裏切りと誓い4
Γあ…」
投げ捨てられた方向を目で追うミヤコを、ヘリアスが嗤う。
「俺を試してるのか?あれを持っていたら、ルシウスが反応するとでも?甘いな!」
イヤリングを探しに行きたい気持ちを堪え、彼女はヘリアスを見上げた。
Γ片方は、私がつけてるわ。」
震える声で、ミヤコが続けた。
こちらの反応を窺う彼女に、ヘリアスは面倒な表情をした。
「記憶も乗っ取ったって言っただろ。あんな想いの染み付いた物…」
言葉を途切らせ、無意識に胸をさする。
「………まあいい。」
自分の本体の身体を肩に担ぎ、ヘリアスがミヤコを見た。
「哀れだな。あんな夫のために必死になって。何が良いんだか………。お前が俺のものになったら、同じように必死になって俺を愛してみろよな。」
そう言い残して、翔び去った。
力なく立ち竦んでいたミヤコが、糸が切れたように地面に手を着いた。
「ミヤコ。」
拘束を解かれたリュカが声をかけた。
座り込んだミヤコは、両手で地面を引っ掻いた。爪に土が入るのも厭わなかった。
「悔しい…悔しいわ!」
彼の身体を、あの男から取り返せなかった。
彼と自分の大事な記憶も想いも土足で踏みにじられた。
ヘリアスは、ミヤコを利用価値のある道具として見下していた。
何も、できなかった。
眩暈がするような、激しい憤りが胸を駆け巡る。
地面に突っ伏して、呻くように泣いた。
触れる距離にルーの身体はあったのに、はるかに遠い所に彼はいる。
今すぐ、抱き締めて欲しいのに…
恋しさが募った。
「ルー…ル…」
心をボロボロにして、咽び泣くミヤコを、リュカは静かに見ていた。
卑屈なほどに食い下がった彼女は、痛々しかった。
だが…
「ミヤコ、帰りましょう。戦争が始まる。」
呼び掛けると、ミヤコが涙を拭いてよろよろと立ち上がった。
「…………絶対に勝ってやる。」
はっきりと宣言した彼女に、リュカは口端を上げた。
強い光を瞳にたたえて、何度も苦境から立ち上がる彼女を見てきた。
彼女が、まだ人であった時から。
魔法使いの彼女なら、きっと更に強い。
ミヤコは、ルシウスの為なら、死ぬ気でどんなことでもするだろう。
何せ自ら、生まれ育った世界を捨てたのだから。
彼を愛するために。
その強さは、ルシウスが敬意を表し、ひれ伏し、光に例えたものだ。
「勝ちますよ、ミヤコ。あなたがいるのだから。」
リュカにそう言われ、ミヤコは微かに、挑戦的に笑った。




