新たな幕開け2
Γね、頼むよ。」
Γ………何で私が。」
さっきからお願いという名目の命令をされている。冷たい目を向けると、
Γその目、ルシウスに睨まれた時とそっくり…」
Γもう知りません。」
父親に似てると言われて喜ぶと思ってるの?
つん、として背を向けると王様は下手に出た。
Γ君の感知の魔法は抜きん出ている。だから息子を捜して来て欲しいんだ。家は引っ越していてね、国外には出てないはずなんだけど…」
Γ父も母も知ってたんですね?」
Γそうだよ。」
何か仕組まれてる。自分に頼まなくても両親や他の者でも良い依頼だ。
Γ……陛下。」
Γ…む、息子に会いたいんだ。」
Γ……わかりましたよ。」
自分でもきつく断れない甘さは自覚している。
承諾した途端、王様はうっすらと笑っていた。
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Γはあ…」
今、ユキは旧ルルカ国王都にいる。グラディアとルルカが一緒の国になり久しい。土地の名称は残っているが、政治的機能はグラディア王宮に移されていた。
ユキは捜し人を今まで知らなかった。だが、感知の魔法が得意な彼女は、王が持っていた息子のへその緒を頼りに気配を覚え、この地に翔んで来た。
全く陛下も陛下だ。まさかの隠し子とは呆れた。
街中を歩きながら、ユキは溜め息をついた。なまじ両親が永遠の恋人状態なのを見て育ったもので、こういう話題は嫌悪しか湧かない。
賑わう店を横目に歩いていたユキは、ふと歩みを止めた。目標の気配が近い。既に家は見当は付けていたので、そこで待とうかと思っていたのだが。
近付く気配は後ろから。早足でこちらに向かって来ている。
Γ……どうしよ。」
何て声かけようか。人通りの多いここで事情は話せない。ユキがそう考えていたら向こうから声を掛けてきた。
Γ君、一人?よかったら僕とお茶でもどう?」
ナンパ。父親が父親なら子も子か。
肩を叩かれて、目標の青年を目に捉えた。
薄い金の髪がさらっと額にかかり、目は新緑の色。愛想のある笑顔で青年はユキを見ている。だが彼が結構緊張しているのが伝わってきて、ユキは興味を覚えた。
Γわあ、嬉しいです。実は私、この街初めて来たので…色々案内を頼みたいんです。」
Γいいよ!ぜひ!」
王様によく似てる。
ユキは彼を観察するように眺めた。