裏切りと誓い
Γははっ!あの女が持つ力、あれをもらえば俺が最高の魔法使いになれるんだろ?楽しみだな、俺がたくさん可愛がってやって、俺に溺れてもらって、いずれ身も心も力も命も、俺に捧げてもらうさ。」
煽るように下卑た笑いをする男に、怒りで言葉がでない。
涙ぐんでいたミヤコを思い出し、握りしめた手がわなわなと微かに震えた。
無言で近づき、ヘリアスをもう一度殴った。
倒れたところを、押さえ付けて更に殴った。
「ミヤコは、俺の妻だ。」
口端を上げて、笑い続ける男の顔を、更に殴る。
「俺が…本当に愛した、たった一人の女だ。愚弄するな!」
呼吸を乱し、ルシウスはヘリアスの軍服のような襟を締め上げた。
「いいね…怒れよ、俺を憎め…その分もっと苦しめ…」
鼻血を拭って、ヘリアスが見上げた。
「ミヤコは、俺だけのものだ。ずっと、命が尽きる瞬間まで共にいると誓った、俺の半身だ!」
「は……」
ヘリアスが驚いて、ルシウスの顔を見た。
切ない表情のままに、彼は言った。
「ミヤコが、貴様のものになることは絶対にない。あいつが俺以外に心を移すことはない。あいつは、俺を幸せにすると誓ったのだから……だから貴様に力を与えることは不可能だ、決して!」
「…ははっ」
ヘリアスがにっと笑い、ルシウスの目を射抜くように見た。
「なあ、もし俺がお前の姿だったら、あの女どうするだろうな?」
Γ何だと?」
がっとルシウスの拳を掴み、僅かに身体を起こしたヘリアスは、至近距離からルシウスの目を紅い瞳で見た。
ふいに意識がふわりと薄らぐ。
霞む視界の先で、ヘリアスが笑う。
「…俺のもう一つの力、『乗っ取り』なんだ…」
その言葉がこだまのように、頭の中に響いた。




