軍は、血を流すことなく潰れました。」
「そうか。」
そう言ったローレンを見て、リュカが聞いた。
「作戦が成功した割に、浮かないお顔ですね?」
「いや…」
考え込んで、リュカを見る。
「上手く行きすぎだと思ってね。」
「ええ、確かに…」
「ミヤコの考えた作戦は、上手いこと戦果を挙げたが、アールラニは戦慣れしているはず。こんなにヘリアスの反撃もなく成功するのは、おかしい。」
「…はい」
ミヤコは賢い。
だが、戦をしたことがある訳ではない。
一人も死なせず、勝たせてみせると彼女は言ったが、それがどれだけ甘い考えかは、ローレンもリュカも知っている。
まして、彼女は冷静を装っていても、普段のミヤコではない。
夫を取り返すために相当な気を張っているのは明らかだ。
気が急いている。
そして、あまり周りを見る余裕がないはずだ。
それに…
「リュカ、一つ頼みがある。アールラニの逃亡した兵を何人か捕まえて来てくれ。なるべく階級の上の偉い奴を頼むよ。そいつらの心を読んで、知りたいことがあるんだ。」
「何ですか?」
「軍の総指揮を王がしないのは、なぜか?…こういう遠征は一番偉い者がするのではないのか?そもそもアールラニの書簡自体も、ヘリアスの個人的な要求が書かれていたに過ぎない。一国の書簡にしては、不自然だ。」
リュカが目を見開いて、ローレンを見た。
「なるほど…わかりました。至急探ります。」
ふうっとローレンがため息をついた。
「緊張なさってるのですか?」
彼を見て、リュカが少しだけ笑った。
「他国と戦うのは、初めての経験だからね…。私も、一人の人間さ。平静ではいられない。」
「ローレン様。」
リュカがひざまずく。
「ご安心を、私が必ずやあなたをお守り致します。」
ローレンは首を振った。
「いいや、だめだ。」
「陛下?」
王は真摯に、リュカを見据えて言った。
「もしもの時は、ヒカルとユキだけを守れ…」
「…………」
ゆっくりとリュカが応えるように、頭を垂れた。
急にリュカが、片方の耳を押さえた。
「なんだ?」
ローレンが聞く。
「ユキから、連絡が…」
リュカの顔が険しくなる。
「…わかりました。落ち着きなさい。すぐに戻りますから。」
耳から手を離し、王を見上げてリュカが言った。
「ローレン様、レオが捕まったようです。」




