第四話「校長室・上」
僕は校内放送を聞いて、早々に停学を言い渡されるのではないかと冷や冷やしながら廊下を歩いている。春の陽気と日差しが窓から照らされながら、快適で眠くなる気温だ。僕にとって緊張感でいっぱいなのだが、次第に、あくびが出てしまう。
「なんで校長室が3階にあるんだよ」僕のパンツが汗をかいてきているのは、春の温かさだけが原因ではなさそうだ。
僕は、3階の校長室まで来た。そこには他の教室とは違い高級感が出ていた。まずプレートが金だった。それに扉の取っ手がダイヤで出来ている。これを見て、僕はさすが私立と感じてしまった。不覚にも、他の高校の校長も成金主義者が多いのかとも思ってしまった。
僕は、その高級感のある扉をノックした。すると一人の声がする。それは声が低く、なぜか声だけで威圧感を感じるほどだった。
「ゴホン、入りたまえ」
もしかしたら、怒っているのか?まさか、本当に、御手洗を殴ったことがバレたのか。愛護団体に突き出されるのか?僕は次第におでこから脂汗が出てきていた。
ここで突っ立て居ても、らちが明かないので、ノックを3回して、校長室に入った。
「失礼します。申し訳ございませんでした」僕は校長室に入るやいなや、早々に土下座を繰り出した。ジャンプしてからの土下座だった。我ながら見事な土下座だったと思う。両足のすねが痛い。高くジャンプしすぎたみたいだ。
「かか、お前様は何をやっておるのじゃ」さっきまでの低い声はそこにはなく、さっき放送で流れていたキーの高い女の子の声だった。
僕は、顔を上げて校長室を見渡した。窓の奥、高級そうな机と革の椅子があり、そこに座っていたのは、大柄の男ではなく、10歳ぐらいだろうか、小柄な女の子が机に肘をついて座っていた。服装は着物を着ていたが、どことなく日本人ぽくはなく、青い瞳をしていた。
金色のロングヘアーで毛先がピンク、顔つきも整っていて綺麗な和風好きな外国人少女のようだった。まるで人々を魅了するような女の子。そう感じ取ってしまった。ただそこにいる女の子が、普通の人間ではないってことは一目見て分かってしまったのだ。
「早く、ドアを閉めたまえ、姿がバレるであろうが」その女の子は腕組みをしながら、顔のあごをあげ、ニヤリと僕に微笑んだ。まるで天使のような悪魔の笑みのように。