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光へ2

帰ってきた。春の匂い、暖かな夜。


目を開けると、自分が夫を下敷きにして倒れているのに気づいた。

腕の中にマナを抱いていて慌てて見ると、すやすやと眠っている。

良かった、潰れてはいない。


「こいつは凄い…」


ミヤコの耳元で、ルシウスが感心して囁く。


「まさか、俺が生きている内に、最高の魔法使いとなる奴が現れるとは…しかも俺の娘だとは」


ミヤコが片手をついて起き上がろうとするのを、ルシウスがしっかり抱き締めて離さない。


「ちょ…マナ潰れる」

「ミヤコ、俺たちはいろんな意味で歴史に名を残す」


ほっとして嬉しすぎて、加えて驚きでルシウスは周りが見えていないようだ。


「マ、マナが…」


ようやく身を起こすと、ミヤコを後ろから抱き締めた。


「ミヤコ、お前ほどの女はいない」

「ひゃあ!」


首筋を吸われた。


そうか、そんなにすごいことなのか。ミヤコはルシウスの驚きようで理解した。


「母さん!わわっ、赤ちゃん!」


気配に気付いたらしいユキが嬉しそうに飛び付いてきた。


「ユキ!」


ミヤコが腕を広げたが、ユキは無視してひょいっとマナを抱き上げた。


「きゃあー、かわゆい!名前は?!」

「マ、マナ」

「マナちゃん!妹!はい、起きてー、お姉ちゃんですよぉー」


あやしながら、ユキはマナを連れて行ってしまった。


「…妹しか目に入ってないな」


ルシウスが、呆れたようにぽつりと呟いた。


「…淋しい」


ミヤコが悲しげに言ってルシウスに抱きついた。

ユキの代わりに。


王宮の庭の辺りから声がする。

きゃあきゃあと騒がしい宮殿の一画に行くと、マナを囲んで人々が見ている。


「かわいい!」

「まだ小さい!」


侍女たちとユキが騒いでる。


「…ルー、私忘れられてる」


茫然とミヤコが見ていると、ルシウスがにやにやしながら彼女を引き寄せた。


「俺が覚えていれば、それでいい。ミヤコ、マナを置いて家に帰ろう。二人きりで…」

「あ、ミヤコ様」


ヒカルが気づいて近づいた。


「良かった!帰って来られて。お祝いに夕食を用意してもらったんです。ゆっくりしてって下さい!」


そう言って強引に案内するので付いていった。

邪魔をするな…とルシウスがぶつぶつ言っているが。


「大変だったんですよ。あなたがいない間、ルシウス様は魂抜けてたし…」


ガッとヒカルの襟首をルーが掴む。


「黙れ」

「ぼ、僕人間なので…」


ふふ、とミヤコは笑った。


「私も、そうだった。辛くて半分心が死んでた。とても淋しかった」


そう正直に言ったら、ぎゅっとルシウスに無言で抱きつかれた。

彼が甘えてる。それが嬉しかった。


「召喚魔法、無事成功しましたね」


前から来たリュカが、ミヤコを見て言った。

リュカの後ろに手枷を付けたヘリアスがいるのに気づき、ミヤコはたじろいだ。


ルシウスに抱き締められたままのミヤコを、ヘリアスがちらっと見て、直ぐに目を逸らした。


「…お前が帰って来れなかったのは、こいつのせいだ」


ルシウスが見せつけるようにミヤコを抱いて、ヘリアスを睨んだ。


「え?」

「こいつが道を消したせいだ」

「でも、あなたが戻って来られたのは、ヘリアスの召喚魔法のおかげですよ」


リュカが言った。

ミヤコは少し黙ってから、目を逸らすヘリアスを見た。


「帰って来られたから、十分よ。ありがとう、ヘリアス」


微笑むミヤコを、驚いたヘリアスが見つめて、そのままぼうっとしている。

ムカッとして、ルシウスは彼女の頬に口づけした。


「きゃ!」

「色気を振り撒くんじゃない。しかも何で簡単に許して礼まで言ってんだ!」


ん?ときょとんとするミヤコの腕を引っ張り、立ち去ろうとする。


「あ、待て!」


我に返ったヘリアスが叫んだ。


「あの映像の続きはどうなったんだー!?」


歌の所だけだと、念を押したのに!

舌打ちして、ルシウスが知らんぷりするヒカルを殺しそうに睨んだ。



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