解放
「あの男を使いたい」
ローレンが事も無げに言った。
あからさまに不機嫌になり、ルシウスは王を睨んだ。
「そう怒らないでおくれよ。まあ、最初は君たち魔法使いの誰かに、彼を葬ってもらって力を頂く…なんてことは、ちょっぴり思ったりしたけれど基本非人道的行いは、この国では禁止だからね。私に仕えてもらえたらいいな、と考えてるんだ」
「欲深い奴だ」
気に入らない。当然だ、奴が何をしたと思ってんだ。この王は、何でもかんでも!
ローレンは書類に印を押し、隅にまとめた。
「戦後処理をしていて気付いたのだが、あの男、ヘリアスはアールラニでもそれなりに人々からの支持を受けていた。王家の者を抹殺したにせよだ」
一時は、軍神とまで言われたのだ。
その統率力や決断力は無視できない。
「彼にアールラニとの交渉役を任せたいのだが…
向こうの国だって、知らない人間より、内情を知る者の方が気心が知れるだろう」
「馬鹿げてる」
ルシウスは、不快さを露にした。
「そもそも奴が、人に仕えるような男か?アールラニの国民だって、奴にだまされていたんだ。歓迎されるわけないだろう」
「だから君に頼むんだよ」
「はあ?」
アホか?と見下す態度を無視して、さらりとローレンが言った。
「君は小細工が得意だろう?例えば、人の考えを違う考えに置き換えたりとか…」
「俺に、洗脳をしろと?都合よく?」
簡単に言う…
肘をついて両手を組み合わせて、ローレンが言う。
「洗脳ついでに、彼の恋を終わらせてあげたらいい」
「…………それは試した。だが、奴と力が拮抗している俺では、洗脳できない」
「君ではね。でも、君と君の妻では?」
忘れていた…
「ああ、そうだった…」
しばらく使うことがなかった方法を思い出した。




