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しりぬけせいじん

作者: 曲尾 仁庵

しりぬけせいじんは うちゅうじん

きょうも ちきゅうの あちこちで

せかいを せいふく するために

いきを ひそめて きかいを うかがう

わるい うちゅうじんだ


しりぬけせいじんは ちゅうとはんぱが だいすき

ひとが ものごとを とちゅうで やめてしまうとき

そこには だいたい しりぬけせいじんが いる


たとえば あけっぱなしの とびらの かげ


たとえば みずを だしっぱなしの じゃぐちの うえ


たとえば でんきを つけっぱなしの だれもいない へや


たとえば おもちゃを ちらかしっぱなしの ゆかの すみ


そんなばしょに しりぬけせいじんは いる


しりぬけせいじんは ちいさい

ねこの ひげの さきっちょよりも もっと ちいさい

だから ほとんどの ばあい めに みえない

だけど こえは おおきくて

こっそり ひとの みみもとに よじのぼっては

いろいろなことを ささやいたりする


もし なにかを している さいちゅうに


もう あきた

めんどくさい

ちょっとくらい いいじゃない


そんなこえが きこえてきたら

それは たいてい

しりぬけせいじんの ささやきごえなのだ

しりぬけせいじんは そうやって

ちゅうとはんぱを せかいじゅうに ふやそうと たくらんでいる

ちゅうとはんぱが ふえれば ふえるほど

そこは しりぬけせいじんにとって

とても いごこちのよい ばしょに なるのだ

そうやって しりぬけせいじんは

ちゃくちゃくと せいりょくを かくだいする

 

しりぬけせいじんには てんてきが いる

ママである

ママは あけっぱなしの とびらを しめる

だしっぱなしの じゃぐちの みずを とめる

つけっぱなしの でんきを けす

ちらかしっぱなしの おもちゃを

「かたづけなさい」と おこる

ママが おこるのは

たんに ママが おこりっぽいから ではなくて

ママが しりぬけせいじんと たたかっているからだ

ママが いなければ

ちきゅうは とっくのむかしに

しりぬけせいじんの ものに なっていたに ちがいない

ママは まいにち ちきゅうを まもっているのだ


もし うそだと おもうなら

ママに こう きいてみるといい

ぼしてちょうを もっているか と

ぼしてちょうは せいふから くばられる

せんしの あかし

ちきゅうぼうえいぐんの ひみつたいいんで あることを

しょうめいする みぶんしょう なのだ

もちろん ひみつたいいん なのだから 

その しょうたいは ひみつでなければ ならない

ママが きみにさえ

ちきゅうぼうえいぐんの せんしで あることを

ひみつに しているのは そのためだ

もし しりぬけせいじんに しょうたいが しられれば

ママにも そして きみじしんにも

どんな きけんが およぶか わからないのだ


しりぬけせいじんとの たたかいは

しれつを きわめる

いくら ママとはいえ

しょうりを おさめるのは かんたんでは ない

ほんのすこしの きの ゆるみが

しょうぶの めいあんを わける

そんな きょくげんの せかいで

ママは ひとり たたかっている

しりぬけせいじんは いつも

ママの すきを ねらって

あくらつな わなを はりめぐらせている

とても つかれて いるときや

かなしいことが あったとき

ママは いつもの ちからを はっき できずに

しりぬけせいじんの わなに かかってしまうのだ

わなに かかって しまったら

もはや ママには かちめがない

あけはなたれた とびらを

みずの したたる じゃぐちを

しめるだけの ちからが

ママには もう のこっていない

やがて いえの なかは あれはて

しりぬけせいじんの たかわらいが ひびきわたり

そして ついには そのいえは

しりぬけせいじんの せかいせいふくの ための

ひみつきちに なってしまうのだ


もし そうなって しまったら

ちらかった へやの ソファで

ちからつき たおれた ママを みかけたら

そのときは おねがいだ

どうか きみの ちからを かしてほしい

ママが しりぬけせいじんと たたかうための

ちからを とりもどす まで で いい

ママが たおれた いじょう

しりぬけせいじんに たいこうできるのは

きみしか いないのだ

ざんねんながら パパでは かてない

かてるはずも ない

とくに おやすみの ひの パパは

しょっちゅう しりぬけせいじんに まけている

もはや パパには きたいできない

だから きみには

ちきゅうぼうえいぐんの とくべつたいいんと なって

しりぬけせいじんと たたかってほしい


どうすれば いいかって?

まず きみが おもちゃばこから だした おもちゃは

きみじしんの てで かたずけて ほしい

そとから かえって きたときは

ぬいだ くつを そろえてほしい

れいぞうこから おやつを だしたら

れいぞうこの とびらを きちんと しめてほしい

ひとつ ひとつは かんたんな こと

まいにち まいにち くりかえす

おわりの ない たたかいに まけない

つよい こころが ひつような だけだ


ものごとが さいごまで なしとげられると

しりぬけせいじんは いきが できなくなって

あわてて こきょうの しりぬけせいに かえる

ちゅうとはんぱが なければ

しりぬけせいじんは ちきゅうでは いきられないのだ

あけっぱなしの とびらが しまるたび

つけっぱなしの でんきが けされるたび

しりぬけせいじんは くやしそうに

あっかんべぇをしながら ちきゅうから にげていく

そうして きょうも

ちきゅうの へいわは まもられる


でも きをつけろ

しりぬけせいじんは しつこいぞ

やつらは きょうも ちきゅうの どこかで

ちゅうちはんぱを ふやそうと

わるだくみを しているのだ

だから わたしたちも ゆだんを しては いけない

あけたら しめる

だしたら しまう

そんなことを きちんと わすれず おこなって

ちきゅうを まもらなければ ならない


どうか こころに とめておいてほしい

しりぬけせいじんとの たたかいに かてるか どうかは

わたしたちの こころがけしだい なのだ

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