目次 次へ PR 1/36 愛の夢 「あの子のピアノってうるさいだけで、余りうまくないわよね。」 「ほんとよね! テクニックがあるだけじゃない。なんであの子が金賞なんだろう。 正直、"ヘタクソ"だよね。」 「あんな演奏ならロボットにだってできるわ。」 ロビーに響く笑い声。馬鹿にした会話。 幼い心では、耐えることができなかった。 十一歳の春。 守沢(もりさわ)茜音(あかね)はピアノが弾けなくなった。 きっかけは、リスト作曲の『愛の夢』。 大好きだったはずのピアノの音は、あの日を境に、大嫌いな音に変わってしまった。