魔法使いの使者10
Γあの人……ヘリアスに手を掴まれた時に分かったことがあるの。彼は他の魔法使いを殺して、とても特殊な力を手に入れてる。」
「消えるの力以外に持ってるけど、秘密だって言ってたわね?何?」
ミヤコが、兵士に聞こえないように、ユキに耳打ちする。
Γそれって…!」
「ルーが心配よ、行ってくるわ。」
そう言うなりミヤコは、リュカの結界を破り王宮から翔んだ。
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リュカが追いかけた時は、ルシウスとヘリアスは闘いの最中だった。
「なあ、ルシウス!仲間だった俺を殺した時、どんな気持ちだった?!」
ルシウスは、無言で炎を叩きつけ、結界ごとヘリアスを炙る。
そこをリュカが雷撃を放った。
「…ってーな!」
手からぽたぽたと血を垂らし、目元の血をヘリアスが拭った。
「ここで死ね!!」
怒るルシウスの火を跳ね返し、ヘリアスが笑う。
「どうした?お前弱くなりやがって…俺を殺した時の、子どもだったお前の方が強かったぜ!」
「…っ」
ルシウスは、横腹を押さえて荒く息をした。
火傷を負っている。ヘリアスはルシウスと似た炎の魔法を得意としていた。
「ははっ!ルシウス、まさかと思ったが、やっぱりあの女に半分力をやったのか?!残虐にリリアとすべての仲間を殺しまくったお前が!」
愉快そうに腹を抱えて笑うのを、ルシウスが睨みつけ拘束を放つ。
「無駄だね!」
ヘリアスが跳ね返す。
更に重ねて拘束をルシウスにぶつける。
「くっ」
動きが取れず、地面に落下したルシウスに、続けてヘリアスが炎の塊を投げつける。
その隙にリュカが、ヘリアスの背後をとった。
ドンッと爆発が起こり、ヘリアスが血を散らせて吹っ飛んだ。
「っ!邪魔すんじゃねぇ!」
ヘリアスがリュカを拘束した。
「…ちっ、手の内を見られないよう、力を出し惜しみしすぎた。」
苛立って、拘束して動けないリュカに手をかざす。
「消す。」
リュカの結界が消える。
一時的に魔法が消失し、力が使えなくなる。
「こ、これは?」
驚くリュカの前に翔び、足で蹴って気絶させたヘリアスは、地面をえぐって倒れるルシウスに近付く。
Γく…そっ」
拘束の力を弾こうと、抵抗する彼の腹を足で押さえる。
「なあ、少し話をしようじゃないか…」
身体の広範囲に火傷を負い、ルシウスが呻いた。
「なあ、俺がリリアの洗脳を解いたのは、この消す力のお陰だったんだ。」
「…ぐっ」
ルシウスの回復途中の傷を、ヘリアスが足でぐりぐりとえぐる。
「リリアをお前が殺した後で、わずかに自由になった意識で、洗脳を消したんだ。なのに、お前ときたら…俺が正気でも殺そうとしやがって!」
「貴様が…先に、俺を殺そうとしただろうが!」
にっとヘリアスが笑う。
「だって、お前の洗脳の力奪いたかったからな。」
「ヘリアス!」
拘束を破って炎を放つルシウスに、ヘリアスが消すの力を使った。
力が無効化される。
「俺は、生きている気配をお前から消した。俺が死んだと思ったお前が、泣きながら翔び去るまで、じっと見ていた。」
「俺に復讐したいのか?」
ぐぐっと起き上がろうとするルシウスを、ヘリアスが蹴る。
「ぐっ!」
「ああ、それも目的だ。」
いたぶるように、ヘリアスがルシウスに小声で言った。
「お前に復讐できて、尚且つ、俺が最高の魔法使いになるには、どうしたらいいと思う?」
「な、に?」
「俺がアールラニの魔法使いになったのは、お前がグラディアの魔法使いをやってるって聞いたからだ。軍事力に優れたあの国で、お前の守る国をめちゃくちゃにしてやりたくてな。これはな、ゲームなんだよ。」
「…国など…」
「俺の恨みのこもった仕返しの一つだと思えよ。それに、さっきも王の前で言ったが、俺は魔法使いの力を全て手に入れたいのさ。」
「…く、そっ」
消えるの力が、まだ効力を発揮して、魔法が使えない。
「なあ、お前がこの世で一番大切にしているもの、俺は知っているぞ。最初は娘にしようかと思ったが、気が変わった。プライドの高いお前が、力と命を分け与えるほどに一緒にいたい女…残虐で冷酷なお前を腑抜けにしてしまったあの女、ミヤコをいただくことにする。そうしたら、お前死ぬほど苦しんでくれるか?」
ヘリアスの狂気の瞳を、唇を噛み締めたルシウスは、殺気を込めて睨み続けた。
「貴様…!!」
「なあ、お前ほどの男が、あんな女に骨抜きにされやがって、何が良かったんだ?美人な顔か?気持ち良さそうなそそる体か?捩じ伏せたくなるような気の強さか?それとも違う世界の人間だったから物珍しかったか?」
消えるの力が一定時間で解け、至近距離で炎を放つ。
「ちっ!」
ヘリアスが顔に火傷を負い、傷を手で押さえる。
ルーが拳で、彼を殴った。
「って!」
「二度と喋れないように、顔を潰す!」
冷たい表情のルシウスに、顔に手を当てたまま、ヘリアスが笑った。
「いいね。お前がそれほど本気になる女、俺も抱いてみたい。」
「殺す!」
火がヘリアスを炙る。
片手を上げて、それを弾くと彼はにやにやしながら、ルシウスを見た。




