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夢日記「死ぬ間際のこと」

作者: ちょっぺ〜

 彼が目を覚ましたとき、最初に視界に飛び込んできたのは崩れかけた廃墟にあるような天井だった。天井は灰色で、その色は彼の肌の色とほとんど同じだった。

 彼はシーツをかけられた状態で、ベッドの上に寝そべっていた。シーツから片腕を出してみると、そこには点滴用の管がつながっていた。頭の横には彼の腕とつながった点滴装置があった。彼が腕から管を引っこ抜くと、看護士たちが二、三人で彼のもとに走ってきた。男の看護士が彼を押さえ、女の人が彼の腕にふたたび点滴をつなげようと試みた。彼はその様子をじっと眺めていた。まるで野生の動物が敵対する者に飛びかかる瞬間を狙っているような目だった。

 彼は抵抗できなかった。男の力で押さえ付けられていたからではなく、たとえ相手が女であっても、あるいは小さな子どもや高齢の老人であっても、彼は何もできなかっただろう。彼にはもうほとんど力が残っていなかった。彼は死にかけていた。看護士たちに怒りを感じても、それを言葉に変えて怒鳴りつけることもできなかった。

 僕は死にかけている、と彼は思った。何もしていないのにひどくくたくただなと思った。せめて苦しまずに、心地よい気分で死んでいきたいが、どうしてこんなにくたくたなんだろう? 点滴は彼の腕に戻ってきた。こんなことして何になるんだろうと彼は思った。彼は目を閉じて、静かに自らの死を待った。なかなか死ななかった。こうしてほとんど死にかけているに、死ぬような気配はなかった。彼は、こんなとき何について考えればいいんだろうと思った。死ぬのはわかっている。それまでにどう過ごそうか考えることなんて、何の意味もないことだと思った。

 時間は過ぎていった。いま時間はゆっくり過ぎているのか、それとも逆にとんでもなく早く過ぎているのか、彼にはわからなかった。自分の外側にあることは何にも感じられなかった。彼はなかなか死ななかった。そして実際に死んでしまうまで、ずっとそんな感じだった。

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