表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/124

ゲーム2

「…ルー、ルシウス。」


微笑んだミヤコが、見上げて首に腕を絡ませてきた。

少しうつむくと、彼女の髪から、ふわりと優しい香りがした。

そっと彼女の背に手を回し、抱き締めた。

柔らかく暖かい身体。

愛しい温もり。


ダメだな、と思った。

彼女を抱き締めるために、この手はもう穢せない。

綺麗なミヤコが穢れないように。



赤ん坊のユキが泣く。


自分が取り上げたばかりの、産声をあげる娘を抱いて茫然とした。

小さくて…あまりに小さくて、手が震えた。

つん、と血の匂いがする娘の臍の緒を切り、産湯に入れた。

まさか、自分がこんなことをするとは誰が予想できた?


「ユキ…生まれてきてくれて、ありがとう。」


疲れた顔なのに、目を輝かせて、ミヤコが娘を見つめた。

タオルにくるんで、娘を彼女に抱かせてやった。


「ルー、ありがとう。」


ミヤコが、片手を伸ばし、自分の顔に触れた。


「ありがとう…」


涙ぐんで、ミヤコが微笑んだ。


「ミヤコ。」


彼女の手に手を重ねた。

それは、俺が言わねばならぬ言葉。


ミヤコ…


俺を見つけてくれた。

俺を救ってくれた。

俺を愛してくれた。

俺と、ずっと一緒にいると誓ってくれた。

俺の子を、産んでくれた。


「ルー、幸せ?」


ふふっ、と笑って、ミヤコが聞いた。

幸せ?

俺は幸せになっていいのか?

この俺が?


「ああ…」

「それなら、私も幸せ。」

「え?」

「あなたが幸せなら、私も幸せ。」


娘を抱いて微笑むミヤコが、眩しい。


ああ、なんて明るい光。

もう闇は見えない。


俺は幸せだから…


娘の頭を恐る恐る撫でた。

妻の頬に口づけた。


この光を絶対に穢してはいけない。守らねば。

俺がここにいるために…


**************

ぴくり、とヘリアスは目を開けた。


また何か、心理的な攻撃を受けたのだろう。

山のルートを通っていた軍は、もう使い物にならないようだ。

急に気配がばらばらになり、まとまりがなくなっている。

戦う前から尻尾を丸めて逃げるとは。


「所詮は囮…」


別にいい。


胸を押さえる。

眠りの中で、ルシウスの想いを感じていた。

じんわりと温かい想い。


「…愛する者がいるのは、難儀だな。だが、悪いな、ルシウス。」


額の髪を手でかき上げて、目を閉じた。


「俺は、この手を穢せるぞ。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ