開戦2
「まずは、こちらのルートの軍から相手をしますか?」
リュカが、山道を迂回するルートの軍を差す。
グラディアに接する次の国に入ってきたら、準備したものが役立つだろう。
「仮にも、隣国内で許可を得てすることだ。絶対に武力は使うな。」
ローレンが皆に言う。
隣国に、アールラニの軍が通るのを見逃すなら、グラディアがすることも見逃せと、強く要請してある。
絶対に武力衝突を起こさないことを条件に。
「陛下。」
ミヤコが、ローレンを見て冷静に言った。
「まずは、他にしないといけないことがあります。」
「なんだい?」
「まずは…」
口元に指を持っていき、頭の中で整理してから口にした。
「最初は鼓舞して、次にはったり…」
ローレンが愉快そうに笑った。
「さっき言っていたね。えっと、はったりの後が演出と演技で、その後が仕上げ、だったね?」
頷いてから、ミヤコはそっと手に手を重ねて、震えているのをごまかした。
王宮前の広場で大勢の兵の前に、グラディア王ローレンが姿を現した。
実戦経験の無い兵たちは、明らかに動揺している。
ざわつく様子が見てとれる。
「聞け!勇敢な我が兵士たちよ!」
ローレンの声が、空気を震わすぐらいの大音量で響いた。
びりびりと反響する。
レオ開発の魔法のマイクを使っているのだ。
驚いて、今までざわついていた兵士たちが、静かになった。
「今この国に、アールラニが不当な侵略を仕掛けてきている。あの国に侵略された国々がどうなるか、皆も知っているだろう。高い税を課せられ、土地や財産を搾取され、中には奴隷のように労働を強いられているという。抵抗する者は、容赦なく処刑されているとも聞く…」
さあっと兵の間に張りつめた空気が流れた。
「皆は、この国をそんな国にしたいか?!」
厳しい顔で、ローレンが見回す。
「家族を、大切な者を、そんな目に遭わせたいか?お前たちに護りたい者があるなら、今こそ勇気を奮い立たせろ!」
背後でリュカが、兵を見ている。
ローレンの言葉に、彼らの動揺が治まり、少しづつ顔つきが変わっていくのを見てとった。
「かつてグラディアとルルカは、敵として憎みあったこともあった。だが、今は違う。我が国は一つの国として、結束してこの国を護る。兵士たちよ、誇りを持て。我々は自らの愛する国を、家族を護るために戦うのだ!」
誰かが叫んだ。
「ローレン王に栄光あれ!」
「グラディアにルルカに栄光あれ!」
「勝利を!」
その声に、最初はつられるように兵たちが同じ言葉を唱えた。
それが唱える内に、波となり、熱気を伴って広場に響き渡った。
「勝利を!」
「勝利を!!」
ローレンが声に応えて、高らかに自らの剣を掲げた。
「…兵士の士気を鼓舞すること、まあ上々でしょう?ミヤコ。」
リュカが後ろを見て言った。
固い表情のまま、髪をなびかせミヤコが頷いた。
脚本を用意したのはリュカ。
私達は、戦いでの役を演じている。
勝つためなら、何だって演じる。




