第一話「怪奇現象……なのか?」
桜が舞う中、見渡すと女子高校生のセーラー服が輝かしい。僕は公園のベンチで横眼で見ていた。だってそうだろう。よっぽどのイケメンでなければ、直でまじまじと見ていれば通報もの確定だしな。
僕は、ため息を一つ吐いた。そして春の陽気にまぶたが落ちてくる。僕は何気なしに上を見た。後ろにある大きな木から桜が散る姿はいつもなく幻想的だった。すると、気まぐれで見えた僕の目線はなぜか、さくら色のイチゴ柄のパンツを捉えてしまった。
「ん?なんでサービスシーンが僕の目線の上に?」
僕は朝のテレビでやっていた占いを思い出す。確かラッキーアイテムはピンク色だったかな。右手の拳を見ると知らぬ間にガッツポーズをしていた。
上の木の上に居た女性が僕に気付いたのか、上から落ちて来ようとする仕草をしている。ちょっとまて、ここの木、結構高さがあるぞ。
「にゃあに見てるのにゃー」
その女性は、南丘学園指定のセーラー服を着ている、なかなかスリムな身体の持ち主だった。ただし、普通の高校生とは少しばかり違っていた。短髪の銀髪の上に猫耳があったのだ。
これは怪奇現象なのか、僕の身に何か起こったのか。僕自身、不可思議なことに頭が付いてこない。そして、僕はその猫っぽい女性の問いに無言になる。
「…………」
「あなたあたしのパンツみてたでしょ。分かっとるにゃーよ」
その女性は木から降りてきて、僕の目の前に着地した。それは猫のような見事な着地だった。本当に人間なのだろうかとみていて不思議になる。
「み、みてねーよ。大体、木の上でパンツ丸出しで上で寝ているほうが悪いだろ」
僕はただぬ疑いをかけられたことに歯を食いしばった。見せつけるほうが悪い。そして僕は続ける。
「それに見たくもないものを見せられて、こっちが不快な気分だよ。この疑われて気分を害す前の愉快な気持ちを返してよ。ねえ、ねえ、ねえ」
その時の僕の顔は誰が見ても引いていただろう。正直なところ、ずっと見ていた僕が悪いのは分かっている。だけど、こんな入学式当日にパンツを見て警察にお世話なんて、恥ずかしくて目も当てられなくなる。
若干、脅迫じみた感じで、腕組をしながら、その猫っぽい女性に向かって言った。
その瞬間だった、瞬きをしながら開けた目には彼女の手が映った。手から長く生えたとげとげしい爪が。
「ぎゃ_______」
僕の顔が右方向から左方向に下に行くように沿って、3つの傷がつけられた。
まさか、引っかかれるとは思っていなかった。僕は、下にうずくまって顔の傷を押さえた。
「あ、あなたが悪いんにゃからね。あにゃたが」
そう女性は言うと、風のように去っていった。
僕は、春の桜が舞いながら吹く春一番に、胸をときめかすことはなく、手で顔の痛みにこらえながら入学式がある高校に向かった。
「まるで、猫じゃねーか。チクショウ。覚えてやがれ」