開戦前夜
オマエガ、ドコニイテモ、アイシテル…
紫水晶を、銀細工で囲ったイヤリング。
いつも見つめていた…
お前がいない世界…これだけが、俺とお前を繋ぐ欠片だった。
かつては…
イヤリングを揺らし、ミヤコが微笑む。
よく似合ってる。
手を差し出すと、俺の胸に飛び込んで…
ユメノヨウダ、と言っていた。
アナタトワタシ…フタリデイキテイケル
ミヤコ…泣くな
お前また泣いてるだろ?
傷つくな…
俺に傷つけられるな…
俺の手が触れないところで泣くな
この世界の全てを捨てても、お前だけがいればいい。
ああ、餓えて死にそうだ
お前に触れられない
お前の笑顔を見られない
泣くな…
俺も辛いから…胸が掻きむしられるように痛むから…
イヤリング…あれを…
ミヤコ…
ずっと俺だけのミヤコ
「…コ、ミヤコ…」
自分の声に驚いて、ヘリアスは目を覚ました。
「…ぐっ」
荒い呼吸をしながら、額の汗を拭った。
蒸し暑さだけのせいではない。じっとりと汗をかいている。
だるさを感じる手で、心臓の辺りを触った。
胸が締め付けられるようだった。
「ちっ…変な夢見せやがって…」
ルシウスの感情に、引き摺られてきている。
乗っ取りの面倒なところだ。
胸が疼いて痛いのに、どこかでそれをいつまでも味わいたいと、心地好いと感じている。
「なんだ、これ?」
まるで、自分の感情のように錯覚するほど強い想いと……強い焦燥感。
あの女が差し出し、俺が放り捨てた、あんな物が無性に気にかかる。
「くそっ…なんなんだ!」
一度頭をよぎると、離れなくなった。
泣いていた…
傷ついて、悲しんで…あんなに…
「俺は…」
あんなに!
ふっ、とミヤコの涙を流す顔が浮かんだ。
「…く、そっ」
ヘリアスは、寝台から姿を消した。
闇の中を探す。
「…どこだ?」
手を地に這わせ、取りつかれたように。
無機質なちっぽけな物質など、気配なんか感じない。視覚も頼りにならない中で手探りで探している。
どの位の時間探していたのか、わからない。諦めるなんて思いもしない。
指に探していた物が、やっと触れた。
そっと手のひらに載せて確認する。
「…あった。」
ミヤコのイヤリング。
それを手で包んで、自らの唇に押し当てた。
手にしたことに安心して、目を閉じた。
そして、愕然として目を開けた。
「何してんだ…俺は。」
わからない。
何だ、この苦しさは?




