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開戦5

「レオ君、やっぱり歌はいらなかったんじゃない?」


ミヤコが恥ずかしそうに言った。


同時刻、王宮でミヤコたちは同じ映像を見ていた。

ミヤコが発案し、レオの開発した映写機で、映像を投影する魔法の組み込まれた道具が、同時に三つの場所で彼女を上映していた。


「ミヤコさん、あなたが演出だと言ったんだよ。まず、闇夜で美女が歌を歌ってるのを見て、兵はうっとりと見とれるでしょ。でも、訳のわからない内に、今度は一転、脅しをかける。美人だけに、逆に恐ろしさが増したはずだよ。それに畏怖とかも感じたんじゃないかな。」


「レ、レオ君、そ、そんなに美人、美人って…ん、恐ろしさ?」


ミヤコが首を傾げている。


「へえ、すごいね。こんなことができるんだ。」


ヒカルが感心して、映像の道具を見ている。

おっ、とレオがヒカルに気づいて、じっと顔を見た。


「君が、ヒカル様だね。」

「はい。様はいらないです。」

「こっちも敬語は無しで。それから後で話があるんだけど。」

「はあ…」


ミヤコが何か言いたげに口を開きかけ、止めた。

自分が口出しすることじゃないことだと思い直した。

彼らは、大人だ。


「母さん!」


ユキと、リュカが早足でやって来た。


「やったわ、作戦成功よ!」


ユキの声に、ミヤコはほっと力を抜いた。

雷撃を仕込んできたリュカが、報告する。


「やはりアールラニの属国出身の兵は、逃げ出すものが多かったですね。特に山道を迂回する軍は、半数以上が逃亡しました。街道を通る軍からも、ぽろぽろと逃げ出しています。明日には更に軍の兵数を削ることができるでしょう。」


ユキが、ミヤコの肩に手を置いた。


「すごい、母さん。やったね。」


「脅しただけで、効果がこれほどあるとは思いませんでした。ミヤコ、どこから思い付いたのですか?」


ふふっ、と笑ってミヤコは答えた。


「私のいた世界で少し、そういう似た話を聞いたことがあったから。」


歴史は、年号を覚えるのは苦手だが、それ以外は好きなほうだ。

その中で、歴史上の名将と呼ばれた人物は、奇襲をして勝利を収めた例がたくさんある。

例えば、崖から兵を率いて騎乗したまま駆け下り、地理を利用して攻撃を仕掛け、敵を混乱させたり。


逃走のきっかけをあげただけだ。

それに、戦う意欲を削いだ。


「この後、どうしますか?」

「折角だから、俺の仕込みを最後までさせてよ。リュカ。」


レオが、にっと笑みを浮かべた。


「では、山道の軍は根絶やしにするわ。」


ミヤコが物騒な物言いをする。


「なんだか、みんな楽しんでない?」


ユキは、少し引いた。


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