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愛の夢と唯一のこと

実は、『愛の夢』には『三つの夜想曲』という副題がついている。今から弾くのは、もともとは歌曲だったのを、作曲者リスト自らピアノ版に編曲したもので、その第三番だ。


O lieb,so lang du lieben kannst!

O lieb,so lang du lieben magst!

Die Stunde kommt,die Stunde kommt,

Wo du an Gräbern stehst und klagst!

(おお 愛してください、あなたが愛せるだけ

おお 愛してください、あなたが愛したいだけ

その時は来る、その時は来る

あなたが墓の前に立って歎く時が)


これが、歌曲としての歌詞だ。正直、こうしてまたピアノを人前で弾くことはないと思っていたし、『愛の夢』に向き合うことなんて嫌だった。それでも変われたのは、あなたたちと出会えたから。

私はどんな愛の夢を描くのだろう。もしも再び会うことができるのなら、もう一度隣を歩きたい。レストランで川上さんと演奏をしたり、鴎外さんと横浜でアイスクリームも食べたいな。あとは、あの屋敷で四人で食事がしたい。

今朝見た空は、青くていわし雲が渋滞していた。その空の向こうに届けたい。

台詞のような言葉は言えないから、飾らない思いだけを込めて鍵盤を押す。



私に音を教えてくれた皆に、胸を張ってありがとうと言えるような演奏家になりたいです。

どうか「守沢茜音」という人間がいたという事を、頭の片隅にでも置いてもらえたら嬉しいです。

いや、できることなら鮮明に覚えておいてほしいけど。



私には、鴎外さんとの夢を再び描ける日が来るのだろうか。どちらにせよ、その日を楽しみにいきていくことしかできない。

もう一度、隣に並べる日を願って、

愛を奏でるように、

私はピアノを弾き続けよう。

それが私に出来る唯一のことだから。





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