新たな幕開け
どうしても抑えられず…書いてしまいました。
若葉眩しい春。
開け放たれた窓から、そよそよと爽やかな風が入り込みカーテンを膨らませて戯れているようだ。
その小さな部屋のベッドの上には、つい今しがた産まれた男の赤ん坊が布にくるまれて母親となった女性に抱かれていた。
Γ赤ちゃんは元気そう。あなたは眩暈とか無い?後腹は辛いだろうから治癒を掛けとくね。」
そう言って傍らで彼女の産後のお腹に手をかざす一人の女性。周りにはお産の片付けをする数人の女性がいる。
Γはい、ありがとうございます。ミヤコ様。」
子を抱く女性は、疲れは滲むが満ち足りた表情をしていた。それを見て、ミヤコも微笑む。
そこへ扉をノックするのも忘れて飛び込んできた青年が、ベッドに横たわる女性の名を呼び、その手を握った。
Γ陛下。」
Γすまない、お産に間に合わなかった。」
汗を掻いて荒い息をして、かなり急いで来たのは確かなようだ。扉の辺りで、こちらを見ているリュカに気付き、どうやら彼に頼んで正に翔んで来たのだろう。
Γ男の子よ、ロー…陛下。」
Γそう…そうか。」
ミヤコは王の喜ぶ表情を、複雑な気持ちで見つめたが、入り込む立場で無いと思い、部屋を去ろうとした。留守番をしている娘の顔が見たくなった。
Γ待って、ミヤコ様。」
Γえ?」
女性に呼び止められ、立ち止まる。
Γどうかこの子の名付け親になってはいただけないでしょうか?」
Γえ、いいの?私で?」
いいのだろうか?この赤ん坊の立場は、将来この国に深く関わることになるのに。
Γ……私からも頼むよ、ミヤコ。」
Γローレン」
王である青年が頷く。
Γ偉大な最高の魔法使いに名を付けてもらえば、箔が付くってもんだろう?」
上手いこと言って…
名前を付けたりしたら、情が湧かないはずがない。そうすれば、この赤ん坊を守らざるをえない。私も、私の望みを叶えてしまう夫も。
Γ二人がいいなら。」
赤ん坊の顔を見つめて考える。この世界には無い響きがいいな。私の元いた世界で…そうね…
窓から注がれる、朝の優しい陽射しを受けた赤ん坊。
Γ……ヒカル」
赤ん坊の頬を、そっと撫でる。
Γあなたは、ヒカル。いつも光に照らされていますように。」
これは続編です。前の作品をご覧になってからお読み下さい。
何か無性に書きたくて…
今執筆中の『狂愛…』書いてからにしようと思っていましたが、欲求に勝てず失礼します。ゆっくり書かせていただきます。