第六話「あらい曰く、仲が良いらしい」
「ニャーン」
そう声がしたのは通学路から学校に向かう最中の事だった。太陽の日差しがまぶしく、目がチカチカする。今、布団があれば即座に熟睡できることを保証しよう。
僕はその声がした瞬間に上の木に目線を向けた。目線の先には猫川の姿があった。今回は白色のようだ。
見つめた瞬間、目線があってしまった。猫川の顔が次第に真っ赤になっていく。
「キャッー。お、お前、またニャンのか。懲りないやつだニャン」
そう言い残し、僕の顔をひっかいた。見事なまでの猫のひっかき傷が僕の顔についた。
「……。お前もな。猫娘」
僕は、あいつと気が合いそうだ。そう僕は眉間にしわを寄らし、いつの間にか肩に力が入ってしまっていた。
教室に入ると、目の前に御手洗アライが居た。
「おはよう。……。やっぱり君らって仲がいいのかい。一緒に登校するだなんて」
御手洗アライが僕に言った。その言葉から僕は怒りを感じそうだ。
「そんなことないだろう。どこが仲がいいんだよ」
「そうだニャン。こいつと仲は良いだニャンて思いたくにゃいニャン」
僕と猫川が同時に言った。こいつ狙っているのだろうか。
「やっぱり仲が良いね。息ぴったりだ」
御手洗アライはウインクを僕と猫川に向けた。
「「仲良くなんてない!!」」
ひと通りあったが、僕は学校から指定されている席に座った。普通の木の椅子と机だ。幸運にも窓際で、前から4列目のところだった。春の陽気と日差しで寝てしまいそうだ。
ところで猫川はなんなんだろうか。こいつは、僕をおちょくっているだけなのだろうか。あの耳と言い、毛並みと言い、素晴らしいのは認めるが、ちょっとばかりおいたが過ぎるぜ。
入学式の時、教室でパンツ覗き魔発言と言い、あの猫娘はこの教室から僕を追い出したいのか。僕は自然と拳を作り、ぎゅっと握ってしまった。
しかしながら、毛並みがつやつやで綺麗な奴だな。
「くそ、撫でまわしたい」
そうボソッと誰も聞こえないように言ったのだが、猫川は顔を赤くして、こっちを向いて睨んでいた。
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学校の校内放送から、学校終了の予冷が鳴ると同時に、アナウンスがあった。
『部活動紹介が1週間後にあります。再度、担当者は資料を提出してください』
「部活か。いったいこの学校にはどんな部活があるのだろうな」
僕は肘を机に置いて、放送を聞いていた。そこまでは深くは関心はないのだが。
「ようやく終わったか。授業も。ああ、今日は何もないし帰るか」
そう僕は独り言のようにつぶやいた瞬間、猫川は、
「グッバイニャン」
と教室全体に聞こえるように言い残して、教室を早々と出て行った。
「あいつ、何か用事でもあるのだろうか。まあ関係ないか。僕も帰ろう」
僕は机に引っ掛けていた鞄を手に取り、教室を出た。御手洗あらいに携帯を取られる前に。
御手洗あらいがきょろきょろとしていたのは無視をして、僕の危害が出る前に学校を出た。
これ以上、携帯が犠牲になってたまるか。
教室を出て、廊下を歩いていると、黒髪のロングヘアーのロリっ子を見つけた。頭の上に耳っぽいものがある。影のところで校庭の桜の木をずっと眺めていた。
なにか考え事でもしているのだろうか。パッと見、文学少女だ。おとなし目な感じで寡黙な少女だろう。
「確か、こいつは同じクラスの四十崎あおい、か。何やっているのだろうか。あんまり喋ったことないし、話しかけるのもな」
僕は話しかけるかどうか躊躇していたら、すでに彼女は居なくなっていた。